先日、チームの方が、
「できたらみんなで今日中に食べてなー」
と、お菓子を持ってきてくださったのです。
ほっこりした気持ちで
しばしのティータイムとなった時、
甘味の優しさに心をほころばせたコーチ陣が、
ついでに口元もほころばせ、
ぼろぼろと本音をこぼし始めました。
監督が遅くまで球場にいると困るよなー、
なかなか家に帰れんもんなー、
あと、早く来られるのもなー。
「早く来られると、
俺らそれよりもっと早く
来てないといけないんですよねえ」
もしもし? 心の声がだだ漏れですよ?
僕は身を縮めて気配を消すしかありません。
集合時間では、
誰よりも早目をよしとするわたくし。
たとえばその日はそれなりに気を遣ったつもりで、
自分としてはかなり遅めに球場入りしたのです。
これでみんなと一緒に
着替えられるタイミングやろうと思いきや、
その時はすでに、
他のコーチ達は全員ユニフォーム姿でした。
「監督、明日何時ごろ来ますか?」
といちいち念を押されるそのわけを、
本当の意味で理解したのです。
アメリカの場合、個々の都合はかなり優先されますので、
たとえ監督がまだ球場にいようとも、
コーチは気にせず帰宅します。
そもそも監督は監督室にこもっていることが多いので、
帰ったかまだいるか、わからないことだって多いのです。
しかしオリックスの二軍では、
監督・コーチが同じ部屋を共用しています。
コーチ陣は僕に対しての
不平不満を声高に話すこともできず、
むしろ気を遣わねばならないのです。
いや、俺は気にしない。しないというのに。
「つまりあれか、俺に早く来るなと?」
「いやいやいや! そんなこと言うてないですやん!」
「言ってる! 言ってる! そして早く帰れと?」
「いやいやいや、そんなこと
ちっとも思ってないですから!」
う、うわーん!
僕は結局、シャワーも浴びずに
とっとと家に帰ることにしました。
ドラッグストアでいそいそ買った
おニューのボディーシャンプーは、
今日も結局日の目を見られなかったのです。
いいんです。風邪もひかずにすむし。
僕は早く帰らなくちゃいけないんだから。
汗臭いまま帰宅し、この話を夕食時にしたとき、
ヨメは冷静でした。
「みんな‥‥俺に早く帰ってほしいみたいやねん」
ちょっぴり拗ねている僕に一言。
「うん、邪魔だもん」
いつか誰よりも早く球場に入って着替えて、
座って待っといたんねん。
3月14日 壮