もう、私の作った スレキの帽子、 完璧じゃないでしょうか。 非の打ち所なんて、 どこにもないんじゃないでしょうか。 スソさんのチェックは、順繰りにやってきます。 それまでは、ね。 余裕ですから、人のをちょいちょいと 手伝ったりですよ。 余り布で、幽霊の真似をしてみたり。 (なんちゃんが後ろで拝んでた!) 先にスソさんのチェックが済んでいた 山下さんを、うひうひいいながら ひやかしたりしていました。 だってもう、スレキの帽子は完璧だもの。 スソさ〜ん。 完璧ですよね〜。 「じゃ、拝見しますね。」 スソさんはあくまでも丁寧なのです。 「あ、その前に、 この型紙、すごいですね〜。 セロテープがあってこそですね。 でも、このままだとセロテープが 縮んで型紙がちいさくなってしまうので、 かならず、紙に写し取ってくださいね。」 かしこまりやした! 「じゃあ、帽子を。 わあ! うまくできたじゃないですか。 サイズもぴったりなんですか? すごいですね〜。」 あああ! ほめらりた。ほめらりた。 そしてスソさんは、 帽子をひっくりかえして、細部を点検。 そのあいだ、ワタクシはず〜っと にやにやしてたのでございます。 「あれ? もぎさんもぎさん。 ここ、布の長さが足りてないですよ。」 ‥‥ぎく。 「裁縫をちょっとやってると、 布の扱いになれているから、 うまくまとめられちゃうんですが、 今回のステップは、 “うまくまとめる”が目的じゃなくて、 “型紙を正確につくるための検証”なんですよ。 だから、ズレはズレとして 確認しないといけないんですよ。」 ‥‥がちょ〜ん。 目的を、ぺろっとわすれていました。 ぺろっとわすれて、 ありもしないような裁縫の腕を ちからのかぎりぶんぶんと ふりまわしておりました。 ああ、不覚。 そりゃもう、 切腹を頭にのっけてる場合ではなく、 手前が切腹したらよろしかろう。 自分のアホさに ぼう然としていて、 あの男がこの部屋にいることを すっかり失念しておりました。 おだんごたべてたときにおしゃべりをしたのに、 すっかり忘れていました。 方々で、帽子教室の生徒を 爆撃していたようですが、 矛先はワタクシにも! 「あ〜、ほんとそれ、茂木らしいよな。 まず、目的を間違えるだろ、 そんで、 ちょっとなにか齧ってたって経験だけで “できる”と思い込んで、“ごまかし”を効かせるの。 毎度毎度のことだよな〜。 帽子づくりをすると、 本当に普段の有り方が“まんま”出るんだな〜。」 え? いつものこと? ワタクシってば、いつもそんな? がちょ〜ん。 撃沈。 ‥‥しかしながら、 ワタクシは、今回だけ撃沈されたわけではなく、 次回も引き続き撃沈いたします。 それは、糸井からの爆撃だけでは無いのです。 この時には知るよしはございませんでした‥‥。