田口監督、こんにちは!
いつも、次の更新を楽しみに待ちながら、
読ませてもらってます。
連載を読んで、ファームの選手が
日頃どういうことをしているのかとか、
監督が何を考えてるのかといったことが、
少し見えるみたいです。
そんな、監督として過ごす田口監督に質問なんですが、
僕は学生なんですが、それなりに寝ても
バファローズの選手、プロ野球選手は、
(TAKUTO)
TAKUTOさんこんにちは。田口です。
一番やらねばいけない時間に、
自分の高みを持っていく術の代表といえば、
おそらく「己を知る」「ルーティーン」ではないか、
と思います。
たとえば野球選手は試合の時間が
あらかじめ決まっていますので、
それに向けて食事時間、睡眠時間を計算し、
生活のリズムをなるべく崩さないようにする。
自分がどんなタイプの人間かを考え、
どのように生活すれば、
ピークを試合時間に持っていけるか研究するわけです。
しかしその中では、
外部からの誘惑もたくさんあることでしょう。
たとえば自分が、ナイトゲームが終わって
11時に夕飯を食べる、と決めていても、
知り合いなどのお誘いがあり、
結果、午前1時2時まで食事が続く
ということも考えられます。
するとリズムはガタガタに崩れ、
翌日悲惨な目に遭うわけです。
もっとも、若い選手などは
「全然寝ていない」という状況が
むしろ妙な緊張感を生んで、
やけにいい成績を残す場合もあります。
僕も若いころ、朝まで友人たちに誕生日を祝ってもらい、
そのまま寝ずにデーゲームに出て、
ホームランを打ちました。
若かったから、体力があったからこその思い出です。
ルーティーンといえば、こんな話があります。
ウエイド・ボッグスという選手をご存知でしょうか?
メジャーで3000本打った名選手。
僕はエージェントが一緒という縁で、
彼にお会いする機会に恵まれました。
マイナー生活に疲れ果て、苦しんでいた頃のことです。
一流選手はどんなふうに自分のピークを試合時間に
持っていくのかと質問した時、
彼がこんなエピソードを教えてくれました。
ウエイド・ボッグスは、
メジャーでも有名な「ルーティーン至上主義」で、
その厳格さはまわりも舌を巻くほどだったそうです。
ある日、あまりにウエイドに打たれている
トロント・ブルージェイズは、奇策を思いつきました。
4時20分きっかりにフィールドに出てくる
ウエイドの調子を狂わそうとして、
球場の大時計が4時20分を指す瞬間、
分針を4時21分に早送りしてしまったのです。
ウエイドが一歩目‥‥
右か左か、どちらかきっちり決まっていたはずの
一歩目を踏み出したのは、
確実に4時20分だったはず、なのですが、
球場の時計は21分を指していました。
それを見たウエイドが混乱し、
試合に影響するのを期待したブルージェイズでしたが、
結果はウエイド4安打。
「身体が正確な時間を覚えていた」わけです。
それほどまでに、一流は自分のルーティーンを
日常に刻み込んでいます。
誰もがここまでストイックになれるわけではありません。
僕は付き合いも悪いし、何もかもすべては野球のために、
という気持ちで生きてきました。
ルーティーンもあるし、それは今もある程度守っています。
ただ、心のどこかに、無茶ができるその年頃に、
もっとやんちゃをしておけばよかった、
という思いがあります。
目指すものに対して
ストイックになることは素晴らしいけれど、
その時にしかできないアホなことだって、きっとあります。
TAKUTOさんは学生。
自分のペースが許される人生最後の時間です。
今しかできないこと。それを念頭に置きながら、
ちょっとだけ自分のルーティーンを
作ってみてはいかがでしょうか?
ルーティーンは確実に自分自身を縛り付け、
時に友達付き合いにも影響してきます。
そこの折り合いをうまくつけながら、
しかし最後にものを言うのは、
若さと体力にほかなりません。
授業中眠ければ根性で乗り切る。
それができるのは今だけですよ。
この瞬間は、一秒後には過去です。
今を享受して、素晴らしい学生生活を
送られることを願ってやみません。
壮