個人的なユニクロ主義。
柳井社長に至近距離でインタビュー。

第7回 まだ「商品」になってないですよ。


柳井 それにやっぱり、みなさん、
本を出すということを、何か
「歴史に残る」と捉えているというか(笑)。
糸井 あははは(笑)。
柳井 自分の記念碑みたいな、
そう思って本を書いていらっしゃるかたが、
非常に多いんじゃないでしょうか。
糸井 それはまったくそうですね。プロでもね。
柳井 そういう前提で、
一字一句まちがいのないように
しようとこころがけているようなことが
非常に多いですよね。

学問だったら、それでいいんですけど、
現実のことを表記するという面では、
時間をかけすぎて、商品としては
むつかしいのかもしれないですけれども。
糸井 やっぱり、本の歴史が、
ある種、本に対する姿勢を
変態化させてきたんでしょうねえ。

もともと、本って、最初は
お坊さんの間で作られたものですよね。
それをひきずりすぎていて。
実際はお坊さんの間で大事にされるものとは
本の形態が変わってきているのに、
あいかわらず昔の尻尾を追っているという。
柳井 ああ、そうでしょうねえ。
糸井 流通を実践している柳井さんなら
すぐに気づくと思いますが、本の業界は
「本を買うお客さまが何を欲しがっているか」
「何を投げ入れると、受け入れてくれるか」
「何を提供すると、不平不満がかえってくるか」
という実験もせずに、なおかつ
販路も人にゆだねていますよね。
作るだけ作っておいて、あとは
「売れないのは、運が悪い」
みたいな大ざっぱな世界ですよ。
作り手として責任を取っていない
商売かもしれません。
柳井 わかります。
本って、書く人が、
「言いたいことを言いっぱなし」で。
糸井 (笑)はい。
柳井 お客さまの反応だとか
そういうことをほとんど気にしていないですよね。
だから本というのは、
まだ「商品」ではないんじゃないかと思います。
(つづきます)

2001-10-25-THU

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