糸井 |
鶏郎さんと、落語との関係も、
すごく感じるよね。 |
大瀧 |
それはありますよ。それは基本素養として。 |
夫人 |
ええ。落語は小さいときから
聴いていましたから。 |
大瀧 |
そうですよね。どなたが一番でしたか。 |
竹松 |
いろいろ聴いていましたが、
やっぱり志ん生が。 |
大瀧 |
志ん生さんが一番ですか。 |
竹松 |
昔、リアルタイムで聴いたものが
ソフトになったりして、
晩年はCDを買ったり。
でも、「自分が聴いたのは、
もっと違うものだった」と。
「もっとすごいのがあった」というのは
聞いたことがありますね。 |
糸井 |
そうか。ライブで聴いているわけだ。 |
大瀧 |
そうなんだよね。寄席で聴いているんだよね。 |
竹松 |
実際に見に行っていましたからね。
のちにこうしてソフトで出ているものよりも、
素晴らしい名演があった、
ということなんですね。 |
糸井 |
ということは、寄席だけじゃなくて、
放送でも素晴らしいのがあった、
というのを言っているんですね。 |
大瀧 |
ニッポン放送によく出ていたからね。
志ん生さんは、あの頃は。 |
竹松 |
志ん生が一番いい、
ということは言ってましたね。 |
糸井 |
おっしゃっていたんですか。
あぁ‥‥やっぱり、好きなんですね。 |
竹松 |
フフフ。 |
大瀧 |
‥‥鶏郎さんは「落語長屋」とかで
音楽もやってるし。 |
竹松 |
ええ、そうですね。 |
糸井 |
鶏郎さんといえば、アメリカものの
テレビの主題歌って‥‥それこそ
「トムとジェリー」も
作詞作曲がそうなんですね。
‥‥それは僕、初めて知って、びっくりした。 |
竹松 |
私も最初、びっくりしたんですよ。
「これって、アメリカの曲じゃなかったんだ」
と。 |
糸井 |
僕は、昨日、びっくりしたんですよ(笑)。 |
大瀧 |
あれ、オリジナルを使うと
版権が高かったからじゃないの。 |
竹松 |
「トムとジェリー」は、
アメリカでは主題歌は付いていないんですよ。 |
大瀧 |
あっ、ないのかぁ! |
竹松 |
ないんですよ。DVDとかビデオは、
主題歌がなくて番組が始まるんです。 |
大瀧 |
「太陽はひとりぼっち」と一緒か‥‥。 |
竹松 |
だから「トムとジェリー」もずーっと
ビデオでは主題歌が出ていなくて。
日本版には付けるといって、
最近、主題歌入りDVDが出ましたね。 |
大瀧 |
そうだろうね。あれ、入らないとね、
見た気がしないよね。 |
糸井 |
そうですよね。
あれがコンセプトだと思ってますからね。
ちなみに、
「♪トムとジェリー、仲良く喧嘩しな」って、
僕はもう、刷り込まれていて。
任天堂に「スマッシュブラザーズ」という
何百万本も売れたソフトがあるんですけど、
それが出来かけのときに、
このまま行ったら単なる喧嘩ゲームに
なっちゃう、というときに、
僕は「トムとジェリー」を思い出して、
「仲良く喧嘩しな」をコンセプトにして、
「これは、おもちゃが喧嘩遊びを
しているんだというコンセプトで
やればいい」と言って作り直して、
「大乱闘スマッシュブラザーズ」という
ソフトになっているんです。
それは、「トムとジェリー」がなければ、
鶏郎さんの主題歌がなければ、
その説明は出来ないんです。 |
大瀧 |
「仲良く喧嘩しな」というのは、
戦後民主主義だからね。
戦後の日本人のほうが、アメリカ人よりも
民主主義的だったんじゃないですかね。 |
糸井 |
アメリカから来たのじゃなくて、
三木鶏郎から来た‥‥というのを
昨日、知って、ほんとうにびっくりした。
「仲良く喧嘩しな」って、
もう一つの解釈としては、
落語の夫婦喧嘩とも言えるんじゃないですか。 |
大瀧 |
あぁ、なるほどね。 |
糸井 |
「だって、寒いんだもん」に到る(笑)。
だから、日本人が作ったんだと思ったら、
急に、「あー、だから、あんなに
みんな腑に落ちたんだ」と。 |
大瀧 |
ああ、なるほど。腑に落ちる、ね。 |
竹松 |
私も、それはすごく思いました。
「あ‥‥、日本人が作っていたんだ」と。 |
大瀧 |
たしかに、アメリカ人は
「仲良く喧嘩しな」は、言わないよね。 |
糸井 |
どっちが勝ちか、ですよね。
「暫定的にでもいいけど、どっちがボスだ?」
みたいな。 |
大瀧 |
まぁ、「勝っても負けても、最後は握手しな」
ぐらいなもんかな。せいぜい。 |
糸井 |
そうですよね。 |
糸井 |
「うちのママは世界一」も、
鶏郎さんだったんですよねぇー! |
大瀧 |
そうですね。 |