|
大切なタオルですから、勉強もしましょう。
<やさしいタオル>は
コットンの体質改善も、しました。 |
|
*ほぼにちわ。モギモギコです。
今回は<やさしいタオル>に使う「糸」のお話、
さらに詳しく、ご説明いたしますよ〜!
おっと、その前に、
<やさしいタオル>の制作状況をお伝えします。
先日、ドクター・コットンが
「最終サンプル」を持って
明るいビルに現れました。
これはもう「製品そのもの」と
言っていい段階のものです。
これで、いよいよ販売ページの商品撮影や、
まわりの人たちにお願いしての
モニターテストの段階にうつることができます。
テスターは、下はアッキィ家ご令嬢・
ちよ子ちゃん(生後5ヶ月)から、
上はdarling(54歳)まで。
早くからこのタオルを使っていたdarlingも、
ジムで使っていただいている鈴木慶一さんにも、
これが、もう・・・はっきり言って、大好評です!
いずれ、そんなモニターのみなさんの感想も
お届けしますから、
楽しみにしていてくださいね!
さて、前回は、<やさしいタオル>の素材となる
コットンの素材選びのお話でした。
ドクター・コットンの提案で
「リッチなふかふか感」を実現するために
「超長繊維綿」である
ピマ・コットン
を使いましょう、ということになりました。
<やさしいタオル>いままで決まったこと。
種類 |
片面ガーゼ
片面パイル(タオル地) |
パイル面で使う糸 |
【コットンの種類】
超長繊維綿のピマ・コットン
(コーマ糸) |
これで、リッチでふかふかな
「ガーゼ&パイル」が実現するのね〜!と
すっかり嬉しくなった私たちを
さらに躍らせたのが、ドクター・コットンの
さらなるこんな一言でした。
「ピマ・コットンに、ある加工をします。
そのことによって、ピマ・コットンは
どんな綿にも負けないくらいの
リッチなふわふわ感を獲得できます。
それはLA加工、っていうんです。
いわば体質改善ですね」
え、えるえーかこう?
コットンの体質改善?
すでに生まれも育ちもよいはずの
「ピマ・コットン」を
さらにリッチにふわふわにするんですか?
どうやって体質を変えるんですか?
さっぱりわかりません、
ドクター・コットン!!
「ま、そんなに、あせらないで。
いわば、キレイなハリウッド女優が
エステで肌をみがき、
ジムで体をひきしめて
ヨガでストレッチするみたいなもんですよ」
‥‥い、糸が‥‥?
よけいにわからないんですけど。
「そうですよね、いきなりそんなこと言われても
困っちゃいますよね。
じゃあ、今日は、ちょっと専門的になりますが
<リッチなふわふわ感>を実現するための
糸の加工のことを、詳しく説明します。
それが理解いただけたら、
私の提案も、すんなり受け入れてくださると
思うんですよ」
わかりました、ドクター・コットン。
メモします。どうぞお話しください!
**********************
「今回<やさしいタオル>で
ふわふわのパイルにするために、
僕は、糸をつくるときに、
3つの工夫をしようと思ってるんです。
●糸の撚り(より)を緩く紡ぐこと。
●2本あわせた双糸にして、
糸ねじれを少なくすること。
●糸に特殊なLA加工をして
ハリとツヤを出すこと。
この3つです」
ええと、「撚る」っていうのは、
綿花の、あのぽわんとしたかたまりの状態から
糸のかたちに紡ぐときに、
こう、伸ばしながら捻っていく作業ですよね?
それを「緩く」するって、どういうことでしょう?
「まず『超長繊維綿』ですから、
撚る前のこまかな一本一本は、
<長くて均一>なわけです。
それを<糸>にするために、紡ぎます。
キュルキュルッ、と、
繊維の塊をひきのばしながら
ひねりを加えつつ、
1本の、細い糸を紡いでいくわけです。
そのひねる作業が<撚る>ということです。
<緩く>っていうのは
その<撚り>を、弱い力で行うってことです。」
ええと、「こより」をつくるときに
半紙を撚りますよね。
強い力で撚ると、堅いこよりができて、
弱い力で撚ると、やわらかいこよりができます。
それと同じことですか?
「そうそう! そういうことです。
それがまず最初にできる<糸>です。
撚りを、ゆるくすれば、するほど、
ふわふわの糸ができてくるんです。
モギさん、ざっくりしたサマーセーター、
お持ちですか?」
はい、持ってます!
ピンクの、Vネックで、
袖のところがちょっと広がってて
ウエストがてろーんとしてて、かわいいんですよ〜。
「デザインのことは、置いときましょうね。
そのセーターって、織りもゆるいけれど
糸じたいが、ゆるく撚られているはずです。
<ねじれ>が少ない感じがするでしょう?」
そうですそうです。そんな感じです。
糸じたいが、ふわふわしてました。
「<やさしいタオル>のパイルを織る綿糸も、
そんなイメージで撚って、紡いでいくんですよ。
ふわふわっとした風合いにするために。
でも、ふつうのコットンだと、
そんなに緩くは撚れません。
でも、今回使うピマ・コットンは、
繊維の長い綿なので、
途中で切れたり、けばだったりすることが少なく
緩くゆったりと撚ることができるんです」
なるほど〜。ゆったり撚って紡いだ糸。
それだけでぜいたくなイメージですよ〜。
「でもね、まだ問題があるんです。
糸って<ねじれている>ものでしょう?
そのねじれは、パイルが
ぺっちゃんこに寝てしまう原因になるんです。
だから、ねじれたものである糸を、
2本合わせて、まっすぐに立つ糸に
しなくちゃいけません。
これが<双糸にする>っことです」
やっぱり1本より、2本のほうが強そうですもんね。
神社の「しめなわ」みたいなものですねっ!
「しめなわ‥‥まあ、そうかな、あ、でも、
ちょっとイメージ違いますね。
あんなに頑強には合わせないですからね」
そうですよね、あんなに頑丈じゃないですよね。
でも、ドクター・コットン、
なぜ双糸なら、ねじれがなくなるんでしょう。
「1本づつの糸は、
同じ方向に撚られています。
時計の逆方向なんですけれど。
これを、あわせて、1本の糸にするときは、
その反対、時計回りにひねっていきます。
そうすれば、できあがりの糸のねじれの
力のバランスがとれて、
ピンとしたまっすぐな糸ができ上がるんですよ。
これでパイルをつくれば、
糸自体のまっすぐ立つ力によって、
パイルがぺちゃんこにならずに、
ふわふわに、まっすぐ立ち上がるんです」
な、なるほど!
もとはねじれた糸だって
ふたり力を合わせれば
まっすぐ生きていけるんですねっ。
‥‥そういう心持ちですねっ!
「ま、‥‥そ、そうですね。
ご理解いただけて嬉しいです。
ともかく、緩く撚った糸を2本あわせて
<まっすぐで、ふわふわ>な糸ができる。
そこまでは、いいですね?」
はいっ。理解しました。
けど、まだ「LA加工」が出てきませんよ〜。
「そう、これだけでは十分ではないんです!
もっと、ふんわりさせるために、
糸に細胞レベルで加工をするんです」
細胞レベル!
「そう、細胞レベルです」
そう言いながらドクター・コットンは
不敵に笑いました。
「じつは、緩く撚った綿糸は、
<ふんわりする>という特長がありますし、
双糸にすれば<まっすぐ>になります。
でも、まだ、<やさしいタオル>の目指す
<リッチなふわふわ感>を実現させるには
<コシ>が弱いんです。
片面がガーゼですからね、
こちらは<ふわふわ>になりようがありません。
だからその分、
パイル面にがんばってもらわないといけません。
そこで登場するのが、糸のLA加工です。
これは、双糸にした綿の糸を、
液体アンモニアに浸すことによって、
繊維の細胞自体を
ふっくらと膨らませるというものです。
もちろん、液体アンモニアは加工後、
完全に洗浄してしまいますからご心配なく! 」
おお、やっと出ましたね! LA加工!
でも、あのう、ドクター・コットン。
これって、化学的に、
糸を変化させちゃうってことなんですか?
なんだか、そういうのって、
<やさしいタオル>らしくなくないですか?
「ああ、なるほど、何か無理やりなことをすると
受け取られたんですね。
そうじゃ、ないんですよ。
そうだな、いわば<元に戻す>作業です。
水の枯れてしまった湖に、
水を戻してやるのと同じです。
綿は、植物として生きているときは、
しっとりと湿った状態ですよね。
繊維の断面を見ると、丸くなっているのがわかる。
ところが、収穫され、乾燥してくると、
どんどんと繊維がぺっちゃんこになって
しわができ、ゆがんでしまうんです。
でも、LA加工をすることによって、
細胞のひとつひとつが、
乾いた状態でも、繊維がぷっくりと
ふくらむんです。
昔を思い出させる、というかな。
そして、ハリとコシ、光沢がでてきます。
この写真を見てください」
ドクター・コットンは私たちの前に
4枚の写真を見せてくださいました。
LA加工前
(綿繊維の一本一本の断面) |
LA加工後
(綿繊維の一本一本の断面) |
LA加工前(側面) |
LA加工後(側面) |
加工後に糸がふっくらしてるのがわかります。 |
うわぁ! これはすごいです。
1本1本が、ぷっくりしてて、
かさかさでもないし!
みずみずしいのがわかりますよ〜!
「さらにいうと、LA加工をすると、
パイルが乱れて、寝てしまうことも、
防ぐことができるんです。
双糸にすることで、パイルが寝てしまう問題は、
だいぶ解決しているんですが、
さらに、ミクロのレベルでの防御策なんですよ。
何度洗濯しても、新品同様のやわらかさを
保つことができるようになります」
ええええっ!
タオルって、洗えば洗うほど、
だんだんと「がさがさ」になってきますよね。
あんなふうに、ならない、ってことですか?
「なりません。
LA加工をしていない綿の繊維も、
洗濯をして水分を吸うと
元の丸くなった状態にもどりますが、
乾けば、またぺっちゃんこの状態になります。
洗濯のたびに、これを繰り返すんです。
収縮のたびに、繊維が大きく動いてしまって、
せっかく作ったパイルが
乱れていってしまうんです 。
でも、LA加工をほどこした糸ならば
もとからぷっくりしてますから、収縮がない。
洗濯・乾燥時の動きを抑えることができます。
いつまでも、パイルの乱れのない
新品のような状態が
維持できるというわけなんです」
そう言ってドクター・コットンは
さらに2枚の写真を見せてくださいました。
LA加工をしていない糸でつくる
パイル地 |
LA加工した糸でつくる
パイル地 |
「この2枚、LA加工をしてある・ないの
違い以外は、同じ条件で織ったパイルです。
LA加工をしていないほうはパイルは
ねじれてたおれてしまっていますよね。
反対にLA加工をしているほうは、
目がそろっていて、
パイルがきちんとループになって、
すくっと立っています。
このようにパイルがきちんとそろって
立っていることが、
<ふわふわ感>を生む弾力のモトになるんです」
おおおお。そういうことだったんですね。
細胞をふっくらと、もとにもどす加工が
LA加工、だったのですね!
わたしは、ほら、柔軟剤仕上げのように、
繊維を薬剤でコーティングしているのかなって
思ってました。
もっと根本的なものだったんだ。
「繊維細胞そのものを変質させる加工なので、
加工で得た特徴は失われないんです。
薬剤での加工は、洗濯をするうちに
洗い流されてしまいますから
だんだん効果がうすれていくのですけれど。
抗菌加工や柔軟剤仕上げなどが
お化粧やプチ整形とするならば、
LA加工は<体質改善>なんです」
わかりましたドクター・コットン。
不肖わたくしモギ、
すみからすみまで理解いたしました!
これは、すごいわ〜。
やっぱLA加工ですよ。
ぜひ、その加工をした糸で
パイルを織ることにしましょうよ!
「ありがとうございます。
さっそく手配をしますよ。
それにしても、モギさん、
LA加工の糸でつくったタオルなんて、
ほんとうに、世の中に、少ないんですよ。
いままでは、高級なコットンセーターに
使われてきたくらいで、その綿を
タオルにするなんて贅沢中の贅沢ですからね。
ぼくは以前、この加工のタオルを
200枚だけ作って、販売したことがあるのですが
それは両面パイルのもので
<ガーゼ&パイル>ではありませんでした。
だから、ほぼ日の<やさしいタオル>は
世界初の商品になりますよ。
ああ、僕はこの仕事にかかわれて、
ほんとうに嬉しいです。
ありがとう、モギさん」
い、いえ、わたくしにお礼を言われても!
私たちこそ、ドクター・コットンの知識と技術と
コネクションがなかったら、
ここまで来れませんでした!
これで、もう、<やさしいタオル>は
できたも同然ですね!
今度こそ歌っていいですか、勝利の歌を!
「まだです。
まだ<織り>のことを決めていませんよ。
いまはまだ、いい糸ができました、
っていう段階です。
これから、その糸を使って、
上質なパイルを織って、
ガーゼと合わせて
<ガーゼ&パイル>を作っていきます。
それには<織り>がたいせつです」
**********************
わっかりました、ドクター・コットン。
彼の講義は、まだまだ続くのですが、
でもそのお話も、これまたたっぷりありますので
ご紹介は次回ということにいたしましょう。
織りと厚さと工夫、糸の太さ、パイルの長さ、
そしてガーゼのよい風合いを出すための糸、
などの情報を、6月24日に更新いたします。
|
(そのあと、デザインやサイズを発表します。
そして、お待ちどうさまでした、
発売は7月9日(水)の予定です!)
|
|
|
|
ここまでのおさらい
【コットン】
●「超長繊維綿」であるピマ・コットン(コーマ糸)
【糸のつくりかた】
●ふわふわの緩い撚り。
●よじれのすくない『双糸』。
●ハリとコシをだし、パイルが寝てしまうのを防ぐLA加工。
ここまでの質の糸は、
通常タオルにつかうなんて「ありえない」
クオリティーのものなんです。
価格からいっても、
通常の量産されるタオルで
使われるような糸にくらべて、
4〜5倍するものだということです。
でも、販売するときには、
とんでもない高い価格には
ならないようにしようと思っています。
とても安い! という価格にも、
ならないのですけれど。
|