藤岡 |
埋蔵金をめぐる歴史背景も、
調べていけば調べるほどおもしろいんです。
ほんとにいろんな人が関わっていたようだし、
詐欺師みたいな人もいっぱい出てくるし。 |
恩田 |
埋めた側の隊長とされる小栗上野介なんて
歴史の教科書で習うような人じゃないけど、
この勘定奉行、調べるとものすごい人なんですよ。 |
藤岡 |
ちょうど場所もよかったんですよね。
掘るとどんどん穴が出てきたり、
歴史でもおもしろいことが見つかる、
ぜんぶがいい方向に組みあっていて。 |
----現場ではどのくらいの数の機械を使うんですか? |
恩田 |
ユンボは十台くらい入ったかな。
重機を入れすぎると場所がなくなるのでこのくらいの数。
現場では、掘った土をどこに運ぶかも大きかったですね。
掘っている敷地内では土を置くところがないので、
別の土地を借りてそこに持っていったりしてました。 |
堀 |
それで一日の作業としては、基本的には大工のリズムで。
七時入りで十二時にごはん、それと十時と二時におやつ休憩、
というやつでした。それで日が暮れるまでやる。
出てきそうな時はずいぶん遅くまでやってましたね。 |
恩田 |
変な話、運動部の合宿みたいなもんだったんですよ。 |
藤岡 |
そう。合宿。ぼくも何ヶ月かやってるうちで
何日か泊まりにいくんですけど、
そういう時は寂しいとこ泊まっても平気だし、
夏はそれこそ運動部の合宿みたいで。
仕事してて、あんまりこういうのってないじゃん?
他では割と、「作ってさよなら」みたいなもんだから。
ディレクターの場合は一つ番組終わったら
充実感があるだろうけど、放送作家っていうのは、
あちこちつまみ食いしてるみたいな商売だからね。
でもこの番組には「俺これやってるんだ」という充実感、
当事者になってるっていう充実感がある。
そういうとこが一番楽しいかな。 |
堀 |
オールロケで六年っていう番組って、
なかなかないですからね。
穴を掘るのがよかったっていうのは、
たぶん誰でもできる作業だからじゃないでしょうか。
体が動けば誰でもできるものでしたから。
ただ、最後のほうはスタッフみんなが上級者になっていて、
地層の変化を見ながら掘れるようになってましたけど。 |
----この番組で放送作家はお一人ですか? |
藤岡 |
うん、一人。統一感を出すために、
と、あとは特にこの番組は同じようなシーンが
何度も出てくるからね。
とにかく掘ってたりするから、
一人じゃないとやれないです。
何人かで書いてたりすると重なったりしちゃう。
書くのはナレーションとか、
あとは糸井さんたちが前ふりをするベースのを作ったり。
あ、そうだ、糸井さんさあ、
ぼくが書いた台本読むの下手なんです(笑)。
下手なのよ、ほんとにあの人。
自分の言葉で喋るとあんなに生き生きする人が、
人の書いた台本だとだめだねありゃ。だから今回は
自分で喋っていただきたいと(笑)、
これは伝えておいてね。 |
堀 |
藤岡さんの書いたナレーションの
名言集ってあるんですよね。
「見上げれば絶壁!」っていうのは、
すごかったなあ。頭に残ってます。 |
藤岡 |
放送作家って、ものが残んないから、
テレビと一緒に消えてくもんだし
何回も流れるもんじゃないから、何か忘れちゃうね。
俺なんかもう書いた瞬間に忘れちゃう。
「見上げれば絶壁」なんて
言葉だけで聞くと何てことないんですけど、
状況と映像とか何かそういうのとマッチした時に
そういう何でもない言葉が効いたりしてくる。 |
堀 |
毎回オープニングとエンディングのナレーションは楽しみ。
藤岡さんが勝手に敗北を宣言したりね(笑)、
「敗北を宣言する!」
いいのか宣言しちゃって、みたいに。 |
恩田 |
ドキュメンタリーっておもしろいですよね。
ぜんぶ現場で作るから、
みんなで一生懸命やらなきゃいけないんです。
台本がないっていうそこに僕はおもしろさを感じますね。
作っていく過程も割と手探りみたいなところがあるんで、
今回もそうですけど、放送の直前にならないと
番組がどうなるかはわからないんですよ。
現場でのちょっとした調査によって
180度方針が変わってくることもあるし。
今回もいくつか候補地はあるけど、
大晦日の当日にどこを掘るかはまだ決めてないです。
直前になっておもしろい資料とかが
見つかるかもしれないんで。
そういう意味で、何とも言えないところがありますね。
例えば今、フランスでも
古文書を調べてもらっていたりしますしね。 |