── |
いろんな意味で、
高め合う相手は必要ですね。 |
トメ |
ライバルって、いるといいですよ。 |
── |
人間は、ほんとにすごいですもん。
頭いいし。 |
トメ |
そ、すごい人がたくさんいる。
私ね、ギタリストの押尾コータローさんに
すごく勝手に支えてもらってるんですよ。
ご本人はぜんぜん知らないんですけども、
一方的に!
彼のCDを聴いて、
あのギターテクニックにびっくりしちゃって
どう考えてもひとりで弾いてるわけないよね?
と思って
DVD観たらひとりで演奏してて
ライブ行ったらやっぱりひとりでやってた。 |
── |
どう検証してもひとりで(笑)。 |
トメ |
はい。
人間、ここまでできるんだ!って思った。
だったら私も
できるよね?
そういう励ましを、もらってます。 |
── |
そこで自分にもってくのが
すごいです! |
トメ |
たとえば、「アレグリア」も
人間じゃないでしょ?
ほんとにすごいんだよ。
いろんな分野で
超越したことをやってる人を見ると
刺激になります。
押尾さんがいま
作曲がんばってるんだったら
私もがんばるわい! |
── |
勝手に「じゃあ私も」と
思えばいいんですね。 |
トメ |
尊敬しながらも、超負けず嫌いなの。
私にだってできるわよ!
ヘビ年だから執念深いよ。
どーだ! |
── |
それはすごい才能だなあ。 |
トメ |
そういうふうに生んでもらった親に
すごく感謝してます。
|
── |
なんたって、柔道も黒帯ですからね、
トメさんは。 |
トメ |
柔道は、まわりに
「絶対無理」と言われたから、
カチンときたんです。
特に、柔道をやってる人たちは、
大笑いしちゃってね。
「そんな細っこいからだで
できるわけないやーん」って。
夫にも最初は
ばかやろ?って言われて。 |
── |
耳がつぶれたって聞きましたが。 |
トメ |
ほらほら。
|
── |
うわー。こんな美しい女性の耳が。 |
トメ |
寝技で内出血して、
寝れないくらい痛かったです。
年末で病院がお休みだったので、
いちど電話を入れてから
病院に行ったんですよ。
そうしたら、お医者さんがびっくりして。
「女子高生の柔道部員が来るかと思った。
‥‥いつからやってるの?」
って(笑)。
「たいへんでしょう?」
「たいへんです」 |
── |
でもいまや黒帯。
もともと運動神経はいいほうなんですか? |
トメ |
ううん、ぜんぜん。
32歳までろくに運動してなかったし
逆上がりもできなかったからね。
32歳でヒップホップのダンスをはじめてから
「からだってちゃんとトレーニングしたら
自分の言うことを聞いてくれるんだ」
とわかった。
たとえば漫画で、壁を
ひらりと飛び越えるシーンがあるでしょ。
あれが夢でね。 |
── |
あれが夢? |
トメ |
できるようになったからね。 |
── |
できるようになった?!
壁越えを?? |
トメ |
はい。手をついたら
壁を飛んで越えられるようになって、
逆上がりもできるようになって
すごく楽しいんです。
ヒップホップも、育児と仕事が忙しい時期で
挫折しかけたときがあったんだけど
先生に
「いまから振りを覚えるのは大変じゃない?」
って言われて
カチーン。 |
── |
カチンパワー、すごいですね。 |
トメ |
そう。人から「無理」と言われると
「なにをォォォォ?
見とけェェェ〜〜〜!!!」 |
── |
でも、先生から言われたら、
説得力十分ですよ。
そういう場合、私などは
「そうか、無理なのか。
やっぱり無理だったわ、ハハハハ」
となります。
でも、できるんですね。 |
トメ |
そうなんです。
ある程度までは
回数で(つまり練習で)できます。 |
── |
できるんですね? |
トメ |
できます。
ある程度までね。
そのあと、オリンピックに行けるかどうかは
どんなにがんばっても無理かもしれん。
やっぱり高校生大学生には勝てないかも(笑)。
でも、黒帯までは行けるし、
自分が「やったぞ」と
思えるところまではいける。
人に無理だと言われたところでも
行けちゃうんです。
無理だ、と言われることを
知らないうちに自分が求めているんですよ。
「無理だと言われたから」と
言いやすくなるでしょう。 |
── |
「やりたかったんだけど、
無理だと言われた」 |
トメ |
「みんな反対するし、
心配かけちゃ悪いし、
子どもも泣くし」 |
── |
そうやって、
あきらめやすくしているんですね。
無理だと言われても反対されても
子どもが泣いてもそれは
「できないこと」の理由ではない。 |
トメ |
できます。
とかいってもみんな、無理しないでねー。 |
── |
ハハハハ。
自分がダメだということに
気を取られすぎなんですね。
自分に負けてちゃだめだなあ。 |
トメ |
柔道は、愛好家と競技者の溝が深くて、
大人がテニスをはじめるのとは、
ちょっとちがうんです。
はじめは子ども相手に練習していたんだけど、
紹介してもらって、
地元の実業団の道場に入りました。
34歳の女が、
いきなり実業団の道場に
行ったわけですよ。
20代の巨大な男の子ばかりの集団が、
こんなド素人のおばさんを
どう扱っていいかわからないでしょう。
みんな自分の練習もあるし、
私の相手なんかしてくれないわけです。
困って遠巻きになってて、
私は壁の花になってた。
「どうしよう〜〜〜」状態ですよ。
そんなとき、筑波大学女子柔道部監督の
山口香さんと仕事のおつきあいがあって、
ちょっと相談したんです。
そうしたら、
「相手は若い男の子たちなんだから
こっちが恥ずかしがってたら
むこうはもっと恥ずかしがっちゃってるよ。
もっとガンガン『お願いします!』って
行ったほうがいいよ」
って言われた。
そこからはもう、ガンガン行きました。 |
── |
最初は自分の居場所をつくるところから
だったんですね。
よくもやめずに、黒帯まで。 |
トメ |
先生に指導されたことで、
頭ではわかっていても
からだが動かなくて
悔しくて泣いたときもあります。
34歳にもなって、柔道で泣く(笑)。
あの1年のがんばりは、宝です。 |