司会 それでは‥‥決勝戦を行ないます――。
会場 ‥‥‥‥‥‥‥(静寂)。
司会 ウサギさんコーナー‥‥。

この1年で、シブすぎ技術が一皮むけた、
熾烈な予選を勝ち抜き、
目指すはこの大喜利の頂点で男泣き――。

見ル野栄司選手の入場です!

会場 ワァァァァァ‥‥!
司会 続きまして、カエルさんコーナー‥‥。

もはや大喜利マンガ家の権威、
「ダイナマイト関西」ベスト4の実力者が、
満を持してここに降臨――。

和田ラヂヲ選手の入場です!

会場 ウォォォォォ‥‥!
第三回ギャグ漫画家大喜利バトル、決勝――。

これまで、大喜利史を画する名勝負があり、
こころに残る、お答えが出た。

あまたの芸人が有明のマットに沈み、
6名のギャグ漫画家が、なんばの露と消えた。

あしかけ2年にわたり、
「大喜利チャンピオン」の夢を追い求めた
マンガ家・和田ラヂヲの挑戦も、
ここに、クライマックスを迎えていた――。

── 先生、ついに決勝です。
ラヂヲ ははは、上出来ですわ。
── 勝てると思いますか。
ラヂヲ わかりませんねぇ。
── では「勝ちたい」ですか。
ラヂヲ ‥‥当たりまえでしょう。
ゴングの前の、みじかいやりとり――。

よけいなこととは知りつつも、
われわれは
「オモシロクナ〜ル」と「ヨクスベ〜ル」を
そっと、差し出してみた。


今大会、ドーピング禁止薬物には未指定。なぜなら、ただのラムネなので。
「ありがとう。でも、オレにはどっちも必要ないわ。
 もう、いつもどおりやるだけやから。
 ‥‥ヨクスベ〜ルのほうは、とくに要らんやろ」

そう、そんな助けは必要なかった――。

ただ「優勝」の二文字だけを胸に刻み、臨んだ
5月のダイナマイト関西、
まさかの初戦敗退という屈辱を晴らすため‥‥。


和田ラヂヲエコバッグ「エステにいそしむ男」より

容赦なく押し寄せる締切りの合間を縫って
自らの「大喜利筋」に
過酷すぎるトレーニングを課す日々‥‥。


和田ラヂヲエコバッグ「僕って裸が大好きなのさ」より

知力、体力、メンタル、ステージ・パフォーマンス‥‥
今日の戦いにすべての照準を合わせてきた――。


和田ラヂヲエコバッグ「男・発展途上(21歳)」より

ギャグ漫画家・和田ラヂヲ最後の戦いが、
今、ここに、はじまるのだ――。

イラストはイメージです――。

チャンピオンとなるためには、
相手より先に15ポイントを取らねばならない。

これまで「手数」で相手を圧倒してきた
見ル野栄司選手が
勢いにまかせて、王座を勝ち取るのか。

それとも
ラヂヲ先生が、悲願の優勝を果たすのか。

ここからは、まれに見る熱戦となった決勝戦を、
ダイジェストでお届けしよう。

ボロボロの身体に残った力をふりしぼり、
最後まで
壮絶なバトルを魅せつけてくれた両雄に
最大限の敬意を表して――。

司会 「今年で100歳になるトクジロウさん。
 最近感じた、
 自分歳とったなぁとはどんなこと?」
見ル野 「成人式で暴れなくなった」
ジャッジ Good!
ラヂヲ 「水戸黄門を最後まで見れない」
ジャッジ Good!
実況 「えーい」ということは
「控えおろう」の場面‥‥。
つまり、
午後8時45分前後ということですね。
── じゃあ、
もうちょっとで終わりだったのに‥‥。
司会 「なんだかモヤモヤする
 連載休載のお知らせとはどんなもの?」
ラヂヲ 「休載の青汁」
ジャッジ Good!
ラヂヲ 「今、白いワニが来てる」
ジャッジ Good!
ラヂヲ 「今、江口さんと飲んでる」
ジャッジ Very Good.


実況 和田選手、得意のイラストを封印し、
文字で連続得点!
── ‥‥ラヂヲ先生、勝ちに来てるぞ!
司会 「待ちに待った第一回本屋さん大運動会。
 印象に残るひとコマとは?」
ラヂヲ 「待て待て万引きさん」
ジャッジ Excellent!
見ル野 ‥‥(黙考)。
ラヂヲ 「Amazonの人が乱入」
ジャッジ Excellent!
実況 和田選手、悲願の大喜利王者に王手!
 
司会 「今日から1チーム10人で
 野球をすることに。
 余った1人は何をする?」
見ル野 「グラウンドはオレが守る」
ジャッジ ‥‥Next.
見ル野 「思い出カメラマン」
ジャッジ ‥‥Next.
見ル野 「試合を混乱させる」
実況 ここへきて、
見ル野選手が猛然とお答えを提出、
追い上げてきました!
「Excellent!」一発で
逆転優勝もあり得るスコアに‥‥あっ。

ここで、和田選手の手が挙がった!

司会 「今日から1チーム10人で
 野球をすることに。
 余った1人は何をする?」


和田選手、お答えを‥‥お願いいたします。
ラヂヲ 「‥‥チーターの世話」
── チ、チーターの世話‥‥!?
うすた ‥‥ウァァァァァァ!
カラスヤ チーターの世話て!
村上 ワンワン、ワンワン、ワン!
ごう み、見えない‥‥。
とり チーターの世話、か。
江口 チーターの世話、ね。
実況 ‥‥‥‥‥‥(ドクンドクン)。
会場 ‥‥‥‥‥‥(ドクンドクン)。
見ル野 ‥‥‥‥‥‥(ドクンドクン)。
ラヂヲ ‥‥‥‥‥‥(ドクンドクン)。
ジャッジ ‥‥‥‥‥‥‥‥Very Good.
会場 ‥‥‥‥‥‥‥ウォォォォォ!
司会 和田ラヂヲ選手、優勝――。
会場 ワァァァァァ‥‥!




こうして‥‥。

大喜利バトル史上初の「ボウズ対決」は‥‥。

ボウズ度でわずかに勝るラヂヲ先生に、軍配が上がった。

大喜利王者への夢は、ここに実現した。


Dream Comes True ―― 夢は叶う。


優勝記念の真紅のタオルケット。とうぜん世界に一枚しかない激レア品。
こうして、大喜利に魅せられたマンガ家の
ひと夏の挑戦が、その幕を閉じた。

ここ数カ月、その動向を追い続けた
われら取材班の胸に
さざ波のような感動のメモリーを残して‥‥。

おめでとう、ラヂヲ先生。
おめでとう、大喜利王者。

多くの言葉は、費やすまい。

ただひとつ、先生、
「ネコが出ますよ。」のプロフィール欄ですけど、
せっかくなんで
「梅干しの種飛ばし日本一」に加えて
「第三回ギャグ漫画家大喜利バトル王者」の称号を
書き足しておきますね。




 
<完>
2010-10-22-FRI