第2回 一般的なビジネス書とは、違います。
----糸井重里によるまえがき(2)
ここで、一般的なビジネス書の特徴を
おおざっぱに言ってしまいたいと思います。
結局のところ、
「常識の書」にしても、
「娯楽の書」にしても、実践書ではない。
・・・読んでいる人を変えることがないんです。
「ふうん、そうなのね」と読まれるわけだから。
これが、ビジネス書の目指しているものと
実際の読まれかたとの大きな差なんだと思います。
ビジネス書って、ビジネスに役だてるためとか、
実際に使うためのものに、見えるじゃないですか。
だけど、よく考えると、
ぜんぜん違う読まれ方をしているんですよね。
そういう読まれ方をするのは、
ビジネス書の多くが、「成功物語」であったり、
「完結された主張」だったりするからだと思います。
「なまもの」じゃないから、自分に侵食してこない。
でもぼくは、自分なら
「既製品」としてではなくて、
「なまもの」としてのビジネス書を作りたいなあ、
と思いました。
そういうビジネス書なら、読んだ人にとって、
実際に影響を受ける本になるかもしれないから。
例えば、ふだんの生活をふりかえると、
たくさんの生身の人に会っているじゃないですか。
その生身の人と会うなかで、ぼくたちは、
その人が有名人じゃなかったりしても、
かなりの影響を与えられたり、
その人の言動によって、自分の生き方を
変えられたりしている場合も、ありますよね。
それはきっと、相手と自分とが、
変化して呼吸して転換していく人間として
おたがいをとらえあっているからだと思うんです。
僭越ながら、多くのビジネス書には、
そういう「なまもの」を感じることができないです。
完成された成功を感じることはできても、
体質とか感情の動かしかたが、
なかなか伝わってこないんですよ。
だから、ぼくは、
経営者の話を聞くとしたら、
「なまもの」としての経営のしかたを、
隣に座っているともだちとして聞いたら、
いちばんおもしろいんじゃないかなあ、
と思っていました。
つまり、マスコミのインタビューのように
「対面して攻めながら話を聞く」んじゃなくて、
「無駄話も含めて、隣りあわせにしゃべる」
ことをしてみたかったんです。
そのほうが、企業の広報の正式な声明のような本より、
よっぽど、ビジネスに興味のある人が
自分で自分の方法を考えていくためのヒントを
得られると考えたんです。
この本は、そんなようにして作られている点が、
多くのビジネス書とは違っているのだと思います。
(つづきます)
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