われら、スジナシ応援団!笑福亭鶴瓶の即興ドラマに酔え。
第4回 『スジナシ』はインタビュー。
『スジナシ』って、
いままでいろんな人が出てるけど、
けっきょく正解はないですからね。
「この人がうまい!」
とかもないんですよ、あれは。

そうだね。
けっきょく、鶴瓶さんとしては、
「街を歩いてるおばちゃんと
 ぶっつけ本番で話をする」
っていうことと近いわけでしょう?

あー、そうそうそうそうそう。

だから、『スジナシ』の共演者は
じつは関西に歩いている
おばちゃんと同じなんですよね。
で、おばちゃんがつまんないこと言ったら
鶴瓶さんがフォローに回るし、
おもしろかったら乗っていくし。

いや、だからインタビューですよ。
『スジナシ』っていうのは
すべてインタビューですね。

あーなるほどなるほど。

俳優に私生活を聞かないインタビューですね。
そう思ってつくったんです、あの番組は。
私生活が全部出るから。
天然が出るんですよ、ものすごう。
だからまじめな人は、まじめーに出るねん。

「その人」が出るんですね。

泉ピン子さんなんか、どれだけまじめか。
やるとわかりますよ。
「この人、まじめやなー」って。
ふざけてる人は、ふざけてますからね。
もちろん、どっちでも大丈夫なんですけど。
糸井さんなんか、
もう、どんだけふざけてるか(笑)。
だから糸井さんがほんまに
『スジナシ』に出たらおもろい思うわ。

‥‥ぼくはね、『スジナシ』は
ちょっとしたあこがれなんですよ、ほんと。

出ーな!

イヤ(笑)。

なんで?

ぼくはもう、
昔からほんっとにダメなんですよ。

あかんの?

あの、ようするに、ぼくは、
『寝床』の旦那なんですよ。
(『寝床』は、落語の古典演目のひとつ。
 義太夫が好きな大家の旦那が
 店子を集めて自分の歌を聴かせようとするが
 ひどい歌なのでみんながいやがる。
 わかりやすくいうと、ジャイアンが
 リサイタルを開こうとする、みたいな噺)
ああいうものがものすごく好きなんだけど、
できないんです。

あー(笑)。

つまり、
ほんっとーに才能がないんですけど、
人がやってるのを見ると
「あれはちょっと違うな」って
いつも思ってるんですよ。


うっふっふふ。
いや、でもね、才能がないのもおもろいからね。
「才能のない才能」というか。
たとえば、蛭子(能収)さんのって観ました?
あの人の回も、おもしろかったですよ。
蛭子さんは、だって、もう、
存在がおもしろいじゃないですか。
いるだけでネタだもの(笑)。

うん。
ボビー・オロゴンの日本人版、
みたいな人やから、あの人。

あははははは。

蛭子さん、収録まえのトークでいきなり
「あの、私は鶴瓶さんの弟なんですよね?」
って言うんですよ。
「いや、だから、そういうのは
 決まってないんです」って。
スジがないねんから、そんなん言うたらあかんよ。
番組の意味がわかってなくて来てんねんもん。
すごいよ。

すごいよねー(笑)。
それで、どうしたんですか? 本番は。

本番はね、もう、いっそ、
蛭子さんをどんどん驚かしたろ、と思ってね。
ふたりで部屋に座ってるんです。
で、スタートってなったときに、蛭子さんが
「こんな夜中にどうしたんですか?」
みたいなことを言ってきたから、
「いやいや、刑事さんが訪ねてきたんですよ」
って返したんです。

あははははははは。
そりゃひどい(笑)。

もう、おどおどしてるんですよ。
それでね、あの人「ふわぁふわぁ」って笑うねん。
ものすごほんまに笑うんですよ。刑事なのに。
で、さんざん笑ったあとに、
「ごめんなさい、私、
 こういうふうに笑う病気なんです」って。
そんな刑事いないわ。笑う病気て。
おかしいやん。夜中に訪ねてきて。
ものっすごいおかしかったですよ。
あんなずるい人間ないわ。

それはずるいねー(笑)。
だから、ぼくはそれもできないんですよ。

あれは、たしかにむりですね。
まあ、ふつう、むりです。

(続きます!)
2006-02-17-FRI