山下 詰めの甘さということ。


あわわわわ、宿題をやっていない!
次の帽子教室には、布を切っておくところまで済ませて
のぞむはずだったのに、それができていません。

いや、ちょっとはやっていたのです。
いきなり本番というのも怖いので、
ひとまず、ボツになった生地を切り抜いてはいました。
ボツになった生地とは、こちらです。



調子にのっておしゃれなものをつくろうとしている、
という理由でお蔵入りになっていた生地です。
でも、もったいないですからね。
これでもうさぎの帽子をつくろうと思ったのです。
ほら。



ちゃんと切り抜いてあります。
とはいえ、やっていたのはここまで。
裏地につかう生地と、
本番用のフェイクファーの生地は手つかずの状態。

スソ先生がいらっしゃるまで、
まだじゃっかん時間があります。
とにかく切りましょう。
せめて裏地だけでも切り抜いておきましょう。

かんぺきに仕上げた型紙をあてて、
チャコで周囲をなぞります。



練習用と本番用、
合計24枚の裏地を集中して切り抜いたところで、
スソ先生が到着。
帽子教室がはじまりました。

「どうです? 山下さん、順調ですか?」

は、はい、なんとか。
でもすみません、生地を切り抜く作業が
途中でして、まだ終わっていないのです。

「大丈夫ですよ、あせらないで」
 
ありがとうございます。

「で、切り抜いたものは?」

あ、これです。

「ちょっと拝見しますね‥‥」



おかげさまで
ちゃんと切り抜くことができました。

「そうですか、それはよかったです。
 ‥‥ん? んん? あれえ?」

な、な、なにか、
なにか問題がありましたでしょうか。
(オロオロオロオロ)



ちゃんと切ったと思うのですが‥‥。
(オロオロオロオロ)

「これ、型紙とかたちがちがいますね」

え、ええええ?!

「ほら」



‥‥ほんとだ。ぜんぜんちがう。
な、なんでこんな‥‥なんでこんなことに!?

「チャコでしるしをつけるときに布がズレたんです。
 重たいものをのせて切りました?」
 
いいえ。
‥‥ああ、そういえば、
型紙の周囲をチャコでなぞりながら、
ずいぶん布が伸び縮みするなぁと思いました。

「だから(笑)、それだと型紙の意味がないですよ。
 せっかくあんなにがんばったのに。
 ちゃんと型紙の通りにきらないと(笑)」
 
ああ‥‥。



あああああああああ。



こまかい仕事に疲労困ぱいの眼球をおさえこみ、
徒労感に心が折れかけていましたら、
現在ダイエット中というこの人が、
りんごをかじりながら近づいてきました。



「んん?! どうしたの山下さん」

いや、かくかくしかじかで、一部やり直しに‥‥。

「かーーー、詰めが甘いねえ!」



ロバート・デ・ニーロのように笑う
スソ先生が、そんなデ・ニーロに声をかけます。

「シェフさん、
 まだ、なにも、できあがっていないですよ?


「え‥‥あ、はい」



デ・ニーロは急におとなしくなりました。

さあ、
デ・ニーロに気を取られている場合ではありません。
やり直しです、やり直し!
さいわい生地は多めに買ってあったので、
もういちど型紙を正確にトレースするのです。
ズレないように重りをのせて。



裏地もチャコを引き直し、切ります!



同じ作業をもういちどやることの、
やるせなさよ!
歯を食いしばり、合計24枚のパーツを
けっしてヤケになることなく、
もういちど、切り抜いたのでありました。



ふうううう〜〜、
よーやく、やっとのことで、やり直せました。
と、思ったら‥‥‥‥。

うわああああ!
がっっっくーーーーん!

くわしい説明は避けますが、要するに、
布の表と裏をまちがえて切ってました!!

がっっっくーーーーん!!

おのれの詰めの甘さにほとほとあきれ果て、
気がつけばウロウロしています。



ああ、老眼が‥‥。
目薬、目薬‥‥‥‥。



せ、先生ごめんなさい‥‥。
きょうはちょっと、心が折れかけてます。
あとは自分でやっておきますので、
どうか次の教室まで猶予を‥‥。

ミシンで縫い合わせるどころか、
結局この日はすべての布を切りだすところまでも
たどりつけませんでした。
フェイクファーのこれ↓には、まったく手つかずで。



こ、今度こそ、今度こそは、帽子を完成させないと!
みなさま、どうかあきれずに、
しずかな応援をよろしくお願いいたします‥‥。

スソ先生のアドバイス
まあ、そうガッカリしないで(笑)。
型紙はできているんですから安心ですよ。
でも、そうですね、
最後の詰めは、たしかにたいせつ。
ここでいい加減になってしまうのは、
いままでの苦労がもったいなすぎます。
ひとまず、目を休めて、
ファイトー!

とじる