編集部
(以下、
編) |
何が大変なのか、
上の説明だけじゃわからないです。
要はテレビに出演しただけのことなんでしょう?
なんか、ゲーム性の高い
テレビ番組に真剣になった、と? |
ROCK西本
(以下、
69) |
何言ってるんだよっ!
いや、これがホント大変だったんだって。
バラエティー番組とはいえ、
過去のVTRを見せてもらったら
これが各出場者全員がきっちり
プレゼンをしてたりするわけよ。
しかも、ちょっと笑いまでとってたりするし。
プレゼンするネタはともかく
どういう筋道でプレゼンをするか?
ってことも重要だし
辛口コメンテーターの厳しいツッコミにも
きっちり答えていかないといけないし、
そうなると想定問答集も必要だったりするんだよ。 |
編 |
なるほど、ほとんど
真剣な「仕事」みたいなものですね。
でも、話を聞く限り、
準備のほうが大変そうだなぁ。 |
69 |
そうっ!
それがまた、出演依頼のオファーが
番組出演の3日前なんだよ。
この間には、大阪で講演の仕事も入っていたから
実質、2日しかなかったんだよ。
しかも、一日は本番当日だし。
もう、ふつうに考えたら無理。
ぼくと、マネージャー役の通天閣あかりは、
ごくふつうにお断りする用意をしていたんだよ。 |
編 |
プレゼンボードや資料なんかも
用意しておかなくてはいけないんですよね。
当時の社長のスケジュールを見るかぎり、
そんな時間は全く無いはずですよね。 |
69 |
そうだよ。
これが、そのころのスケジュール表。ほら。 |
編 |
ああ、ひどい。目も当てられない。
・・・・馬鹿。 |
69 |
だろ?!
12月28日から休暇でビンタン島に
行くことになってたから、
それまでにできる仕事は全部やっておくために
12月は殺人的なスケジュールだったのよ。 |
編 |
でも、受けたんですよね? |
69 |
オファー内容を見たときに
「これは、難しいよな。 社長、断るよな」
と、常識的に思っていたら、
本人が「やります」と強く一言。 |
編 |
強くですか。 |
69 |
ああ、力強かったね。
どうやら番組内容を
深く理解して無かったせいもあるだろうけど。 |
編 |
なるほど、あの人は
案外、そういう所がありますからねえ。 |
69 |
うん。昨年はそうやって気軽に出演して
痛い目にあったことが一度あったしね。 |
編 |
あ、あれですね(笑)。
今回もそうなりそうだったと。 |
69 |
いや、今回はそうなってはイカンと思って、
止めるべき所は止めた。 |
編 |
ほう。例えば、どんな事を? |
69 |
最初の打ち合わせで。
っていうか打ち合わせは
その一回こっきりだったんだけど、
プレゼンテーションのネタ出しについては
厳しめにネ。 |
編 |
ほう。ちなみにどんなネタが。 |
69 |
「オナニー券」を日本全国の男子に配って、
新しい通貨のように流通させるとか、
やたらに他人にからんだり、
すごんだりする暴力的な人を、
お台場あたりの一個所に集めて
「暴力島」って独立国にして、
日本と貿易させるとか。 |
編 |
つまり、そういう人どうしで
集まって生きてもらう、と。
それはいいような気もするけどな。
そういう人にからまれやすい体質の
社長らしい発想ですね。
しかし、それは「タモリ倶楽部」あたりでは
有効ですけど
ゴールデンの時間帯では厳しいでしょうねぇ。
「オナニー券」については、もう論外ですね。
で、結局どんなテーマで
プレゼンテーションすることになったのですか? |
69 |
これがなんと、「農業関係」の大まじめなテーマ。 |
編 |
ええっ!農業って
「SKIP」の仕事をやっていることを考えると
本業に近すぎて、直球すぎませんか? |
69 |
いや、これが
「SKIP」の仕事をしてなかったとしても、
社長がやりたかったことらしいのよ。
100万を本気で獲りに行くには
本気のネタで勝負するしかないと。
【市民農園を背景にもつ
シルバーマンションの建設】というプランで。
農業団地を作るという大きな構想なんですよ。 |
編 |
それはかなり骨太な企画!!
老人社会という問題と、農業問題と、余暇産業と、
ぜんぶ入ってる感じですね。 |
69 |
さっきまで「オナニー券」とか「暴力島」とか。
うっれしそうに言ってた人とは思えない。
マジメと不真面目の二重人格なんだよ。
打ち合わせをしている最中に、
急に真剣モードに入ってさ。
このアイデアが一気に
社長の頭の中で組み上がっていった。
アイデアというよりは
事業計画に近いものだと思うけど。 |
編 |
で、プレゼンの準備に入ったんですか? |
69 |
社長はその後も夜中まで仕事が詰まっていたので
その日はそれでおしまい。
で、次の日は大阪で講演の仕事があったわけだよ。
飛行機で移動したんだけど
羽田の時点では、
まだラフな構想のままだったんだけど
飛行機の乗って降りたら
「にしもっちゃん、あれ、出来たよっ!」って。
「ええっ、もう、出来たんすか」
こっちもびっくりしてねえ。 |
編 |
そりゃ、びっくりしますよね。
フライトの1時間足らずですよね。 |
69 |
うん。それで講演会場への
移動中のタクシーの中で
説明してもらったんだけど
「ほぼ日メモ帳」に
なにやらびっしり書き込んであるのよ。
とにかく時間が無いわけだから
とりあえず、社長が講演している間に
東京の、その番組のスタッフに
「羽田に戻ったらそのまま
スタッフルームに直行するから
待機しておいてくれるように」連絡して、
そのメモ帳に書かれてあることと、
疑問点や準備するものを手配するメールを
各方面に送信したんだよ。 |
編 |
各方面って? |
69 |
まずは番組スタッフに
内容のあらすじを伝えておいて、
深夜から始まる打ち合わせの時には
その内容を消化した状態にしておくこと。
あと、数字的な裏付けとか、
どういう野菜を作るかっていうことを
説明するために
野菜の現物も必要になるので
永田農業研究所の
吉川さんに連絡をとりながら手配。
写真資料も必要だということで、
「SKIP」の産地の写真を撮り続けている
カメラマンの阿部さんに写真の手配。 |
編 |
それはそれで結構、大変ですねえ。 |
69 |
いや、大変なのは
吉川さんと阿部さんだよ。
吉川さんは翌日、論文の発表があるとかで、
連日徹夜状態で、準備に追われていたし。
阿部さんのほうは、
その日、まだ長崎にいたんだからね。 |
編 |
大変ですねえ。
とにかくプレゼン資料の手配が大変だったと。 |
69 |
うん。それから深夜まで
資料を元にプレゼンの戦略を
darlingとディレクターが練り始めた。 |
編 |
その間、西本さんは何をしてたんですか? |
69 |
会話の合間に、質のいい笑い声を挿入するとか。
嫌みのないツッコミを入れて、
精神のマッサージをするとか。
たまに検索エンジンで
「東京ドーム」の面積を調べたり。 |
編 |
なるほど、その時は
あまり役にはたって無かったわけですね。 |
69 |
いや、かなり有効な立ち位置だったと思う。
社長の、感謝のまなざしみたいなものを感じていた。
だって、起きてるだけでも
大変だったんだから。
あっ、そうそう。
スタッフルームにさぁ、
出演者を書いた紙が貼ってあるんだけど、
他の出演者はワープロで書かれているのに
うちの社長だけは、
なぜか手書きで「糸井重里」と。 |
編 |
孤独な「手書き」ですか。 |
69 |
そうなんだよ。
代役として出演ってことでも無いらしくて。
どうやらホントに
急なキャスティングされたみたいなんだ。
番組予算的には100万円を獲らせたくないけど
盛り上がりとしては、100万円獲得の絵が欲しい。
で、本気で100万円を獲りに行くような人を
急遽、キャスティングしたんではないか、と。
この回は特に「スペシャル」だしね。
そんな業界っぽい穿った見方をしてたりもしてたよ。
で、まぁ、深夜までかかって
社長直筆のプレゼンボートができ上がってね。
で、本番当日になるわけだ。 |
編 |
で、本番はどうだったんですか? |
69 |
うん。朝、自宅マンションまで迎えに行ったんだけど
「これは普段のプレゼンとは違うわぁ」って
けっこう緊張してるようだった。
なにせ、睡眠時間がずっと足りないままの日々だし。
しかも行きのタクシーがさぁ、
道を間違えたりなんかしてね。
普段だったら、冗談言ったりする人なのに
不機嫌に黙りこくったりしてたわ。 |
編 |
そうなんですか。
でも、社長はプレゼンは得意なんですよね。 |
69 |
いや、これがちがうんだって。
本人は本気でそうは思っていないらしい。
どうやら、自分ではプレゼンがヘタだと
思っているらしいんだよ。
「ヘタだと思っているからこそ、全力を尽くす」
みたいなことを言ってたな。
あと、その場にいる人全てを
納得させようと思わないとダメだってことも。 |
編 |
ほう、プレゼンがヘタだって思っているのは
意外でした。
で、番組収録はどうだったんですか? |
69 |
メーク室でツッコミ役である「鉄の壁」担当の
大竹まことさんから
「番組ですから厳しくいきますよ。
失礼があったらすみません」的なことを
言われたらしいのよ。
「おいおい、やっぱりマジだよ!」
って楽屋で二人で騒いでいたんだけど
番組が始まってからは
ホント騒いではおれんかった。 |
編 |
それはどうして? |
69 |
いや、このプレゼンがマジで難しいのよ。
他の芸能人の方もどんどん舞い上がってしまって
あのラサール石井さんだとか、
コワモテ代表みたいな加納典明さんですら
全く実力を出し切れていないんですよ! |
編 |
コワモテも、ダメ、と。
さんまさんのコントでも
空気を読むことにかけては
天才的なバイプレイヤーである
ラサールさんがですか? |
69 |
そう。7人の「鉄の壁」がホントに
いやな質問やツッコミを入れてくるのよ。
その相手だけにとらわれていると、
100人の陪審員の心を掴むことは
出来ないんです。
このあたりの空気は説明しづらいんですけどね。 |
編 |
その時、社長はどうしてたんですか? |
69 |
「ほんとに怖いよ〜!」って言って、
かなり弱気になってた。
普段のプレゼンってのは、
いいアイディアを育てることが、
プレゼン受ける側にもあるわけでしょう。
でも、これはケタグリしてでも
落としたいっていう受け手が、
ひたすら痛いところをグリグリと責めてくる。
そういうの、うちの社長、
生理的にムッとする人だしさ。
農業関係での本気のプレゼンをするわけだから、
自分の説得力がなくて落ちたら、
農業関係者とか
永田先生とかにもうしわけないっていう、
かなりのプレッシャーがあったみたい。
番組が始まるちょっと前に、永田先生から
じきじきに激励の電話もいただいちゃったしさ。 |
編 |
そういう時は西本さんはどうしてるんですか? |
69 |
ああ、「大丈夫っすよ!」とか
「何言ってるんすか!」って言いながら
社長の手を握ったり抱きしめたりして・・・・。
赤ん坊をあやすようなもんですからね。 |
編 |
・・・・手を握るんですか?! |
69 |
ウソでした。
実は、オレも
けっこう緊張していたような気がする。
ま、自販機のお茶を買ってきたりはしていたね。 |
編 |
無駄なウソをつかないように!
で、プレゼンテーションをされたわけですよね。
見てていかがでしたか? |
69 |
うん。これが涙が流れそうになった。
これは大げさにじゃなくて。
だって最初の説明の段階から
社長、涙目なんだもん。 |
編 |
そうなんですか。 |
69 |
ノッケから川島なお美さんが
厳しいこと言うわけよ。
それを慎重にかわしてから
会話をするように
プレゼンテーションをしていった。
決して大げさな事をするわけでもなく、
「このアイデアがいかにみんなを幸せにするか」
ってことを真摯に伝えていくだけだった。
プレゼンテーションって
こう、一方的に自分の考えを言いがちじゃない?
社長のはホント会話をしてるような感じでねえ。
こういう弁護士さんがいたら
いいよなぁって思ったりもした。 |
編 |
何を弁護されたいんですか? |
69 |
いや、なんかこの人になら
オレの人生を預けるぜ的な感じだったんだよ。
それくらい心を打たれたってことが
言いたかったわけであるのだが・・・・。 |
編 |
そうですか。それはそれで、わかりました。
それで結果の方はどうだったんですか? |
69 |
それは、いま言わないほうがいいでしょう。 |
編 |
実際に番組を観てくれ、と。
では、オンエアを楽しみにしてます。
どうもありがとうございました。
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