糸井 |
なんか、今日の話は
まるで京極さんの小説みたいですね。
「睡眠」を中心に置きながら、
触れるか触れないかスレスレのところで、
そのまわりを、みごとにグルグルと。 |
京極 |
あ、それね、
ぼくの習性なのかもしれません。 |
糸井 |
ん? |
京極 |
いま、ラジオやってまして。 |
糸井 |
はい。 |
京極 |
『怪ラヂヲ』っていう番組。
『怪』って、妖怪の雑誌ですから、
妖怪がテーマのラジオだと思うじゃないですか、ふつう。
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糸井 |
はあ。 |
京極 |
けっして妖怪だけはやるまいと。 |
糸井 |
そうなんだ(笑)。 |
京極 |
たぶんね、妖怪って、空洞なんです。
‥‥というか、
少なくとも学者が研究してるようなもんじゃない。
もちろん科学的に説明できないですしね。 |
糸井 |
うん。 |
京極 |
それに、ぼくらが知ってる「妖怪」って
たんなるキャラクターでしょ?
キャラ一体一体について語ったところで、
おもしろくもなんともないし。
つまり、妖怪ってのは
「妖怪の周辺」があるから「存在する」わけで。 |
糸井 |
ああ、まわりをグルグル回ってると
輪郭がどんどん濃くなってくるんだ。 |
京極 |
うん、妖怪の周りね。
でも、中心は空っぽなんです。
だからまあ、今日の「眠り」についてもね‥‥
寝ちゃえばおしまいでしょう。 |
糸井 |
ああ、言ってしまった(笑)。 |
京極 |
むりやり繋げますけど、
まず、ぼくは、あんまり寝ないと思われてる。 |
糸井 |
うん、思われてる。 |
京極 |
そして、寝ないんですよ、ほんとうに。 |
糸井 |
一気に核心をつくなぁ(笑)。 |
京極 |
でもね‥‥寝ないんですけど、
「寝ないから、なに?」と。
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糸井 |
いやいや、どんなふうに寝ないのかとか
あるじゃないですか(笑)。
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京極 |
さっきから
ちょこちょこ出てきては遠ざかる話題の延長で
説明しますとね、
まあ、ふだん、仕事してるでしょ。 |
糸井 |
ええ。 |
京極 |
で、よくゲーム好きな人が
「気づいたら、一日、経ってた」みたいな人、
いるじゃないですか。 |
糸井 |
うん、たまにね。 |
京極 |
それ。 |
糸井 |
ああ‥‥。 |
京極 |
仕事しちゃうんですよ。 |
糸井 |
やっぱり。 |
京極 |
24時間、ゲームやっちゃったみたいな状況が
ゲーム以外でも訪れると思えば
そんなに不思議なことでもないと思うんですよね。 |
糸井 |
それは、絶えず訪れるわけ? |
京極 |
絶えず訪れるほど仕事だけに集中できたら、
ぼくは宮部みゆきさんぐらい儲かってるでしょうね。 |
糸井 |
そうはいかないぞと。 |
京極 |
うん。 |
糸井 |
じゃ‥‥寝る日もある? |
京極 |
ほら、非経済的シャドウワークが(笑)。
それに、あの‥‥デビューしたてのころから
ずうっと同じように言ってるんですけど、
ぼく、あまり「気負わない」んです。 |
糸井 |
うん、うん。 |
京極 |
大嫌いな言葉が「気合」。 |
糸井 |
好きな言葉が「老獪」で。 |
京極 |
「気合」ってなんですか。 |
糸井 |
なんですかと言われても。 |
京極 |
腹に力を入れたところで
屁ぐらいしか出ないでしょう。
なんでも「気合」でなんとかなるなら、
日本はアメリカに勝ってますよね。
オリンピックだったら、ぜんぶ「金」です。 |
糸井 |
はい、はい(笑)。 |
京極 |
気合でなんとかなるものなんて、
世の中にひとつもないですよ。
ようするに、なにが言いたいかというと、
ふつうにしてるのが
いちばん効率がいいんです、人間って。
だから、ぼくは自然体でいるだけなんですね。
ああしたいとか、こうしたいとか思わない。
できることをして、
できないことはしませんというのが
ぼくの人生ですと‥‥。 |
糸井 |
うん、そこまではわかる。 |
京極 |
ただし‥‥。 |
糸井 |
ただし? |
京極 |
暑いとか寒いとかが
あんまりわからないように‥‥。 |
糸井 |
ように? |
京極 |
ムリがきいてしまう身体だってことを
計算に入れていなかったわけですよ。
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糸井 |
自分ではふつうにしてるつもりでも(笑)。 |
京極 |
じつは、ものすごくムリしてた可能性が。 |
糸井 |
めちゃくちゃ気合いを入れて、
ものすごくムリしてる人よりも、ムリしてたと(笑)。 |
京極 |
そう、気を抜いてぬーっと生きていたつもりが、
ものすごくムリしてるのに
気がつかないだけのバカだったと、
そのあたりに、最近、思いいたったわけです。 |
糸井 |
つまり、ムリしてるのに気づかず、
むりやり寝てなかった、と。 |
京極 |
もしかしたらそうなんじゃないかと。
<つづきます>
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