大瀧詠一さんと、トリロー先生の話を。-三木鶏郎を知ってるかい? PART2-

第4回 何を聴いて何を受け取って、それをどうやって自分で消化していくか。



── 細野さんも鶏郎先生の
トリビュート・コンサートに出られましたけど、
それまでは鶏郎さんの音楽には、
そんなに近づいたことはなく‥‥?
細野 なにしろ資料がなくて。
ずっと探していたんですけど。
「ラジオの時代」というCDが出たときに、
「特急の機関士で」が2タイプ入っていたのしか
持っていなくて。
その前にティン・パン・アレーの
「キャラメル・ママ」というアルバムでやったときは、
記憶だけですよね。素材がなかったですから。
── そうなんですか!
細野 歌詞を探したりできなかったので、
記憶だけを頼りに、
“東京、京都、大阪、ウー、ウー、ウー、ポッポ”
‥‥そこだけ使ったんですよ。
いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『CHOO CHOO GATTA GOT '75』

作詞作曲:細野晴臣
Tin Pan Alley「キャラメル・ママ」より。
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
慶一 細野さんは私より4歳年上なんだけれど、
その歳の差が大きいわけだ。
細野さんがやっているのを聴いて、私は、
「あっ、これ、聞いたことがあるな」
と思うわけですよ。
「あっ、これが、あれか!」と。
── 僕(武井)は昭和41年生まれなんですけど、
細野さんの“東京、京都、大阪〜♪”が
最初に触れた鶏郎さんでした。
ずっとあとから、
「あれが、鶏郎さんだったんだな!」と。
細野 ああ、そうか。
佐藤 今の人はみんな、そうじゃないですか。
ティン・パンでフレーズがちょっと入ってくるのが、
鶏郎さんとの最初の出会いですよ。
竹松 ホームページに来られるかたでも、
「ここの鶏郎さんを知って、
 ティン・パン・アレーのあの
 “CHOO CHOO GATTA GOT '75”は
 鶏郎さんがオリジナルだってことを
 初めて知りました」
とお手紙をいただいたことがあります。
そういうふうに、オリジナルを他のかたで聴いて、
こっちに戻って来るということがよくありますね。
細野 そうか、そうか。そういうことはよくある。
慶一 しかも、断片だよね。
細野 断片だよ。
佐藤 そうか、断片だったんだ。
「CHOO CHOO GATTA GOT '75」は、
曲自体はロックンローラーの旅の歌じゃないですか。
旅の歌なんですよ。そこにクロスして、
「僕は特急の機関士で」が出てくるから、
僕はあれを聴いたとき、びっくりしたんですよ。
だから、ちゃんと「TOKKYU ROCK」に
なっているんですよね。
慶一 私はその特急に乗り合わせているから。
‥‥やっているところを見ているからね。
細野 そうか。リアルなのね。
ああ‥‥じゃ、やっておいて良かったなぁ。
慶一 大体、カバンを台にしてやっていたんじゃないかな。
佐藤 ギャンブルをしているんですね。
細野 いや、お金はかかっていないと思うんだよね。
佐藤 お金、かかっていないのか!(笑)
細野 すごく子供っぽいから。酒も飲めないし(笑)。
竹松 「僕は特急の機関士で」って、
ある意味で初の鉄道のコマーシャルソングでも
あったということで、最初に東海道だけ作ったら、
他のところからも「作ってくれ」
というリクエストがあって、
147番までくっついてきた、と。
細野 なるほど、ご当地ソングだ。‥‥147番まであるの!
竹松 そうなんです。こちらの統計では147番まで(笑)。
── すごいことですね。
鶏郎先生は取材して書いていたんですか。
竹松 あちこちに旅はしているので、
行ったことのない所はないと思いますけど。



細野 先生はアメリカには行かれたんですか。
竹松 はい。マックを買ったのもサンフランシスコですし。
旅行で行って、たまたま入った楽器屋さんで、
スターウォーズの楽譜が
そこのコンピューターのプリンターから
流れてくるのを見て、
「これは何だ!」ということで‥‥。
細野 当時、先生が買っていたレコードの
コレクションはまだ残っているんですか。
竹松 はい。このへんと、
後ろのほうにもずらーっと‥‥
細野 何を聴いていたかとか、すごく興味があるんです。
── 見に行きましょうか。
竹松 このへんは、ハワイアンとかロックとか。
映画は、こういう‥‥



細野 あぁーっ! なんだ、これは!!
ベータマックスだ。
‥‥これは、どうするんだ、この後!
竹松 あのー‥‥ここで驚いては、いけません(笑)。
奥に‥‥
細野 あるのね。わかるよ(笑)。
僕もそうだもの。同じようなものだ。
竹松 この下がLPなんですけど。
細野 ちゃんとファイルしてくれているのは、
いいよねぇ!
── マーティン・デニーもありますよ。
細野 あった、あった。
── そこは、ハワイアン。
竹松 ハワイアンは好きでしたね。
慶一 友達んちに遊びに行くと、
まず、レコードを見るよね。
細野 見る、見る!
── いやだなぁ‥‥(笑)。
細野 でも、それで会話が
できるようになるんだからね。
慶一 そう、そう(笑)。
竹松 このへんは、ムードとかロック。
細野 なるほど。‥‥SP版は?
竹松 SPはですね‥‥こちらに‥‥
細野 さすがにSP版は横にしなきゃいけないね。
竹松 ここがクラシックですね。
‥‥これが、
ウォルトディズニーの仕事をしたときに
向こうから来た版です。
細野 そう! 貴重な資料だ。
‥‥クラシックが多いんだ。
クラシックを勉強していたんだものね。
‥‥25センチ版じゃないとね‥‥
竹松 このリストづくりは、鶏郎先生の仕事ですね。
細野 なるほど‥‥あっ! 持ってる!
同じのを持ってる。
一同 エーッ!
細野 ‥‥このへんが一番、知りたかった。
竹松 これが、趣味のリストです。
── リストがあるんですか!
竹松 これは私が作りました(笑)。
細野 これは大変な‥‥!
自分じゃ出来ないよな、こんなこと。すごいなぁー。
竹松 SPに関しては全部は仕切れていないんですが‥‥。
日本版はまだリストにはしていないですね。
このへんは、ほんとに好きなものばかりを
買ったという感じですね。
細野 ほぉー。スマックのSPなんて、あるんだ。
すごいなぁー。SPは大事だからね、今は。
竹松 その当時、いろんな国の音楽を集めることに
かなり意欲的だったんですね。
慶一 どうやって買えたんだろうね。
竹松 ふつうにお店で買われていたようです。
いろんなものを聴いている、
というのがすごくわかると思います。
── 細野さんは、先生がどんなSPを
持っていたかに興味があるのは、どういう心で?
細野 音楽をやる人は、聴く人だから‥‥
最初は。何を聴いて何を受け取って、
それをどうやって自分で消化していくか、
ということなので。
好きで聴いていたのが何かというのがわかれば、
なにか共通点があるんじゃないか‥‥と。



いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『僕は特急の機関士で
 (東海道線の巻)』

作詞・作曲:三木鶏郎
歌:三木鶏郎・丹下キヨ子・森繁久弥
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
(つづきます!)

2006-10-04-WED
デザイン協力:下山ワタル
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