われら、スジナシ応援団!笑福亭鶴瓶の即興ドラマに酔え。

第6回 ヤキイモ屋のオヤジのヤキイモ。
『スジナシ』に出る役者さんって、
基本的には、みなさん、
やりづらいというか
「たいへんだぞ」と思って来るんでしょう?
「うれしくってしょうがない!」
っていう人はいないでしょ。

ないですね。
たのしみにしてくださる人はいるし、
実際、終わるとたのしいんですけどね。
あと、番組を観てる人のなかには、
「『スジナシ』には役者の技量が出る」
と思ってる人がいるかもしれませんけど、
そんなんじゃないですしね。

違いますよね。

そんなんちゃうちゃう。
そんなんは関係ない。

名優が出ると
おもしろい『スジナシ』になるかというと、
そうじゃない。

だから、単純なことでいうと、
バラエティー番組に出てる人ほど、
その場その場でいろいろできる。

あー、なるほどね。
あと、観ながら思ったんですけど、
役者さんにも2種類あると思うんですよ。
つまり、ぜんぶできちゃう器用な人と、
得意分野のある味のある人と。

ああ、そうですね。

あの、宮藤官九郎さんとかの回は、
いろいろできちゃうがゆえに
「いろいろできるんだよな」って
思いながら時間が過ぎて
終わっちゃった感じがしたんですよ。
あの人、できちゃうじゃないですか。

できる。
あの人は、脚本書いてても
そうだと思うんですけど、
すぐ飽きるんですよ。

あー、そうなんだろうな。

書いて、あ、違う違うって
どんどん変わっていく。

そうそうそうそう。

自分のなかで、ひとりでずーっと、
脚本書いてるときは、
誰も止めないでしょ、それを。
でも、『スジナシ』の場合は、
その場その場で台本を書いてるねんけど、
消すのよ、それまでの自分をね。

それは困りますよね。

これ、困った。

で、変わっちゃうんですよね。


そうそう。
さっきまで「後輩」って呼ばれてたのに、
先輩って間違ったら、
「先輩でいいや」って。

あー、そうそう。

あれは、どっちでも
全部できちゃうってことなんだよね。

ある種のルール違反やねんけど、
それでもクドカンやから
おもろいなってところに行くんです。

あの味は他にはないよね。

ないからね。
そのへんはすごいなって思う。

おもしろいなー。
あれでためになるのはさ
「これしかできないんだ!」
って思ってるときのほうが
強いんだっていう感じがするんですよ。
吉田日出子さんなんかは、
もう、どんな話だか知らないけど
共倒れをしてやれっていう、
あれ、共食いじゃないですか、一種の。

んっふっふ。

ひどいよね、あれ。
いわば無理心中でしょ。

無理心中、無理心中(笑)。

だからさ、商売でもそうだけどさ、
「これしかできない」っていう
ヤキイモ屋の親父の、
ヤキイモなんだよ、きっと。

うん、うん。

「じつは空いた時間は
 スナックもやってるんですよ」
っていうのは短い時間で
パッとつかんだときには
油断があると思うんですよ。

そのスナックは、
つぎに行くと変わってたりするしね。
「まえ、おもしろかったけどなー」
って思って行くと、
もう、スナックじゃなくなってたりする。
でもそれしかできないヤキイモ屋は
ずーっとヤキイモ屋やってたりするからね。

どっちのおもしろさも当然あるんですよ。

そうそうそうそう。

だけど、自分の好みとして、
ベターーって心に貼りついてくるのは、
不器用なヤキイモ屋のほうなんだよね。
それはねー、ためになる。

(続きます!)
2006-02-21-TUE