第13回 「ザザーン」が怖くて。
一時期、なんだかいろんな人が
鎌倉に住んでた時期があったよね。
糸井 うん。樋口可南子さんも住んでたらしい。
あ、そうなんだ。
糸井 怖くて、すぐ東京に戻っちゃったんだって。
怖くて? なんで?
糸井 あのね、波の音が怖かったらしい。
夜になると、なんの気配もなくなって、
海だけが「ザザーン」っていってるんだって。
もう、京極夏彦の『狂骨の夢』みたいな世界で、
毎日が怖くて、しょうがないから、
ビデオ屋でビデオ借りてビデオ観て、
「ザザーン」の音を誤摩化したりして。
へえ。
糸井 鎌倉って、雰囲気がいいとか、
ムードがあるとかっていうけど、
つまり、それは「鎌倉という安定感」でしょ?
そうだね。
糸井 安定ってさ、ある意味では、
「死のにおい」なんだよ。
ああ、うん、うん。
糸井 安定してて、ざわざわしてないでしょ。
だから恐いんだって、鎌倉は。
あの、江ノ電なんかもさ、
観光客として見るといいものだけど、
実際にそれに乗っていると
ようするに、「小さい電車」だから。
寂しいのか、ちょっと。
糸井 うん。寂しい、寂しい。
だからね、たまにっていうのが
いいのかもしれないね。
鎌倉はたまに来ると。
糸井 そう。伸坊と同じ、
生涯に10回くらいがいいね。
一同 (笑)
あ、そういえばね、思い出したんだ。
もうちょっと来てるよ、鎌倉。
糸井 なに?
あの、養老さん家が鎌倉なんだ。
糸井 あー。
養老(孟司)さん家に何回か来てるからさ。
糸井 じゃ、3回は増えたね。
うん。
糸井 ということは13回だ。
うん、まぁ、そんなもんかな。
一同 (笑)
(いつまで、つづくのかな?)

2008-05-13-TUE


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN