山下 ばらばらうさぎと
糸井重里の来襲。


ここにもまた、自分にうそをつかずに
書きとめようと思うのです。
いとおしむようにたんねんに作りあげた紙のうさぎを、
ばらばらにするという行為は、
すくなからず切ないものがありました。

しかし、帽子作りには欠かせない工程。
気をたしかにもって、まずは紙で作った帽子を
スソ先生にチェックしていただきました。



「正面から見ると、左右でだいぶカタチが違いますね」

あ、ほんとだ、ぜんぜん左右対称じゃないです。

「山下さんは、この帽子の右半分と左半分、
 どちらのほうが自分でうまくできたと思います?」

え? ええと‥‥自分から見て左側、でしょうか。

「じゃあ左半分で型紙を作っていきましょう。
 真ん中からぱかーんとふたつに切ってください」

わ、わかりました。
‥‥右半分はどうするんでしょう?

「捨てちゃいましょう。
 いいカタチの左半分で型紙を作ればいいんです。
 それを2組作ってくっつければ、いいカタチだけで
 左右対称の帽子になるんですよ」

なるほど‥‥。
で、では‥‥切ります。口のところから‥‥。



紙のうさぎよゆるしておくれ。
かならずいい帽子にするからね。
さよなら‥‥。



ぱっかーん。

まっぷたつにはしたものの、
さてこれからどうすればいいのでしょう?
型紙のことを考えた経験など、もちろん皆無。
どうカットしていけば、きれいなフォルムを再現する
型紙へとたどり着くことができるのか。
‥‥かいもく見当がつきません。
このままでは紙のうさぎがしのびない、浮かばれない‥‥。
グズグズと思い悩んでいましたら、
スソ先生から、なんともまあ、
目の覚めるようなアドバイスをいただきました!
(スソ先生のアドバイスはこのレポートの最後に)

なるほど! それでいいんですね、先生!?
はぁ〜、なんだか気がラクになりましたよ。
ふっきれた山下はするすると切るべきラインを描き入れ、
それに添ってちょきちょきちょきちょき‥‥。



あっという間のことでした。
それぞれ上から、
「耳」、「頭の横の部分」、「頭の上の部分」
と、切り終わってみれば、たったの3パーツ。
こういう型紙を使って、それぞれ2枚ずつ布を切れば、
あの帽子ができあがるということなのです。
すごーい、しんじられなーい。
結果的に、シンプルな型紙になりそうです。

思いのほか早く、本日やるべきことが終わってしまったので、
スソ先生がお土産にもってきてくださった
おいしいお団子をほおばりながら
他の生徒の作業を見学していましたら‥‥。

「や、どうも! じゃましにきました!」



いきなり、糸井重里の来襲です。
みんなの作業をじっくりながめると、
スソ先生とお話をはじめました。

糸井 生徒たちのことが、
うらやましいなぁと思ってたんですよ。
スソ先生 ほんとですか?(笑)
糸井 いや、ほんとに。ぼくも作りたい。
じつは、ぼく昔、
帽子デザイナーになりたいって
思ってたことがあるくらいですから。
スソ先生 ええ〜、そうなんですか?! 本気で?
糸井 もちろん本気ですよ、だからほんとにうらやましい。
自分の好きなものを帽子にしていいんでしょ?
スソ先生 はい、自由です。
糸井 おもしろいですよねえ。
人々が自分の頭になにを乗っけたいと思ってるか、
それを聞いてまわるだけでも
すごくおもしろいですよ。
‥‥たかしまさんは、猫を乗せたいわけですね。
 
と、再び生徒たちの作業に見入ります。
その途中でお団子を見つけて食べたりもします。
そして、糸井重里はピタリと足をとめました。
茂木直子の前で。
糸井 「直子ちゃん! 直子ちゃんはじょうずだねえ!」
はじまりました、「直子ちゃんいじり」です。
糸井 「直子ちゃんは昔からお絵かきがじょうずだった!
 こんなおおきくなって‥‥おじさんはうれしい!
 ん? それはなあに? あ、切腹の帽子!
 大丈夫だよお、直子ちゃん、ぜんぜん平気」
茂木 「ひぃ〜」
 
ちなみに生徒・茂木は、
「直子ちゃん」と呼ばれること、
並びに「親戚のおじさんに愛される」
という設定でいじられることを、
それはそれは苦手としております。
糸井 「直子ちゃん! おじさんちょっと、
 団子をたべたりいろいろ忙しくてね、
 そろそろいかないといけないの!
 でも直子ちゃん、大丈夫!」
 
糸井 「なにかあったら、 やさしい先生とか、
 お兄さんやお姉さんたちもいるから。
 ね! 大丈夫だから!
 ‥‥おじさん、ほんとにいなくなるけど、
 直子ちゃん、大丈夫?」
茂木 「ひぃ〜」
糸井 「じゃあ、先生、
 いろいろご迷惑をかけますけど、
 ひとつ、直子をよろしくお願いします。
 あと、団子、おいしかったです」

嵐のように、糸井重里は去っていきました。
‥‥何が言いたいかというと、
とにかくこの日、自分の作業はなかなかうまくいった、と。
そういうことで、失礼いたしました。

スソ先生のアドバイス
山下さん、よくハンチングをかぶってますよね?
それを参考にすればいいんですよ。
あ、いまかぶってるやつ、
それでパターンがわかるでしょ?
マネしましょう! 同じように切っちゃいましょう!
いいんですいいんです、アレンジを加えれば。
偶然ラクに作れるなら、それでいいんです!

とじる