中沢 |
うーーーーーん。
これはそうとうすごいですね。
すごく過激だと思う。
だけど、岡本さんの絵って、
どこかかわいらしさがあって、
受け入れやすいんですよ。 |
糸井 |
動物とか、はしばしに
描かれていますからね。
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中沢 |
だから、根本的な思想を
そんなには表に出さなくても
人に伝えられるようになっているんですね、
岡本さんの絵は。 |
ほぼ日 |
まがまがしい力に負けずに誇り高く燃えあがる
人間の持つ力と美しさが描かれている、というふうに
敏子さんからは聞いたのですが。 |
中沢 |
たしかに、そういう面もありますが、
それだけではない考え方が
ここにはひそんでいると思います。
すべてを肯定しているんですよ。
しかし、それをうまく表現したり
理解させるのが至難の業であることは、
岡本さんは、よく知っているわけです。 |
糸井 |
そうか。まるめこまれちゃう部分があるのを、
太郎さんは知っていますね。 |
中沢 |
いやあ、よく知ってる、知ってる。
知ってて、描いてる。
これは、もう、観ればわかります。
戦後の民主主義で、
こういう絵がストレートに
受け入れられるはずがないわけで。
これは、お祭りなんです。
いろんなものを燃やしちまえ、って、
言ってるんです。 |
糸井 |
踊ってるもんね。 |
中沢 |
いちばん近い思想のものを挙げるとすると、
そうだな、
ティム・バートンの映画
「コープスブライド」が近いかな。
いまの社会って、死を受け入れにくい、
受け入れたくない社会でしょう。
これは、その部分に対して、
全面的につきつけているところがあると思う。
この絵が描かれたのは、
日本ではなくて、メキシコです。
ですから、メキシコの神話的な考え方が
ここには入っている。
メキシコでは、骸骨のお祭りがあるもんね。 |
糸井 |
骸骨のおかしとか。 |
中沢 |
インドにも、こういう絵はたくさんありますし、
曼荼羅はだいたいこういう思想です。
この絵は、曼荼羅の、
ある部分を拡大してるとも言える。 |
ほぼ日 |
岡本太郎さんの絵って、
あんまりシンメトリーなものはないんです。
だけどどうして『明日の神話』だけが、と
思っていたんですけれども。 |
中沢 |
うん。これは、歓喜の曼荼羅だよね。
『太陽の塔』もじつは、曼荼羅。
『太陽の塔』は生命の力を伝え、
これは、死を伝えている。 |
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糸井 |
表裏になっているんだ。 |
中沢 |
両方あわせると破壊と創造になります。
「破壊を怖がる必要はないんだよ」
ということを、岡本さんは言いたいんでしょう。
描いてる本人は、ある意味で、
こりゃ、怒ってますからね。 |
糸井 |
あれは、踊りでありもだえであり、なんですね。 |
中沢 |
つまりは、死者のきずな、なんです。
日本でも古くからいきづいている、
伝統的な死の哲学というものを
岡本さんは、この絵で
かなり過激にぶっ飛ばしたんだよ。
バタイユ的なやつをね。
これは、ふつうの美術家には
できないものかもしれません。
「ただの反社会」「子どもである」というだけでは、
岡本さんみたいな、こんなこと、ないんだよね。
(中沢さんの『明日の神話』についてのお話は
明日につづきます)
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