■8月 23日■
おなじ歳の、TAROへ。
タナカカツキさんのTシャツ。



伊賀さんとTARO-Tシャツチームは、
田島貴男さんにつづき、
もうひとりの遺伝子にTシャツづくりを
お願いすることに決めました。
それは、あの『オッス! トン子ちゃん』の作者
タナカカツキさんです。

伊賀さんは、このマンガを読んで
「やっべーー!!」と感動し
ぜーったいにこの人に会いたい!
Tシャツをお願いしたい!と
心に決めたそうなんです。

雨がシトシト降るある日、
タナカさんの事務所を訪ねることにしました。

タナカ どうも、タナカです。

伊賀 伊賀です。
タナカさんの描かれた
トン子ちゃん、俺にとってはもう
バイブルなんです。
あれ、やばいっすよ。
タナカ あれは、だいたい
中年が描き下ろしてるっちゅうのが
やばいっすよね。
伊賀 いえいえ、ハハハ。
あのマンガ、超最高だと思ってるんで。
タナカ ハハハハ。
伊賀

今年の3月に、
「太陽の塔」に行ってきたんですよ。
塔の中にも入って、じっくりみてきたんですけど。
タナカ へえええー。ええなあ。
オレも行きたかったなあ。
伊賀 東京に帰ってきてからみんなに
「どうだった?どうだった?」
って訊かれまして。そのときに
「いや、俺がTAROのことを
 つべこべ言うのを聞くより
 トン子ちゃんを読んだらわかるよ」
って、みんなにそう言って回ったんです。
そんくらい、俺、トン子ちゃんをほんとに好きで。
今回のTシャツはぜったい
タナカさんにやってもらいたいなって
思ったんです。
タナカ



ほんま、うれしいです。
で、どんなんしようかなあ。
このTシャツって、売り上げを
寄付にするんでしたっけ?

── メキシコで見つかったTAROの壁画を
日本に持ってくるお金に充てられればと
思っているんです。
タナカ それ、最高やね。
あんなでっかいもん運ぶなんて、なあ?
でも、あれが日本に来るとしたら
岡本太郎って、いよいよ
「日本でいちばんくらい
 芸術で場所をとってる人」
になるよね? きっと。
── 場所をとってる?
タナカ うん。だってさ、
川崎市岡本太郎美術館もあるし、
岡本太郎記念館もある、
「太陽の塔」もある。
公園みたいなんもある。
だいたい、川崎の美術館かて、
まったくひとりの館(やかた)で
あんなにでっかいのは
もしかしたらないかもしれないですよね。
── TAROはいまだに日本でいちばん
有名な芸術家かもしれませんね。
タナカ 知名度100パーやからね!
伊賀 (笑)ですね。
今回は、チャリティということもあって
ほんとうにTAROのことを好きで
制作してくれる人に頼もうと思っているんです。
何人の人が何点のTシャツをつくるのか
いまの時点ではよく見当がつかないんですけど、
最後にそのTシャツが並んでいるのを、
岡本太郎をリアルタイムで知らない
若い人たちがみて
「1点1点、なんだか熱いTシャツだなあ」
って、ひとりでも思ってくれる人が
いたらいいなと思ってます。

こんな調子で俺が頼み歩いているんで(笑)、
このTARO-Tシャツに参加してくれた人たちを
最後にリストアップしたら
きっと、カテゴライズのできない
わけのわからない人選になってると思うんです。
ラインナップがごちゃごちゃで、
名前を知っている人もいれば知らない人もいる。
この面々が
いったいなにでつながってるのかなあ、
といわれたら、
それは、岡本太郎でつながっている。
そんなふうに
していきたいなあと思っているんです。
タナカ うん、うん。
それはおもしろいね。
だからデザイナーみたいな人だけじゃなくて
いっろんな人に声をかけてるんだ。
── TAROが好き、ということで。
伊賀 タナカさんは俺が勝手に著書を読んでて
すごいなあ、お会いしたいなあ、
と思ってたんです。
あとはひさびさに会った友達とかに
「TARO好き?」とか聞くと、間髪入れずに
「好きだよ」と返ってくるときがあるんです。
タナカ わかる、わかる。
伊賀 だいたいみんな
『自分の中に毒を持て』の1冊くらいは
読んでたりするんですよね。
その人がまた
「もっとすごいTARO好きがいるよ」
と、友達を紹介してくれたりして、
Tシャツ持って会いに行って
「じゃ、よろしく」って帰ってく。
そんないろんな人たちが
岡本太郎でつながっているとしたら、
このTシャツをみた人たちも
「じゃあ、岡本太郎の本でも読んでみるかな」
って気になってくれるかもしれない。
俺はまっさきに
トン子ちゃんをすすめたいんですけど(笑)。

タナカ もう〜〜〜ありがとうございますぅ!
ほんまにうれしいな。

てことは、デザインが得意な人というよりも
「思い」がある人が集まっていくんだ。
伊賀 いかにTAROが好きか、みたいなところを
出していただければいいと思うんです。
「TAROをいちばん好き選手権」
みたいなかんじで。
タナカ おもしろいなあ。
それは‥‥自分が着たいっていうかんじでも
いいかなあ。
伊賀 それはもちろん。
それがいいと思います。
── ここにいちおうボディを用意してあるんです。
キャンバスだけはいちおうこちらで用意する、
というカタチをとっているんですが。
タナカ はっはあ。
すごいなあ、これ。
古着があるやん。
うわ、古着、おもしろ!
へええーーー。


古着をみはじめると、とまらないタナカさん

タナカ へええーーー。
こんなんで持ち運んでるんや。
ちょっと持ってみていい?


よいしょっと!

── お、思わず写真を
撮ってしまったじゃないですか。
タナカ キャハハハハ。
こんだけ古着をみたおしといて、
アレやけどね。
── はい。
タナカ 俺、Tシャツ屋やってるんですよ。
いつもつくってるTシャツの工程で
やってみてもいいですかね。
伊賀 もちろん。
コストとか、すげえ心配なんですけど
大丈夫ですか。
タナカ うん。やっぱり、
自分が着たいと思うのを、つくりたいんです。
意外にも、ちゃんとしたやつを。
── 意外にも。
タナカ 意外にも、
売っているようなやつを(笑)。

それから数日後、
タナカさんはすてきな赤いTシャツを
仕上げてくださいました。


中央にTARO作品が赤でプリントされています。

すーーーーん!

こんなのつくって
よかですか?

赤にモコモコした赤のインク。
TARO-Tシャツの
古着にペイントとかいうような
ノリじゃないですし
アプローチもちがうのですが
大丈夫でしょうか。
なんか「製品」みたいなのを
つくりたいのでした。
でも「本気」だったからこそ
やっちゃったことなので、お許しくださいー。

プリントに使用した作品は
「赤い兎」です。
太郎が38歳のときの作品
(今、ぼくと同じ歳)です。

どでしょー。

タナカカツキ

Tシャツチームは、タナカさんが
「赤い兎」という作品を
Tシャツに使用したいとうかがっていたので
まえもって、岡本敏子さんに
使用許可をいただいていました。
敏子さんは、そのとき、
目を細めてこうおっしゃっていました。
「そう、タナカカツキさんは
 『赤い兎』を使いたいのね。
 この赤い兎って、じつは、心臓のことなのよ。
 赤い兎をあげる、っていう
 太郎さんの詩があってね‥‥。
 同い年の作品でつくるなんて、
 そう‥‥やるじゃない?」
敏子さん、とーっても、うれしそうでした。

TAROの赤い心臓がモコモコしたTシャツが
タナカさんの手によって
TARO-Tシャツに仲間入りしました。
同い年の作家が描いたものを
同い年の作家がTシャツにのせる。
きっと、ひと言では語れないような
深い気持ちが
込められているにちがいありません。

では、また次回!

 

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