10月22日(水)午前11:00より
TOBICHIにて
『つるとはな』の先行販売会
「ひとつの雑誌だけを売る本屋さん」を
オープンします。
みなさまのご来場、お待ちしています。
お買い上げいただいた『つるとはな』1冊にひとつ、
クリアファイルをさしあげます。
(クリアファイルはなくなり次第終了します)

さて、その『つるとはな』の創刊記者発表が
TOBICHIで行われました。
本日はそのようすをお伝えしたいと思います。
編集長の岡戸絹枝さんと
編集制作の松家仁之さんのおふたりが
たくさんの記者の方々を迎えました。

岡戸さんと松家さんはそれぞれ
「マガジンハウス」「新潮社」という場所で
編集長として
多くのすばらしい雑誌を生んでこられました。
おふたりは同じような時期に
それぞれ勤めていた出版社を退職し、フリーになりました。
なぜ、このおふたりが、ともに
ひとつの雑誌を創刊することになったのか。
そのあたりからお話ははじまります。

 *

松家さん ぼくも岡戸さんも、出版社を退職しましたが、
20年以上編集者をやってきたので
「会社は辞めたけれども、また雑誌をつくりたい」
とお互いに思っていました。

雑誌というものの根幹にはやはり
「インタビュー」があると思います。
しかも、いろんな経験を積んだ、
年齢を重ねた方にお話を訊くのがおもしろい、
ということを
会社を辞めたあと、岡戸さんと話していました。
それがふたりの大きな共通点として、ありました。
岡戸さん マガジンハウスという会社に30年近くいて
おもしろかったことは、
やはり、人の話を訊くことでありました。
なかでもクウネルで
年配の方がお話しくださったことが
強く記憶に残っています。
その人たちの話には、いつもドラマがありました。
そして、しゃべることばに
たくさん胸をつかれました。
そういう人たちの話を訊く雑誌を
読みたいし、つくりたいなぁと
思っていたところ、
松家さんをはじめいろんな方と縁ができて
雑誌づくりに進むことになりました。

『つるとはな』の創刊号の表紙は
ホルトハウス夫妻の写真です。
  料理家のホルトハウス房子さんは80歳、
ご主人のレイモンドさんは95歳です。
ホルトハウスさんは日本における
西洋料理の第一人者といえる方で、
いまも洋菓子のお店や料理教室をなさっているのですが、
このご夫妻、
ごはんは日に2度しか食べないとおっしゃるのです。
「何を食べてそんなにお元気なのかな?」
と、思ったことから(笑)、取材をすることにしました。
おふたりがどんな一日の流れにいるのか、
感じていただけるような内容です。

表紙の写真は、レイモンドさんが
コーヒーを淹れているところ。
コーヒー担当はご主人だそうです。
コーヒーを70年間、淹れているそうです。

それから、取材したもののうち
インタビュー記事についてもうひとつご紹介します。

100年以上続くアイルランドのパブを
スタッフに取材してもらいました。
経営しているのは姉妹です。
アイルランドのパブはたいへんにぎやかという
イメージがありますが、
ここはどうやら違うようでした。
ひなびた町で、高齢の姉妹が経営するパブに
常連の人が集います。
松家さん 日本にいる我々がいま失いつつある
「共同体」のようなものが
このようなところにいきているのを見ると
うらやましいな、と思います。
この姉妹のように、こんなに毎日いきいきと
働いている人がいるのは、勇気づけられます。
岡戸さん 『つるとはな』は
年配の方に話を訊くことを中心に置いています。
年を重ねていらっしゃる方に、
「いま現在はどうなのか」
「これから先をどんなふうに考えているのか」
というふたつのことを
それぞれの取材で訊くようにしました。

この姉妹おふたりに、
「この仕事で
 いちばん好きなところはどこですか?」
という質問をしました。
すると、
「忙しいこと」
と答えたそうです。

そういう、かっこいい年上の人が
『つるとはな』には次々と出てきます。
松家さん そして、『つるとはな』創刊号には、
文芸系のニュースをひとつ掲載しています。
それは、エッセイストでイタリア文学者の
須賀敦子さんの未公開の手紙です。
心をゆるした「年下の友人」に宛てた手紙が
55通、見つかりました。
この一部を『つるとはな』の創刊号で独占公開いたします。

▲須賀敦子さんの手紙。写真:久家靖秀
  須賀さんのいきいきとした筆跡もごらんいただきたく、
写真でも一部、掲載しています。

(記者の方からの、『つるとはな』に勝算はありますか、
 という質問に対して)
いま、わたしたちが読む雑誌といえば、
マーケティングで知った
世の中に求められているものをつくる、
という方針であったり、
「こうしないとこういう恐ろしいことが待っていますよ」
「預金はだいじょうぶですか」
「健康はだいじょうぶですか」
というトーンになりがちだと個人的に思っています。
でも、この『つるとはな』という雑誌は
編集長の岡戸絹枝という人が
自分がこれからどうやって
年をとっていけばいいんだろう、という
本人の関心から発したものだとぼくは思います。
成功するかどうかはわかりません。
でも、小さい出版社ですので、
こわいことは何もないと思ってつくっています。
岡戸さん (なぜいま雑誌なのですか、という質問に対して)
私は、雑誌じゃなくても
よかったのかもしれないです(笑)。
紙の媒体で読みものが読めて
写真がたのしければいいのかなと思っています。
いいころあいの厚さ、手ざわりを実現できるもの、
それが今回も雑誌であった、
ということです。
松家さん ぼくは「ほぼ日」のような
ウェブメディアもとてもおもしろいと思っています。
いっぽう、雑誌や新聞は
もうこの先だめなんじゃないかと言われることがあります。
でもぼくは、それは疑わしいと思っているのです。
紙のメディアの役割は、
少なくとも今後20年か30年はあると思うし、
紙のメディアの人ががんばれば
それは50年にも及ぶと思います。
紙に印刷されている文字や写真は
どこにでも持ち運べて、電源がなくても読めるし、
紙のメディアが持つ質感やビジュアル、
ぱらぱらめくるマテリアルとしての魅力は
失われていないと思います。
それを、自分を含めた出版界の人間が過小に評価し、
自信を失いすぎているんじゃないかという
気がしています。
そうではなく、もっともっとおもしろくつくれば
読者はちゃんといてくださる。
それは、ぼくの確信のようなものなんです。
ゆくゆくは「つるとはな」という会社から
書籍も出していきたいと思っています。
本の美しさを伝えられる
出版社のひとつになれればいいなと思っています。

 

 *

創刊号のページを
はやくめくりたくなる
記者発表でした。

10月22日(水)午前11:00より
TOBICHIにて
オープンするお店に、
みなさまのご来場をお待ちしています。

2014-10-21-TUE