コーヒーテーブル事件
事件はこのメールから始まったのでした。
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雨季のバリ島から 糸井重里様へ
しばらく前に連載していた
「横尾さんのインターネット」を見ていて、
ヤヤヤッ、いやまさか、
もう一回度の強いメガネをかけて見て、
ヤヤヤッ、間違いない、あれは絶対そうだ、
なななんと糸井さんと横尾さんの間に
私が作ったテーブルが写ってるではないか。
喜びもつかの間、なんか変なので
さらに度の強いメガネで見たところ、
ヤヤヤッこれは何としたことか、
天板のガラスが傾いてる!
どうして、写真のせい?
いやいや第2回ばかりでなく
第3回もやっぱり傾いてる、
第6回になるとさらに傾きは激しくなり、
上の壷がもうほとんど滑り落ちそうである。
どーか、おねげーでごぜーますだ、
消費者苦情センターへ訴える前に、
作者のあっしに修理させておくんなさいまし。
と言っても、今あっしはバリでファッションビル
の建築設計にかかわっており、
1月末までバリに釘付け状態。
なんとかつっかえ棒をしてしのいでおくんなさいまし。
菊池 由見子
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これにはdarlingもびつくりで、
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ほぼにちわ。darlingdarlingです。
びっくりしました。
あのテーブルが!?
どうしてあるのか、忘れてしまいましたが、
つくった人がいるのは当たり前ですよね。
なおしてくださるのなら、
いつか、お願いします。
バリは、ぼくも大好きです。
こんどの正月は、家族の仕事の関係で行けないのですが、
毎年の正月はバリだったんです。
こんど、バリに行ったら、訪ねさせてください。
ありがとうございました。
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とお返事を返した、というのが去年の12月。
そうしたら、昨日、
postman宛にメールがきました!
予告の1月末だ!
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ほぼ日のみなさま、
お久しぶりです。
以前お便りしたバリ島の菊池由見子です。
今東京に来ています。
バリのプロジェクトが大詰めにきているので
今回は1週間しか日本にいられませんが、
お約束したようにテーブルの傾きを
修理したいと思います。
突然ですが今日はどんな状態か
とりあえずチェックしたいと思いますので、
お訪ねしてよろしいですか?
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なんて律儀なええ人や!菊池さん!
そして、早速来ていただくことに。
![](IMAGES/020102-1.JPG)
コーヒーテーブルをチェック
菊池さんは、日によく灼けた、
太陽の匂いのしてきそうな素敵なかたでした。
菊池さんは、バリ島で
20年前から創作活動をされているかたで
東京のコンランショップがあるOZONEプラザで
展覧会をなさったこともあるというプロフェッショナル。
自分の作った家具、あんなに不鮮明な写真でも
やっぱりわかるんですね。
自分の分身ですもんね。すごいなあ。
来られるやいなや、テーブルをわしづかみにして
「あら、あのカメラで見たときほどでは
ないですね」
とチェックすることしきり。
でも、どうやら、バリから輸送するときに
ばらばらにしてから持ってくるので
それを元に戻すときに、間違った組み立てかたをして
傾いてしまったんだろう、ってことでした。
その傾きを直すべき箇所が接着剤でかたくかたく
塗り固められており、
直せない状態になっていたのでした。
「でも、さらに、直したい部分があるの。
これを見てください」
と写真のファイルを取り出されました。
![](IMAGES/020102-2.JPG)
ファイルを見る
そこには、うちの事務所にあるのと
まったく同じテーブルが。
しかし、何かが違うのです、何かが!
「そうです。このテーブルのこの形の意味はね、
ここにグリーンを置いていただかないとね、
作者の意図に反してしまうんですよ〜! ああ!」
と嘆かれています。
つまり、これが、本来事務所で置いてあった姿。
![](IMAGES/020102-3.JPG)
作者の意図に反している
そして、本当にあるべき姿。
![](IMAGES/020102-4.JPG)
作者の意図
ぜんっぜん、違うでしょう!
菊池さんは、私たちが、
この辺りにはスーパーくらいしかなくて、
花屋もなければ、草木の生えている土地もないですから!
と制するのも聞かずに
「でも、ちょっと、雑草でもつんできます」
と言って出かけてしまわれました。アクティブ!
ていうか、ここは、アスファルトの街東京ですし!
雑草とかあるかなあ。
やはり、自分の作ったものに対する思い入れは強いです。
今まで、文字どおりほったらかし、
にしていたdarlingも
「もったいないことをしてた!」と反省しきり。
ほんとにまあ、このコーヒーテーブル、
一夜にして、大脚光をあびたのであります!
![](IMAGES/020102-5.JPG)
そこへ、スーパーの紙袋を持って菊池さん再登場。
「なんでもいいんですよ! 緑ならば!」
と、取り出されたのは、
ニラ、ほうれん草、春菊・・・
おえおえ! 菊池さん、日本の味が恋しくて鍋ですか?
まさか活けちゃうんですかっ?
![](IMAGES/020102-6.JPG)
わたしたちは野菜です
驚いている我々を尻目に、がんがんとコップに
ニラやらほうれん草を活ける菊池さん。
やおやか、家具屋かわかりません!
でも、ご覧下さい。それをこのコーヒーテーブルに
あしらうと・・・。ほら、こんなに素敵に!
![](IMAGES/020102-7.JPG)
![](IMAGES/020102-8.JPG)
「こうやって使うものだったんだ! 知らなかった。」
「すごいっ! 全然いいっ! 生き返った感じだ!
ガラスと、この下の木の色と合うね、合うね」
一同、ニラやらほうれん草付きテーブルを見て、
大騒ぎです。
![](IMAGES/020102-9.JPG)
「これね、コーヒーテーブルだから、
ここでこう、緑を見ながら
お茶なんかすると、気持ちいいんですよ」
と、菊池さんは、やっと満足そうな顔をされていました。
「なるほどなあ! バリに行きたくなっちゃったなあ。
ほんとに、ありがとうございます。」
darlingもご満悦です。
このコーヒーテーブルは
4、5年前に三越かどこかの百貨店で買ったもので
そのたまたま買ったテーブルの作者が
たまたま写真に映りこんだ自分の作品を
たまたま見つけて、連絡をしてきてくださった、
という「たまたま」が引き起こした事件なんですよねー。
ちょっとグリーンを加えただけで
こんなに素敵になってしまうとは。
そのことをもとから考えに入れた設計だったとは。
ほかにも、「知らない」ことによって
無駄にしてしまってるものってあるのかも。
ちょっとしたことで、すごく気分がよくなったり
楽しくなったりするもんなんですよね!
世の中は!
そんなことを言い合いながら、
しみじみとニラを愛でる、
darlingとほぼ日スタッフでした。
菊池さん、本当にありがとうございましたっ!
*このページで使用された写真は、
Canon 「Power Shot G2」で撮影しています。
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