柳井 |
それにやっぱり、みなさん、
本を出すということを、何か
「歴史に残る」と捉えているというか(笑)。 |
糸井 |
あははは(笑)。 |
柳井 |
自分の記念碑みたいな、
そう思って本を書いていらっしゃるかたが、
非常に多いんじゃないでしょうか。 |
糸井 |
それはまったくそうですね。プロでもね。 |
柳井 |
そういう前提で、
一字一句まちがいのないように
しようとこころがけているようなことが
非常に多いですよね。
学問だったら、それでいいんですけど、
現実のことを表記するという面では、
時間をかけすぎて、商品としては
むつかしいのかもしれないですけれども。 |
糸井 |
やっぱり、本の歴史が、
ある種、本に対する姿勢を
変態化させてきたんでしょうねえ。
もともと、本って、最初は
お坊さんの間で作られたものですよね。
それをひきずりすぎていて。
実際はお坊さんの間で大事にされるものとは
本の形態が変わってきているのに、
あいかわらず昔の尻尾を追っているという。 |
柳井 |
ああ、そうでしょうねえ。 |
糸井 |
流通を実践している柳井さんなら
すぐに気づくと思いますが、本の業界は
「本を買うお客さまが何を欲しがっているか」
「何を投げ入れると、受け入れてくれるか」
「何を提供すると、不平不満がかえってくるか」
という実験もせずに、なおかつ
販路も人にゆだねていますよね。
作るだけ作っておいて、あとは
「売れないのは、運が悪い」
みたいな大ざっぱな世界ですよ。
作り手として責任を取っていない
商売かもしれません。 |
柳井 |
わかります。
本って、書く人が、
「言いたいことを言いっぱなし」で。 |
糸井 |
(笑)はい。 |
柳井 |
お客さまの反応だとか
そういうことをほとんど気にしていないですよね。
だから本というのは、
まだ「商品」ではないんじゃないかと思います。
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(つづきます)