糸井 |
今度「ほぼ日ブックス」というものを
作ろうと思っているんです。
ペイパーバックスのようなかたちで、
表紙からすでに内容表示をしちゃいまして、
「いちばんナマに近い情報を、
ナマに近いかたちでみんなにばらまくから、
どんどん読み捨ててほしい」
とでも言うようなシリーズにしようと
考えて、朝日出版と組んでいます。
そこでぜひ、第1回のラインナップに、
ユニクロの話を柳井さんご本人からうかがう、
ということをやりたかったんですね。
柳井さんご存知かもしれませんけど、
出版っていうのは、聞いてみると
原価率が7割みたいなものを
みんなでぶんどりあっているっていう
かなりおそろしい世界の商売で(笑)。 |
柳井 |
あははは(笑)。 |
糸井 |
なりたちっこないところで
何とかやっているという
珍しい種類の商売なんです。
ただ、誰も得していない業界っていうのは、
もしかしたら、何か変わるチャンスが
あるんじゃないかと思って。
ここまで誰も得していないのに
みんなが知っている商売って、ないですもん。
だから、ジタバタしてみようと
思っていますけど。 |
柳井 |
本はね、再販制度というものとか、
やっぱり、手間がかかりますよね。
人の手間をかけなければいけないんで。
その割に売価が限られていますよね。
いい本だからって、高価にできないでしょ? |
糸井 |
はい、できないです。 |
柳井 |
それがいちばん問題なんじゃないですかね。 |
糸井 |
ちょうどこのシリーズでも、
どこに手間をかけるかという部分を
変えていこうというのが、
テーマになっているんです。
最低限の手間なんですけれども、
中身のおもしろさがあれば、
言いまわしが少し変だというようなものも
そのまま出してしまっていいんだ、と、
テレビの放送だったら、そのまま流れるから、
テレビとかラジオの方法論で、
活字をもう一度とらえなおしたら、
何か新しいことができるかなあと考えています。
そこで原価率を多少下げているんですけれども。 |
柳井 |
そうですね。
インターネットっていうのは、
そういうものじゃないでしょうか。
その瞬間その瞬間ですから。
いま言われたように、
本って、小さいところにこだわりすぎですよね。 |
糸井 |
(笑)ですよね。 |
柳井 |
純文学とかならわかりますけど、
そうではないものでも、
極論したらたいした違いを生まないところで
手間をかけすぎているように見えます。
それが評価できればいいんですけど、
評価できない点まで来ているというのが、
あるんじゃないですか。 |
糸井 |
そうですね。
従来の本の市場には、
フェティシズムというか、
「本って、大事なものだ」
という幻想を前提にしている人たちが
集まってきていますから。
|
(つづきます)