われら、スジナシ応援団!笑福亭鶴瓶の即興ドラマに酔え。
第2回 暗い芝居。日常の芝居。イッセー尾形。
で、『スジナシ』の話ですけれども。

はい。

DVDになったものを
いくつか観たんですけど、
暗い展開が多いんですよね。

ああ、暗いですね。
人間ってみんなね、暗いよ。

それを感じるのよ。

いや、おれは明るくしようとしてるのよ。
だから、明るく入ろうとしてんのに‥‥。

鶴瓶さんが明るくはじめても、
最後はなぜか暗い展開になってる(笑)。

「え? これなんでこんな暗いことに?」って。

そうそうそうそう(笑)。

基本的には、
来た人に合わしてあげようと思って
やってるんですけどね。
もう、暗いのよね。

そうなんでしょうねぇ。
死んだり、別れたり、みたいな
「うまくいかないこと」がないと
ドラマってなかなかつくりにくいんだね。

うーん、たのしいほうだと
むずかしいんですかねぇ。
いや、暗い話がダメだというんじゃないですけど。

おもしろいですよ。それはそれで。
ただ、あの、たとえば、
子どもどうしがバスに乗ってしゃべってると、
それだけでたのしそうじゃないですか。
ぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃしゃべって、
「このガム食べる?」とか言って。
あれはやっぱり芝居にはなりにくいんだね。

ならない。
だけどね、そういうなかでも、
やっぱり、「すごいな!」思うのは、
柄本明さんなんかは、ふつうの話で行けるんですよ。
ずーっとふつうの話、してる。
延々、盛り上がらない。それが日常なんですよ。
これはすごいんですよ。

岩松了(劇作家、演出家)系?

岩松了系。あと、ベンガルさんとかね。

あー、みんなそうじゃないですか(笑)。

ベンガルさんの回もすごかったですよ。
ふたりで喫茶店でしゃべる、
というだけだったんですけどね。
しゃべってると、ときどき壁の額縁を
まっすぐになおすんですよ(笑)。

あははははは。


「なんか、額が気になる」と。
しゃべるたびに額なおすわけよね。
そんな人いないで(笑)。
もうおっかしいて。
そういうのもあってね、
それはたいへんおもろいですよ。
でも、ドラマになるかというと、
ならないです。それは。
あー。スケッチになるんですね。

スケッチになんねん。日常のスケッチ。
イッセー(尾形)さんなんかもそうでしょ。
なにかを演じて盛り上がるというより
日常をスケッチする。

似顔絵なんかに近い感じ。

そうそう。似顔絵なんですよ。
なんかドラマが起きるとかじゃないんですよ。

「そこに、いる」。

「いる」いうことですね。
イッセーさんの場合は、もうそれを
お客さんが認知してるから商売になるけど、
あそこまで持って行くのはすごいことですよ。

つまり、観る側が協力してくれないと
つくり上げられないものですよね。

そうですよ。
それは、落語やったら許されないからね。
「淡々と過ぎるだけ」というのは
非常にむずかしいです。

逆にいうと、それを成立させている
イッセーさんというのはすごいですね。
ふだんそれをやっているイッセーさんが
『スジナシ』だとどうなるのかな、って、
たのしみにしながら
DVD(『スジナシ2』)を観たんですけど、
ふたりの反射神経がものすごかったですね。

やるまえに「どういう展開にしたいか」って
決めてかかってくる人と、
ぜんぜん決めてない人といるんですけど、
イッセーさんは、まったく素でしたね。
ぜんぜん、決めてないんですよ。

ああ、そうですか。
あの回はすごかった。

ふだん、ひとりでするのもいいけど、
ああやって、違う分子を入れて、
稽古もせずにやるイッセー尾形というのも
バツグンなんですよ。

(続きます!)
2006-02-15-WED