大橋歩さん & 伊藤まさこさんと ほんとうにほしいタオルのはなし。 おまたせしました、「やさしいタオル」再始動です。

その8 自分がお金を出しても買いたいものを。
糸井 それにしても伊藤さんと
大橋さんの組み合わせはすごいですね。
作り手かと思ったら、
ちゃんとお客さんにスッと戻れる。
心がお客さんなんですね。
これだけキャリアがあって、
それをずっと守ってるってやっぱり‥‥
大橋 いや、もともとお客さん側なんです。
伊藤 うん。
大橋 ずっとお客さんの立場だから、
長いこと、仕事をして
来れたのかもしれないし。
糸井 いや、あんまりいないと思うなあ。
大橋&伊藤 そうですか?
糸井 例えば作ってる側の話っていうのを、
どこかと特別に仲良くなったら
聞いちゃうじゃないですか。
例えばグルメみたいな人が、
料理長とかと知り合ったり、
「仕入れが大変なんですよ」とかなんとか
相談に乗ってるうちに、
お客さんじゃなくなるんですよね。
食い物はとくに早いですよね。
大橋 ああ。
糸井 生活雑貨みたいなのも、ご自分で作っているのに
お客さんでいるっていうのは、
よほどキープしようと思ってないと
できることじゃなくて、
「こっちのほうがやっぱりすぐできるし」とか、
作り手の論理と消費者の気持ちを
ちゃんと戦わせるっていうのは
むずかしいことなんです。
「自分は買う」ってところに
戻れるかどうかっていうのは
作り手として、けっこう、
命懸けなとこありますよね。
大橋 私は、何か物を作っても、
自分が欲しいかどうかでしか
もう判断できないので。
自分とこのちっちゃい会社だったら、
最終的には自分が好きなもので
いいんじゃないかなって、
最近は思うようになりました。
糸井 うん。おっしゃるとおりで全部そうですね。
「こういうのができたら
 私使いたいな」と思ってるものを
作っていくってことですよね。
表現活動でもあり、欲しいでもありみたいな。
ぼくはね、チームプレーでやってるんだけど、
邪魔する役なんです、いつも。
大橋 はい(笑)。
糸井 全部を台無しにするようなこと言って‥‥
ぼくがやってることはそれだよね、大体。
ほぼ日 そうですね(笑)。
糸井 邪魔しないと、つまんなくなるんです。
ぼくは、面白いのが好きなので(笑)。
タオルケットに、
伊藤さんが飛びついたみたいな面白さが。
伊藤 (笑)
糸井 ああいうことをしたいわけで。
大橋 ああ、なるほど。
糸井 その意味で、
「ああ、いいね、いいね」って
普通に言われてるものっていうのを作ると、
怒りに行くんですよ。
大橋 ああ、なるほどね。
伊藤 私、今、いろんな会社や作家さんと組んで
ものを作ってるんですよ。
その会社の人からは、
「こちらの材料の方が在庫が充分にあるので、
 ぜひ使って欲しいのですが‥‥」と
お願いされることがたまにあり、
「じゃあ、その素材にしましょうか」
となりかけるのですが、
いつもはたと、
「いや、でも、これを自分でお金出して買うかな」
と思って。
糸井 ああ、そうなんですよね。
大橋 うんうんうん。
伊藤 お金を出しても買いたいものを
作ろうというのが基本で、
それって一番大事なことだなって。
「売れるかも」よりも、
「お金を出す」っていうのが大事だなあと。
でも、ものづくりってすごく大変ですね。
それをつくってもらう予定だった
アジアの工場が急に倒産したりとか!
糸井 事件が起こりますよね(笑)。
多分、この3人は、
それぞれ似たようなことをしてるんだけど、
大橋さんとぼくは決裁ができるんですよ。
ゴー、バックっていうのを
自分たちで言えるんです。
伊藤さんは多分、
誰かさんもう1人なり、もう5人なり、
最後に判を押す人が必要になるんですよね、
それがやがてどんどん年取ると
ワガママになって、
「ぼくが決める!」(笑)。
大橋&伊藤 ふふふ(笑)。
糸井 大橋さんがとうとう
『アルネ』まで行ったんだからね。
伊藤 じゃ、わたしもどんどんワガママになって?!
糸井 なっていくんです。なるんです。
あるいは自分のワガママを全部消して、
消したんだけど売れたっていうのを
喜びにするか。
伊藤 それは、多分、ならない。
大橋 ならないね。
糸井 一致すれば一番うれしいですね。
うちは一致させやすい場所には
いるんだと思うんですけど。
伊藤 勝手に自分の好きなもの作るのは、
できることですけれど、
それがすごく多くの人に認められるというのが
一致すると面白いですよね。
本を作ってても、
こんなふうに好きなことやっているのに、
重版がかかったと聞くと、
ほんとうにうれしい。
糸井 いや、よくわかります。
好きだからやってる仕事ですからね。
売れるということは、
それをやってもいいよって言われた、
っていうことでもあるんです。
政治家が選挙で票もらったみたいなことですから。
自分が雇われてる時には、
「もっといいものを使って、
 儲けなんかなくたっていいじゃないですか」
と平気で言えたんですけど、それを言っちゃうと、
身売りして稼いでるみたいなものですから、
本当の支持を得ることにはならなくて。
大橋 そうですね。
糸井 よそと組んでやる時、
例えば仮にS社の仕事をする時、
そのS社のお金について、
以前のぼくは、無頓着だったんですよ。
どこかにロケに行くについても、
S社が出すだけでしょ、
あいだに代理店がいるでしょ、
そうすると、そこはどうでもいいんですよね。
そして「こんなに赤字出しちゃった」っていうのが、
下手するとクリエイター同士の
自慢話だったりしたんです。

だけど、自分が決裁する側になり、
その赤字はどこかで誰かが働いて
取り返すんだと思うと、
そういうこと言えなくなるんですよね。
本当に一致させるってことは
どれだけ大事かみたいなことを考えるんです。

うち、赤字出すプロジェクトさせないんです。
もし赤字出すっていうことがある場合は、
「お金では赤字だけど、目的は何だっけ?」と考えて、
その目的を達成したかどうかが問われる。
だけど、基本的には全部赤字を出さないように、
ひとりひとりが雇う側であり、雇われる側でもある。
みんなも、いまは全部知っていてやるけれど
最初は「そんなことまで私は考えるんですか」
ってきっと思ったに違いない。

そんなところで──、大橋さん、伊藤さん、
ありがとうございました。
こういういい機会でお会いできて
本当に助かりました。うれしかったです。
伊藤 こちらこそありがとうございます!
大橋 ありがとうございました。
──白いタオルはとにかく私たち(笑)。
伊藤 はい。白い「やさしいタオル」が並んでる姿を
目に思い浮かべますね。白がバーッて!

大橋歩さん、伊藤まさこさん、
ほんとうにありがとうございました!
「白」「大橋さんのイラスト柄」「タオルケット」
という、あたらしい機軸ができました。
ここからはタオルチームで、がんばります。
白は、どんな白がいいんだろう?
定番として展開してきたチェック柄などのデザインは?
さらに工夫できる「もっと、いいこと」はないだろうか?
完成までのあいだにも、大橋さんや伊藤さんの
おちからを借りることになると思います。
そのようすも、続くコンテンツで御報告していきますね。
あたらしい「やさしいタオル」は
10月19日発売の予定です。

お読みくださり、どうもありがとうございました!

2010-10-13-WED

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