第20回 望月会長の巻
こんにちは。12月20日です。どうするよもう?
あと10日もすりゃあ、恩讐の埋蔵金発掘ですね。
東京鼠穴「ほぼ日」編集部では、大そうじをするとか
そういう話が出てくる時期になりました。
今回は現地の建設会社代表、
通称「望月会長の登場です。
望月会長はこの埋蔵金シリーズを昔から
全面的に支えてくれていて、
今回もプロジェクト総本部での
土木作業を指揮してくれています。
ぼくは現地で望月さんとdarlingの会話を
ぼやーっと聞いてたけど、こんな感じ。
望月 いやあでもやっぱり嬉しいなあこうやって
久しぶりに会うのはよう。うちの娘なんか
『おとうさん明日糸井さん来る?うち寄るの?』
って何度も聞くんだもんなあ。
『なあに、たぶんそりゃ寄るだろうよ』
なんて言ってさあー。
糸井 俺も昨日の夜、3回くらい起きちゃったよ。
最近奥さんが編みものやってるからさ、
起きちゃあ編みもの覗いて、また寝てた。
今、俺が外人なら望月さんとハグするところだね。
それにしても耳が寒いな! この番組やってると
床屋行けねえな、背中寒いから。
望月 刈り上げちゃったら寒いよう?
糸井 今回、金の瓦みたいなの1枚でも見つかるといいな。
望月 したら今度またやめらんなくなるんだ。
糸井 『1枚だけってことはない。2枚はあるだろう』
なんて100年やったりして。あ、そうそう、
もう木村くんは望月さんのこと書きはじめてるよ。
望月 何を書いてるんだあ!
おめえはほんとに。ははは(ここで俺怒られた)。
望月さんに関してはどう紹介したらいいのか、
わからないんですよね。そこでこうして
取りあげるのが遅くなってしまっていたのですが。
だからまあ、ほんとにだらだらとでもいいから、
ぼくが望月さんを実際に見て感じたことを
もそもそ喋りはじめるのがいいのかな、と、
今いちおう考えているわけです。
どうやって紹介したらいいのかわからない、というのは、
埋蔵金番組ファンの方にはおわかりかもしれないのですが、
すっごくいろいろな意味で魅力的な人だからなのです。
しかもそのよさは「技術や考え方が素晴らしい」
というようなのとは異なる種類のものだろうと思います。
鋭くない、というんじゃなくて、
この人の場合はもっと違う何かがあるみたいだけど、
それを、どうもうまく整理して言えない。
強いて言うと、「ふれあい」とか「血液」とか
なんだかそんな、寒い言葉になっちゃいそうです。
赤城なまりの語りのよさも
「魅力」をかたちづくる大きい要素だとは思うのですが、
だからといってそのすごさは、
「田舎臭さ」とかから来るのではないなー、明らかに。
利発なのですが、賢者とか仙人のイメージじゃあない。
強いていえば、何でも話せるとかそういうことかも。
例えば、望月さんは人にすぐ
あだ名をつけるんだけど、それは何だか、
家族に加えてくれてるみたいな感じがある。
制作プロダクションスタッフのなかで、
ずっと赤城の土木現場についているディレクターや
ADの方を、「次男」「三男」と呼んで、
望月さんの「兄弟」にしちゃうんだ。
望月さんはその中で自分を、「長男」って思ってるの。
親じゃなくて兄弟として接するのが、
望月さんらしいと思う。対等なの、誰とでも。
「三男」と呼ばれるADの方は
今年会社に入ったばかりで
ほんとうによく働くまじめな人なのですが、
望月さんはそういう方を一番好きなんです。
「よお、三男、おめえも食べろよ、
これからのやつは食べなきゃ。
おめえはがんばってるからよう」
見えないところでもずーっと働いていたのを、
望月さんはよく見てる。
大工として現場でいちから頑張って
今までやって来た人なのだろう。
ほかの人にもいろいろあだ名をつけてて、
中には身体的欠陥と思われるようなことを
ずばりあだ名にしちゃうんだけど、
それは絶対に傷つかない方向での言い方でなのだ
(そのあだ名は望月さんが言うぶんには
何も問題がないけれども、まあ、
字面にしてしまうと棘があるかもしんないんで、
あえてここに具体的には書かないですけど)。
何というかな、望月さんはそんなあだ名を通して、
自分の偏見も含めた親近感をきちんと与えてくれてる。
だから、話してても距離がぐっと近くなる。
心の底で思っているけど含ませておく、
というようなところはまったくないから、
身体的欠陥のあだ名でも、むしろあたたかく響きます。
親御さんを亡くされた方について話していたら、
「あいつはよう、かわいそうな奴なんだ。だから……」
望月さんはこうやってぽつぽつ喋りはじめて、
そのあと具体的に「こうなるといいな」と、
その人の幸せを祈っていました。
ぼくは望月さんが「かわいそうな奴なんだ」と言った、
その言い方にあたたかみを感じました。
ぼくなんかだとそこで、
「『かわいそう』って言ってはいけないんだ」
みたいに抑えてしまいがちなのです。
だけどそれはちょっと浅いもので。
望月さんの「かわいそうなやつなんだ」は、
あだ名と同じで、決して差別したり
見下しているわけでもない。その人と
同じ立場でものを言ってるようなのが
感じとれるのです。だから、すごくあたたかい。
例えばぼくのように「かわいそうなやつなんだ」
と言わないことによって、逆にその人から
一歩退いてしまうというのではなく、
望月さんは、思っている通りに言ってしまうことで、
その人の影も引き受けちゃう、みたいな、
うまく言えないっすね、そのあたりはね。
だけどとにかく、いい感じの含みがあるのだ。
あたたかさがあるんすよ、そこには。
えーとちなみに、あだ名に関してですが、ぼくは
望月さんから「インターネット」と呼ばれてたよ。
「よー、インターネット! 現場はいいだろお?」
と聞かれたのが嬉しくてさ、ぼくは、
「はい!もちろん!」ってこたえてました。
「おめえもインターネットばっかやってねえで外出ろよ」
みたいに言われて(ううむ)、これもあったかかった。
ひとことひとことが渋いっちゅうか味があるんだよね。
望月さんはインターネットをやっていないけれども、
こういうことを言っていました。
「インターネットとか、わからねえな。
そういうのに乗り遅れる年頃なんだよ。
だけど俺はまあ、例えばそういう
『インターネット』という名前の電車に
乗り遅れてもよう、ベンツで260キロくらい飛ばして
追いつくっていうタイプだからな。
負けねえぞお。はははは」
ただきちんと一日一日仕事を頑張ってるみたいです。
だからみんなに慕われてるのだろうと思う。
格好いい人だ。本部以外の現場で、
望月さんの会社が掘らないところに行っても、
なぜか現場の人は望月さんのまわりに
集まってきて楽しそうにしていました。
男女関係についてもよくしゃべるし、
楽しい人っすよ。独特の節があるし。
「おめえ彼氏はどうなんだ?」
みたいなことを、若いスタッフに
嬉しそうに聞いてまわる。で、
「そんなことじゃあ、だめだなあ(笑)」
とか余計なことを必ずつけ加えるのが素晴らしいです。
その上、シャイで謙遜する人だよ。
テレビカメラのまわらないところでは
全力を出して作業したり推理したりしているけれども、
カメラが来ると、「俺はいいんだよう!」って言って、
何処かに行ってしまったりするんっす。
普通さあ、その逆のタイプで、
現場ではほとんど何もやらないけれども
テレビにやたら写りたがったり
何らかの宣伝を狙ったりするような人っているよね?
望月さんはそのまったく逆。この感じが、
前にdarlingが埋蔵金インタビューで言ってた
「赤城山での俺たちっていい奴だったよな」
を象徴していると思う。
今回はほめすぎてるような印象で気持ち悪いっすか?
でも、ここに書いたのは全部ほんとだと思うよ。
大晦日に確認してみてください。そんじゃ、また。
(つづく)
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