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糸井 |
このTARO MONEYが
いいおみこしになるといい。
わくわくするような、表参道の参道を作るような。
TARO MONEYは、
みんなの思いをかたちにするための、
道具立てなんですよね。 |
川田 |
そうですね。
特に、寄附は心の問題ですから。
心の問題を外から判断することになると、
どうしても
形式的になっちゃうんですよ。
そうじゃないと、俺はこうだ、俺はこうだ、と、
みんなが勝手なことを言い出しますからね。
表から誰が見ても「まぁしょうがないかな」と
思えるものでなくてはならない。
何かで割り切らざるをえないんです。 |
糸井 |
どこまで行っても、心と物質の問題ですね。 |
川田 |
寄附も、税も、哲学の話になってきますね。 |
糸井 |
ぼくは、若い頃に比べて、
納税意識が高くなってる、ってことに
いま気づきました。 |
川田 |
それは、ありがとうございます(笑)。
私は元税務職員だったものですから。 |
糸井 |
そうか! |
山田 |
局長、なさってましたから。 |
糸井 |
こんなにくだけた会話をしていただいて
ありがとうございます。 |
川田 |
いえいえ! |
糸井 |
税金のことって、
「納税と労働と教育が国民の三大義務です」
それ以上の説明がないんですよ。
哲学にいかないように
わざとそこで止めてるんだと思うんですよね。 |
川田 |
先般、授業で学生に
「あなたのイメージする税金て何だ?」と、
アンケートをとってみました。
いろんな回答が返ってきますよ。
そうするとみんな考え方が違う。 |
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山田 |
それを集約した結果、
「義務だから」と言うのが
解答としてはいちばんしやすいんでしょうね。 |
糸井 |
ほかの考え方をちょっとでも入れると、
永遠の論争になってくるんだよ。
俺、生まれてはじめて
税金のことを
こんなにたくさんしゃべってるな(笑)。
なぜ自分が納税意識が高まったかというとね、
どうやって節税するかについて
一所懸命考えてる人は儲かんない、
っていうふうに、思うようになったからなんです。 |
川田 |
あ! それは、正解です。
ほんと、そうなんですよ。
税金を払わないことを考えている暇があったら、
別の儲けを考えたほうがはるかに前向きです。 |
糸井 |
ある季節になると、
細かい税金をどういうふうに払わないかという話を
懸命にする人たちが出てくる。
それが「だめだな」と思えてしまうのは、
それはつまり、防御なんですよね。
どうやって自分たちの利益を
最大限にしようかという話じゃなくって、
どうやって鬼から逃げるかっていう話なんです。
逃げてる姿勢って、稼げないんですよ。 |
川田 |
うん、うん。
おっしゃること、よくわかります。 |
糸井 |
税金逃れの話を真剣にする人たちのことが
すっごく小さく見えたんです。
自分が大きいか、つったら、大きくはないんだけど。 |
川田 |
いえいえ、それだけで立派です。
おっしゃるとおりで、
ディフェンシブになって
とにかく自分の税金を少なくしようなんて言ってたら
発展がないんですよ。 |
糸井 |
若いときって、一銭も払いたくないんですよ。
自慢じゃないけど、
例えば20歳の自分は、
もうほんとに、税金返してほしいくらいだった。
本気で。 |
川田 |
(笑)。 |
糸井 |
きっと、獲物を捕りに行く方法を
まったく知らないから、
頭の中が被害者だったんでしょうね。
被害者の気持ちでいると、一生報われないんですよ。
先生が税務署の側におられるときには、
どんなふうに感じていらっしゃったんですか? |
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川田 |
やっぱり、払いたくない、という
気持ちの人が多いですよ。
だけど、その問題を突き抜けた人も
けっこういるんですよね。
やっぱり、成功してる人は、
どっちかと言うと突き抜けた人のほうが多いです。 |
糸井 |
税金が払えることが誇りだった時代も
ありましたね。
納税してない人は選挙権がない時代さえ
あったわけで。
だから、いわば納税の権利は
一国一城の主のあかしだったわけです。 |
山田 |
納税する人たちは、
そういうふうに、納得して払いたいですね。 |
糸井 |
払いたい、払いたい。 |
山田 |
税務の勉強をはじめたとき、
ほんとにグレーゾーンが多いんだなと思いました。
ビジネスの数だけ法律を作るわけにはいかないので、
そこはやっぱり限界がありますね。
川田先生は、もともと税を徴収する側にいて、
いまは、税理士の活動をなさっています。
「決まりだから取る」じゃない、
と考えられたことって、
たくさんあったと思うんですけど。 |
川田 |
そうですね。
金に執着する人もたくさん見ましたし。
実際私自身が査察の現場に行ったこともありますよ。 |
山田 |
〇査、つまりマルサですね。 |
川田 |
現場に踏み込んで、寝起きを襲ったこともあるし、
犬に噛みつかれたこともあるし(笑)。 |
糸井 |
そのときに、自分を鼓舞する動機は
どういう‥‥? |
川田 |
それはもう、正義感ですね。
あれはおもしろいもんでですね、
ああいうのをやると、
自分が正義そのものみたいになっちゃうんです。
それはそれでよいことだと思うんですが、
冷静になって考えてみれば危険なんですよ。
やってるときは、気づきにくいんですが。 |
糸井 |
でも、それがないと、
危険を顧みずに何か守ることって、 |
川田 |
できないですね。 |
糸井 |
ずっと民間にいると、そういう経験はないですね。 |
川田 |
いまは国税を辞めて、税理士活動をしていますから、
逆なんですよ。
ですから、両方のことがわかるようになりました。
ただ、問題なのは
「おさまりどころは、この辺だよな」
という気持ちになってしまうことです。
自分がアンパイアみたいになっちゃうんですよ。 |
糸井 |
そこはもしかして、
いまの山田さんと、似ているね。 |
山田 |
監査法人側だったのが、いまは、
糸井事務所の中にいますので、
そういう意味では両方の気持ちがわかる。
確かに中間になりますね。どうしても(笑)。 |
糸井 |
真ん中が難しいんですよ。
格闘技でもルールを作るのが
いちばん難しいですからね。 |
山田 |
そうですね。
税金もルールがすべてですし。
川田先生は、消費税のときに
ちょうど国税におられたわけですね。 |
糸井 |
そのときに、消費税の問題点は、
だいたい洗いざらい出ましたか? |
川田 |
だいたい出たんじゃないでしょうかね。
問題は、これから税率を上げていくときに
どうしていくのか、ですね。
例えば医療や食料品にかかる消費税を
どうするんだという問題がすぐに出てきます。
そこは政治的な仕切りの問題です。
基本的にどう考えるのかという
哲学の問題になってしまうんですね。 |
糸井 |
また。また、そうなんですよね。 |
川田 |
ええ。 |
糸井 |
いや、哲学論争だらけだね。
誰がどう決めるんだっていう話ですよ。 |
川田 |
そしてそれは、時代と共に変わっちゃうんですよね。 |
糸井 |
税金自体が、時代と共に変わったという、
いちばん大きな流れは、どの辺りですか。 |
川田 |
消費税の導入あたりからじゃないでしょうか。 |
糸井 |
やっぱり、そうですよね。
つまり、あのときに、
経済が生産の側じゃなくて、
消費の側のところに軸足を移した、
ということなんですね。
それ、まだ、あんまり理解されてないですね。 |
川田 |
されてないですね。うん。 |
糸井 |
税の考え方が進んでる、
モデルになるような国ってあるんですか? |
川田 |
ないですね(きっぱり)。
よくスウェーデン型かアメリカ型か、
というようなことが言われます。
でも、やっぱり、
その国に合う税制はどのように作っていくべきか、
ということで、ある意味で
哲学ということになっちゃうんです。
とにかく、日本として
どういう社会がいいのかで
税のあり方が決まってくる。
税は先じゃなくて、社会のあり方を決めた後です。 |
糸井 |
差がつきませんようにと
政治が運営されると
がんばった人は報われないという
ブーイングがあって、
そうじゃないと、格差社会がけしからん、
というふうになる。
必ずみんなが納得することはない。 |
川田 |
ありえないですね。 |
糸井 |
自分の立場に合わせて
普遍化するかのような意見を言い合うっていうのは、
やっぱりあんまりうれしくないことなんだけどな。
できる限りポジションに関わらないトークを
するべきですよね。
またこれ精神論になっちゃうんだけど。
相続させる財産がないけど、払いたいなー!
っていう貧乏人が出てきたり。 |
山田 |
ポジションが逆なことを言うと
かっこいい。だけど、
仲間うちからは裏切り者扱いですね。 |
糸井 |
うん。でも、ドラマっていつもそうで、
裏切り者の物語なんですよ。
戦争の前線で、敵の兵隊を助けるのは、
典型的な裏切り者です。
お代官の前で、我が子の手を
争って引っぱるふたりの母親のうち、
本物の母親が手を離す物語も、そう。
ぼくは、これからの時代はそこだと思ってんだけどね。
今度のTARO MONEYなんかは、
このためだけにぼくらがなぜやってるのかという、
しかも税金も納めるぞ、という
ポジションなんて、大きく
わけわかんなくなってるわけです。
これからは、企業がみんな、この役割を
担っていくんだと思う。 |
川田 |
非常にいい、おもしろい企画ですよね。
おおいに期待しています。 |
糸井 |
いい教材ですね。
岡本太郎のね。 |
川田 |
本日はたのしいお話をありがとうございました。
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