大瀧詠一さんと、トリロー先生の話を。-三木鶏郎を知ってるかい? PART2-

第5回 アーッ‥‥会いたい! ききたい!



細野 鶏郎先生の所蔵リストにある、
クライド・マッコイという人の
「シュガー・ブルース」という曲は、
とっても面白いんですよ。
テレビが始まった頃、
三木のり平が三洋のコマーシャルに出ていて、
それに付いていた音楽が
クライド・マッコイだったのを、後で知ったの。
慶一 へぇー。
細野 “ホンワカ、ホンワカ〜”という‥‥。
ミュートを使って。
慶一 あっ! ホンワカ、ホンワカ、ホンワカ、ホン〜
‥‥というやつ。あれがそうか!
細野 そう、そう。あの音の張本人が、クライド・マッコイ。
慶一 あれが、そうか。‥‥今、わかった!(笑)
いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『Sugar Blues』

Clyde McCoy and his Orchestra
三木鶏郎資料室所蔵SP版より
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
── 三木のり平さんということは、
鶏郎さんと、関係がありますね。
細野 そうだよね。三木のり平の三木が
三木鶏郎の三木だというのは、
最近まで知らなかったから、僕。
竹松 田沼則子(ただし)さんという名前だったのを、
三木のり平さんと命名したのが鶏郎先生ですね。
細野 小さい頃、三木のり平というのは
アイドルだったからね。ほんとに面白かったから。
── ホンワカ、ホンワカは、
のり平さんの出たCMソングだったんですね。
細野 そう。洗濯機の宣伝で、
だんだん脱いでいったりするの。
一人でストリップみたいに。‥‥面白くて。
だいたい、その頃の音楽は
アメリカのそういう音楽だったからね。
── 当時のCMには、
鶏郎先生のようなオリジナルのほかに、
洋楽を使っていたものも多かったんですね。
竹松 そのままではなくて、それをアレンジして‥‥?
細野 いや、そのまま使ってたの。
ヤシマのボンボンのバックは、
レス・ポールだったよね。
慶一 レス・ポールだった?
細野 うん。もう‥‥うなされるような音楽だったからね。
慶一 黒猫が出てくるやつ?
‥‥怖かったよね、あれ。
細野 そう、そう。‥‥「キャラバン」だよ。
慶一 あっ、「キャラバン」っていう曲なんだ!
目から鱗80枚!
記憶にはあるんだけど、
曲とCMのつながりがわからなくって、
もう、これは死ぬまで
わからないんだろうな、と思ってた!
アーッ!
細野 アッハハハ‥‥そういうこと、あるよ。結構、ね。
慶一 ヤシマのボンボンか、あれ!!
細野 そうだよ。よく見ていたね。
よかったぁー、知っている人がいて(笑)。
── あの、お二人は、
なにをお話しされているんでしょう(笑)
竹松 全然、わからない‥‥(笑)!
細野 ボンボンキャンディー。
噛むと、中に液体が入っていて‥‥。
── そのお菓子のCMなんですね!
細野 そう、そう。昭和30年代かね。
慶一 うん。テレビが始まってすぐくらい。
そのCMに黒猫が出てきてね、
暴れ回るんだよね。これが怖くて。
細野 そう。悪夢のような‥‥(笑)。
その音楽が、レス・ポールとメリー・フォードの
「キャラバン」という曲。
なんか不思議な音楽じゃない。アラビアの(笑)。
慶一 いやぁー‥‥今、謎が解けたなぁ!
細野 そういうことはいっぱいあるんだよ。

慶一 細野さんに、もう一個、ふってみようかな。
‥‥口笛の曲で、1曲、わからないのがあるんだよね。
細野 メロディーだけでも覚えている?
慶一 ♪〜(口笛を吹く)♪
細野 あ、知ってるよ。「パペーテの夜明け」。
慶一 !!!
‥‥今日、2個も人生の謎が判明した!(笑)
細野 それは、シネラマの映画音楽。
持ってるよ。パペーテ。タヒチ。
‥‥なんでもきいてね(笑)。
一同 アッハハハ!
── いい先輩だ(笑)。
細野 でも僕がききたいことは誰も答えてくれないんだよ。
だから、鶏郎先生の所に
あるかなと思って、今、探したんだけど。
── 大瀧詠一さんでもだめですか。
細野 だめです。ジャンルが違うもの(笑)。
慶一 細野さんより年上じゃないと、わからない?
細野 多分ね。
‥‥僕がラジオで毎日聞いていたのは、
アコーディオンと口笛で、
「パリ」という曲なんだけどね。
フランシス・レマルクという人のシャンソンの曲。
それの、本人がやっているアコーディオンと
口笛のバージョンがもう、どこに行っても無いの。
いろんな人にきいても‥‥
フランス人にきいても、無かった。
竹松 きっと、鶏郎先生がいたらわかる。
鶏郎先生がいたら、話をすると、
「ああ、それ、それ‥‥」と(笑)。
細野 でしょ! 絶対、知っているはずだから。
ラジオで毎日かかっていたやつだから。
竹松 シャンソンはすごく好きですし。
ほんとにわかると思いますよ。
細野 アーッ‥‥会いたい! ききたい!
一同 アッハハハハ!
竹松 じゃ、今度、リストを作っておきますね。
まだ、軽音楽とかシャンソンとか
ハワイアンとかのSPがリストにできていないので。
もしかするとご所望のが‥‥。
細野 絶対、ある‥‥なんか、今、感じたもの。
鶏郎先生が「あるよ」って言ってる(笑)。
竹松 フフフ‥‥じゃ、で出てきたらリストをお送りします。
── 先生はシャンソンも‥‥なんでも聴いたんですね。
竹松 そうですね。‥‥パリはとくに好きで。
小学・中学が暁星でフランス語を習得したので、
フランス語が得意でした。
大学でも法学部の研究がフランス法。
‥‥なので、シャンソンも造詣が深いというか。
いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『パリのバラード』

Francis Lemarque
三木鶏郎資料室所蔵SP版より
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
竹松 それから、ジャズもとても好きでしたね。
80年代後半になると、
CDで復刻版などが出てきますよね。
そうすると、ほんとうに積極的に集めて。
だけど、「これが入ってないな」とか(笑)‥‥。
細野 同じだ。(自分と)同じこと、やってるよ(笑)。
竹松 ‥‥集大成みたいなので買っても、
「ここにあったSPのあれが、入っていない」。
細野 そう、そう。入っていないんだよ。
そういうことが多いの。
竹松 ‥‥そういう、マニアにしか
わからないことを(笑)。
細野 そういう意味では同類と言ってもいいのかな。
‥‥お兄さん、というか。
おんなじだよね。なんでも聴いちゃうからさ。
── 細野さんや慶一さんが雑誌で
「こういうレコードが面白いよ」
と言っているのを読んで、
レコード屋に行った人たちも多いですよ?
慶一 うん‥‥こっちの投資する額のほうが多いね。
はずれもあるしね(笑)。
細野 こっちは、上がいなかったんだよな。残念ながらな。
── とっても有り難い存在です。
佐藤 昭和40年代ぐらいに、
鶏郎先生がそういうことを発信する側にいたら、
よいアドバイザーなりナビゲーターになってますよね。
だって、山口百恵や松田聖子まで
全部、テレビをチェックしていて、
まとめているわけじゃないですか。
── そうなんですか!
佐藤 ええ。次から次へと全部あるんですよ。
映画も。ありとあらゆるジャンルが。
新しいアイドルとか、
「なに、こんなの」と言われているものも、
ご自身がいいと思うものは
全部チェックしてまとめているから。
そういう意味でノンジャンルで、
ポップカルチャーに関して言うと、
大先輩としてナビゲートできるはずだったのに、
日本に愛想を尽かしたのかどうなのか(笑)、
半分、居なかったわけでしょ、結局。
竹松 当時、もし、今のネット社会があって
ブログとかがあったら、
多分、すぐにやっていたと思うので、
発信できていたかもしれないですよね。
私がここに来て、見るもの、聞くもの、
まったく知らないわけなんです。
そうすると、その人について
とっても詳しく話してくださるんですね。
その話が、私一人で聞いていては
勿体無いようなお話だったので。
‥‥映画を一緒に最初から最後まで見て、
そのあと、「この他に、『アフリカ』というのは
こういうのなんだよ」とか‥‥そういう話を聞いて。
ほんとに映画館の講演会に行ったような話なんですね。
だから、そういうことを、
私一人ではなくて皆さんに聞かせたい。
細野 ああ、聞きたい! その話、聞きたい!
慶一 ウランちゃんだったらなぁ(笑)。
── フフフ‥‥全部、記録して。
竹松 そういうことが発信できていたら、
皆さんにご提供できたんですよね。きっと。
これは何年何月だった、などの記憶が
きちっとしているので、
歴史の番組を聞いているような‥‥(笑)。
それと、「この音楽を知らないんだったら、
あそこにレコードがあるからもって来て」
と言って聴かせてくれて、
ほんとうに素晴らしいお話でしたね。
慶一 それに批評みたいなことはくっついてくるの?
竹松 批評というか‥‥
慶一 分析のようなもの?
竹松 ええ、分析というときもありましたけど、
良いものに関しては熱く語ってくれて。
「これは、こういうところが面白いんだよ」とか、
「これは、ここを見るのが一番いいんだよ」とか、
そういうところですね。映画に関しては。
細野 門を叩くべきだったな。今となっては遅いけど。
竹松 その当時、世の中で流行っているものも‥‥
レコード屋さんに行くと、必ず新譜コーナーを見て、
「あ、こういうものか」と
買って聴いてみるということは、していましたね。
慶一 そうかぁ‥‥86年から90年くらいまでは
暇だったのにな。失敗したなぁ!
竹松 そうですねぇ、残念!
細野 そういう時代だったんだよね、それまでは。
今はずいぶん変わったんだと思うよ。ネットで。
いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『一人のスリの歌』

作詞・作曲:三木鶏郎
歌:高英男
「三木鶏郎集大成CD トリロー・コレクション
 音楽作品集 Vol.1」より
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
 

(つづきます!)

2006-10-11-WED
デザイン協力:下山ワタル
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