今回、本格デビューとなるボタニカル・ダイシリーズ。
植物の花、葉、茎、樹皮、
果皮などから作った染料で染めています。
古代からある「草木染め」を、
現代の染色技術に取り入れた方法です。
ボタニカル・ダイをえらんだ理由は、ふたつあります。
まず、色のうつくしさ。
ここに使われている赤、青、白、黒という色。
それぞれ単色に見えますが、
じつは、赤ひとつとっても、
ひとの目で見える幅をこえた、
200種もの色素で構成されています。
ひとの耳の可聴範囲を越えた音が、
音楽の深みや味わいになるのと、同じで、
ボタニカル・ダイの製品からは、
独特の奥行きと深さを感じることができます。
もうひとつの理由は、やわらかさ。
もともとが「やさしい」タオルですけれど、
ボタニカル・ダイで染めることによって、
肌に触れたときやの風合いが、
さらにやわらかくなりました。
デザインは、いつまでも飽きのこない、
「ほぼ日」の定番ともいえる
「スタンダード・チェック」をえらびました。
じつは、このデザインと配色は、
「やさしいタオル」がうまれた2003年、
まさしくデビューのときのデザインを復刻したもの。
ボタニカル・ダイシリーズの本格的な始動にあたり、
「やさしいタオル」の原点に立ちかえるという選択です。
「ダブルベリー」の赤は、スオウが原料。
日本古来の赤染では最高級とされた染料で、
たいせつな祭祀にも使われた色。
奈良時代から女性たちの憧れの的だったといいます。
青は、ログウッド。
“すべての色を持っている”と言われる植物で、
じつはピアノの黒の鍵盤や、ギターの赤い板、
ナポレオンのフロックコートや
ネルソン提督のマリンジャケット(ネルソンコート)も、
ログウッドを染料にしているそうですよ。
とても鮮やかに見える色の組み合わせですが、
家で使うと、ぱっと華やかな印象で、
生花を飾ったときのような印象に。
洗濯と乾燥をくりかえしていくうちに、
すこし「くたっ」とした感じも、かわいくて、
いまも初代のこのタオルを使ってくださっているかたも
いらっしゃるほどなんですよ。
そして「ブラック&ホワイト」の、
黒は、胡桃(くるみ)から取りました。
その実はギリシアの神々が食したといい、
ヨーロッパでは古来から、生命と豊饒のシンボル。
光によって墨のように濃淡がうまれ、
とても複雑なニュアンスを持っている黒です。
そして、もう1色の白も、さらした白ではなく、
ボタニカル・ダイで染めた白。
その原料は山査子(さんざし)です。
中国では漢方薬として、
イギリスでは家を嵐から守ってくれる木として、
大切にされてきたそう。
アイルランドでは井戸や泉のそばの山査子の木に
布きれを結んで、幸運や愛を願う習慣があるそうです。