岡本太郎記念館・館長の、平野暁臣さん。 TARO MONEYに、何を願う? 2

前回につづいて、
岡本太郎記念館の平野暁臣さんに
TARO MONEYについて、お話をうかがっています。


岡本敏子さんが出した、大きな宿題。

まず、このTARO MONEYの企画を
糸井重里さんからうかがったとき、
ぼくはほんとうにすばらしいと思いました。
「岡本太郎のグッズを作って販売しましょう」
「その売り上げを寄付しましょう」
ということとは
次元が違っていると思うんです。
これ自身がメディアになって、
新しい関係や、対話を生み出す。
TARO MONEYは、
関係を育むための素材ですから。
池に投げられた石が波紋を広げるように
社会に投げられたTARO MONEYが
じわじわ広がっていくわけです。

TARO MONEYは、言ってみれば
そのものじたいには、価値はないんです。
TARO MONEYそのものを「飾る」ことが目的ではなくて、
TARO MONEYを使ってアクションを起こしたり、
これを共通言語にして、みんなで太郎を語ろう、
という性質のものです。
このTARO MONEYプロジェクトは、
一見コインという「もの」を売るように見えますが、
じつはこれは、シンボルであり言語であり記号を
みなさんに渡そうとしている。
しかも壁画が修復されて
どこかに収められたあとでも、
TARO MONEYは、グルグル動きつづけるわけです。

もし岡本太郎が、いま生きていたら、
このことをものすごくおもしろがったと思います。
「どんどんやれ!」って、言ったでしょうね。
岡本敏子? 敏子も、もちろんですよ。
「真剣に太郎と遊んでいる」ことを、
とにかく敏子はとても喜んだと思います。

TARO MONEYは、人と関係をつくるための道具です。
でもね、そもそも太郎の作品も、
人と関係をつくる機能を果たすために
あるんじゃないだろうかと、ぼくは思います。

TARO MONEYを手にした人はきっと、
「さて、こいつで何をしようか」
と、考えるでしょう。
どうしたって、自分自身を表現することになる。
また、人からTARO MONEYをもらった人も、
もらっちゃったからには、そのままほっとけない。
嫌でも関係ができちゃうわけですよ。

こういったことは、
岡本敏子がいつも望んでいたことなんです。

岡本敏子が亡くなって、
ぼくに与えられたミッションというのは、
もちろん短期的に見れば
壁画を修復し、社会に送り出すことです。
でも、これは別に「事業」でやっているわけじゃない。
じゃあ、何のためにやっているのだろう?と
考えれば、それは、
岡本太郎を次の時代に伝え残すためです。
そのために岡本太郎記念館も
岡本太郎記念現代芸術振興財団も、あるわけです。
ですから、岡本太郎を伝えるために、ぼくはいま
壁画を社会に送り出そうとしているとも言える。

岡本敏子は、たくさんのみなさんに
この壁画を助けてもらうようなかたちで、
メキシコから持って帰ってきて
修復して展示しましょう、
と、いつも言っていました。
ひとり100円でも200円でもいいから、
みんなの気持ちを集めて
展示することが大事なんだと、
敏子はくり返し言いました。

けれど、
「100円でもいいのよ」
と言う敏子に、ぼくは当時、
「馬鹿なことを言うんじゃないよ」
と、言い返したんです。
「100円を集めるために、
 100円以上のコストがかかるんだよ。
 そんな非効率的なことはできない」
って。そうしたら、敏子は
「それでいいの! 
 100円集めるために1000円かかったっていい。
 みんなに支えられて、
 この壁画は観られるようになるんだ、
 ということが大事。
 そこに意味がある、そこに太郎らしさがある」
って、力説するんです。

でも、そんな敏子の言うことを聞いていたら
このプロジェクトは
いつまでたっても終わらないでしょう。
壁画の展示がきちんと実現するために、
「嫁入り」まで破綻することがないように、
最速最短の道を進もうとして、
ぼくはこれまでやってきました。
ですから、敏子から言われていたそんな大きな宿題に
実は手をつけられずにここまで来てしまったんです。

それをね、糸井さんと、
敏子がメキシコで壁画を発見したときにはじまった
「ほぼ日」の太郎企画が
TARO MONEYでやろうとしてくださっているんです。
敏子がしずかに、「ほぼ日」と読者のみなさんに、
この種を撒いたのかもしれない。
ほんとに感謝しています。
ありがとう。



平野さんのお話は、明日につづきます。




※できるだけたくさんのメールをご紹介したいため、
 抜粋して掲載させていただきます。


私の、本当に個人的な意見です。
でも、こんな個人的な意見でも
必要としてくださると信じ、メールさせてもらいました。
“「ほぼ日」のPRとして位置づける”
に、なってほしいです。
「ほぼ日」という楽しい楽しいコンテンツが大好きで、
毎日のようにおじゃまさせてもらっていると思うのです。
そんな「ほぼ日」が、
真剣に応援している『TARO MONEY』です。
だから、自分のお金が、素晴らしい絵のために、
そして、名目だけとはいえ、
自分の好きなものを他の人に知ってもらえることに
遣われるのなら、
どちらも納得のいく遣い道だと思います。
(a)


『明日の神話』の展示のために
TARO MONEYを購入したのに、
その一部が全く別の事に使われるのは、
いい気持ちがしません。
「ほぼ日」の広告のために、
『明日の神話』を応援しているのではないことは、
賛同しているみんなが承知のこと。
この際、手続き上のことだと割り切って、
経費としてしまうのはどうでしょう。
楽しみに待っていると同時に、
私たちにもできることに参加したいです。
(きりまり)


とても楽しみにしています。
1枚でもいいので、手に入れて、
「どうぶつの森」みたいに
ここってときのプレゼントにしたいと思っています。
一部が税金になるとしても
逆にある種の新しい入り口になるのでは?とも思います。
『TARO MONEY』をもっている人が、
「一部は税金に還元された」と知ることで
税金ってなに?国ってなに?通貨ってなに?
というようなことを
TAROの視点から考え直してみる、とか・・・
うまく言えないのですが。
(ひゅー)


ポリシーは大切ですが、時には
何が何でもやり抜く事も重要かと思います。
私は悔いのないよう「PRにする」がいいです!
(ひろこ)


TARO MONEY、なにはともあれ
僕は購入(寄付)すると思います。
デザインが良いので。
みなさまの誠実な活動をいつも
応援しています。
(s)


40%も税金!?・・とも思いますが
岡本太郎のことを知らなかったことと同じような
「大切なこと」がまだたくさんあって、
そのことにきっと使われるのだろう・・と信じ込んで、
納得できます。
(たくさん)


どうなっても「ほぼ日」らしいと思います。
がんばって!考えてね!
そんで答えが出たら
「そうか、これがほぼ日の譲れないとこなんだな」
と思います。
あと単純に「TARO MONEY」という考え方
とてもグッときました。
楽しそう!
(レンガ)


会社組織としてとりくむのであれば、やはり
税金を納めなくてはならないのではないでしょうか?
組織として、成長をとげられている会社として。
イトイさんの見つめている方向は
読者としてほんとうに面白く
毎日が楽しみです。
(山)


たくさんのメールをありがとうございます。
みなさんからのメッセージを読ませていただき、
いろんな方々のご意見を聞きながら、
結論を出そうと思っております。
TARO MONEYへのご意見や、ページのご感想をどうぞ
postman@1101.comまでお寄せください。

2006-04-06 THU

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