第1回骨が欲しい。

これが、下田昌克さんのアトリエです。↓

▲アトリエ入口から恐竜の骨ワールド。
▲恐竜に「こんにちは」と言ってしまう。

一歩踏み入れると、恐竜たちに囲まれて、
なんだか天国のような、明るい気分になります。
部屋のこまかいところを見ると、
おもしろそうなものがあちこちに。

▲谷川俊太郎さんと撮った写真も。
▲いろんなフィギュアも並んでます。

まるで下田さんの頭のなかをのぞくようです。

下田
ごちゃごちゃしててごめんなさい。
こんなんじゃまるで、
片づけが苦手な人‥‥みたいですよね?
ええと、みなさんが、
どこか座るスペース、ありますか?
▲こちらが、下田昌克さんです。
ほぼ日
いえ、立ったままでぜんぜん大丈夫です。
下田さんの恐竜の骨の作品は、
ぜんぶ布でできているのですか?
下田
布と綿と、縫い糸でできています。
ほぼ日
この帽子みたいなのは‥‥?
下田
あ、これ?
▲それです。
下田
これはマンモスです。
実はいま、恐竜からちょっと時代を進めて
マンモスを制作中なんです。
これは頭の骨の部分。
だけど、マンモスって、
骨だけじゃつまんないんだよね。
ほぼ日
ああ、そうですね、
ゾウもそうですが、
鼻と耳にあまり骨がないから、
骨格だけだと伝わりにくい。
‥‥下田さん、いま、マンモスの頭を、
しぜんにかぶろうとなさいましたが、
下田さんはなぜ、ご自身の作品を
人間サイズにしようと思われたんですか?
下田
人間サイズ?
▲下田作品は「かぶる」が基本。
ほぼ日
つまり、恐竜の骨を作る場合は
完成形をなんとなく原寸大にするかな? と思うんです。
しかし、下田さんの作品は人間サイズで、
ご自身で身にまとわれます。
下田
ああ、そうですね、
「自分がかぶる」ということが、
この作品群の、いちばん地味で
ベースにあるコンセプトです。
いや、コンセプトというほどのものでもないな、
たまたま、そうなったんですよ。
ほぼ日
というと‥‥。
下田
ぼくは子どものころから、
ティラノサウルスとかトリケラトプスとか、
恐竜が大好きでした。
2011年に上野の国立科学博物館で開かれた
恐竜博2011を見に行ったときのこと。
展示されている大きな骨格標本を見て、
ものすごく興奮したんです。
次々にあらわれる骨が、
もう、かっこよくってね!!
その、興奮した気持ちのまま、
買物する気満々で、鼻をふくらませて、
出口にあるミュージアムショップに向かいました。
▲下田さんによる恐竜解説。『恐竜がいた』(スイッチ・パブリッシング刊)より
下田
しかし、そのときのぼくには、
ミュージアムショップに
欲しいものがなかったんです。
たくさんいいものが並んでいたし、
いま行くと欲しいものだらけなんですが、
そのときはだめだった。
なぜなら、いま思うとぼくは骨が欲しかった。
とにかく、骨がかっこよかったんです。

そして、家に帰って、自分で
キャンバス生地で骨を作ってみました。
家には絵を描くためのキャンバスが
まるめて置いてありました。

だけど、恐竜の骨がどうなってるのか、
どうやって立体化したらいいのかも
よくわかんないから、
とりあえず自分のあたまにあててみて、
「形はこうかな? いや、角はこうなってるな」
と、確かめながら作ったせいで、
自分のサイズで、自分がかぶれるように、
作っていくことになってしまったんです。
▲角って、こんな感じかなぁ?
ほぼ日
なるほど。
最初からコンセプトでそうしよう、と
思っていたわけではなく。
下田
でもね‥‥かぶった瞬間、
なにか、変身できるような、
興奮する気分を味わいました。
なにか強くなったようで、楽しくなる。
ほぼ日
変身できる気分‥‥ですか。
かぶってみたいです。
下田
あ、ぜひどうぞ。
まずはこれなんて、
いいんじゃないですか?
▲あ‥‥いいかも!
▲大物にもチャレンジ。
▲ガオーーー!!
ほぼ日
はあぁぁぁ。
かなり‥‥いいですね。
気分がまるで変わります。
下田
でしょ?
ほぼ日
はい。少しびっくりしました。
下田
そのときに自分で作った第1作で
かなり気をよくしまして、
作りつづけました。
これがその、最初の作品です。
▲第1作のトリケラトプス。
下田
最初の作品なんで、コツもよくわかんなくて、
ヘニョッヘニョでしょ?
ヘニョッヘニョだけど、かっこいいと思っていた。
これをどこへ行くにも持ち歩いていました。
打ち合わせ先でかぶったりして、
まぁ、引かれちゃったりもしましたけど、
おもしろがってくれる人もいました。
▲外出先でかぶっていた。
下田
さらに楽しくなって
第2作、第3作と作って、
それも外に持っていって、
みなさんに驚かれながらも
出先でかぶりつづけました。
それから、ミシンも買いました。
最初は、家庭用のミシンを買ったので
すぐに壊れました。
キャンバス地はもともと厚いし、
綿も入ったクッションのような立体なので、
家庭用ミシンにとってはハードワークすぎました。
まぁ、職業用ミシンも、
半年に1回くらいは入院します。
ほぼ日
え! ご自身が?
下田
いえ、ミシンがです。
▲愛用のミシン。
下田
この職業用ミシンでも、
針がしょっちゅう折れるので、
怖いからゴーグルをつけてミシンかけてます。
▲ゴーグルをかけてミシンをかける。
ほぼ日
ミシンをかけているお顔には
見えないですね。
下田
そうでしょ?
特に分厚いところは、
気合いを入れてミシンのアクセルを
フルスロットルで踏み込みますが、
いつ針が飛んで来るかわからない恐怖いっぱいで。
▲雰囲気がミシンと合わない。
ほぼ日
わりあい、ハードな雰囲気ですね。
下田昌克さんというと、初期作品は
平面の「絵」のイメージなのですが、
これまで、こういった立体の
造形作品を作ったことはありましたか?
下田
いや、ありませんでした。
ほぼ日
じゃあ、お裁縫とかミシンが得意だった、とか?
下田
いいえ、ミシンも裁縫も、
ほとんどはじめてで。
ぼくにとって裁縫は、
ミシンと針との血だらけのバトルなんですよ。
ほぼ日
どういうことですか?


(つづきます)
「恐竜がいた」展 @TOBICHI2の詳細ページはこちら

「恐竜がいた」展 @TOBICHI2

2016年9月22日(木・祝)〜10月2日(日)11:00〜19:00

※ただし10月1日(土)のみ17:00で終了

下田昌克さんと谷川俊太郎さん共著の本
『恐竜がいた』の出版を記念して、
TOBICHI2で下田さんの作品である恐竜展示を行います。
下田さんの貴重な
「キャンバス生地の恐竜」作品の一部を
自分の身につけて写真を撮ることもできます。

たのしいポイントぎっしりの展示です。

恐竜の骨をつぎつぎ作る、下田さんのアトリエを再現。
ライブ制作も行っています。

キャンバス地の恐竜の骨作品、代表名作を展示。

「恐竜がいた」の原画をすべて展示。

なりきりパシャリ!
勝手に撮れる写真館 produced by ゆかい

TOBICHI展のなかに、
下田さん作の恐竜を身につけて
写真を撮れるコーナーを設けます。
書籍『恐竜がいた』の写真を担当した
ゆかいのみなさんによるプロデュースで
SWITCHの撮影現場を特別に再現します。
セットには下田さんのイラストも入っているので、
本から飛び出したようなショットが撮れるかも?!?!
カメラ(携帯電話でOK)を持って、ぜひおいでください。
できれば黒い服でのご来場がおすすめです!

谷川俊太郎さんの詩をじっくり読めます。

『恐竜がいた』に掲載されている
谷川俊太郎さんの詩を会場に掲示します。
下田さんの恐竜作品のオーラを感じながら、
どうぞじっくり、名作ぞろいの
谷川さんの恐竜の詩をご堪能ください。

「恐竜がいた」展トークイベント

10月1日(土)18:00より
「恐竜がいた」をテーマにした
トークイベントを開催します。
出演:谷川俊太郎さん、下田昌克さん、糸井重里
このトークイベントを観覧希望の方は、
「このイベントに申し込む」ボタンより
お申し込みください。入場は無料です。
2名までいちどにお申し込みいただけます。
申し込み〆切は9月20日午前11時です。
当選の方にほぼ日よりご案内のメールをいたします。

「恐竜がいた」展トークイベント
場 所:TOBICHI2 2階
時 間:10月1日(土)18:00〜20:00

このイベントに申し込む
恐竜がいた

谷川俊太郎+下田昌克
雑誌「SWITCH」の
20回にわたる連載が、待望の書籍化。
時間を超えて、ことばと写真で
「あのときここに生きていた」
恐竜たちに出会えます。

※この本は期間中、
 TOBICHIでも発売予定です。
 下田さんがいたら、
 サインがもらえる‥‥かも?!?!