13、「オクラ」

オクラが色も鮮やかにからりと揚がっている
スナックがあります。
ときどきスーパーの一角で
おじさんが売っているのです。
このあいだも
「子供がこれ大好きなのでください」
と言ったら、おじさんが
「奥さん!子持ちにはぜ~んぜん見えない」
と言ったので、大袋で買いました。
こうやって人は
互いを支えあっているのですね・・・。
それをいつもテーブルに置いてある
古い木のお皿に盛って、
昼間はおやつがわりにいつでも食べていいよ
っていう感じにしてあるのだけれど、
たまにしまうのを忘れてしまい、
夜もそのままそこにあることがあります。
このあいだ、夜中の三時に、
まだ二歳にならない私の子供が
突然がばっと起きて廊下に出て行きました。
私は寝ぼけながら「なんだろう?」と思って
そのままふとんの中で待っていると、
彼は小さな両手に
オクラを三本持って帰ってきました。
そしてベッドにのぼり、
私の横にどさっとすわり、
私にはいちべつもくれずに
ベッドの頭のところの板にもたれて
宙を見ながら
「ふう」とため息をついて、
静かにオクラをぼりぼり食べはじめました。
夜中に小腹が減ってビールを飲みながら
おつまみをかじるような、
老けた感じの行動です。
闇の中にオクラの
あおくさい匂いがぷ~んと漂い、
なんとも言えない気持ちになりました。
まるで、同棲している男女が
少しお互いに飽きかけているときのような
倦怠ムード。
そのあと彼は背中を向けて寝てしまったが、
そこもなんとなく似ている・・・。
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