第17回
チームは人間そのものです。
チームは人間そのものです。
糸井 |
プロ野球って、 超一級の人が集まる場所だから、 おもしろいですね。 |
藤田 |
それぞれが、 天下取ったヤツばっかりですから。 なかなか、話が、おさまらないです(笑)。 |
糸井 |
「王さま」の集まりですもんねぇ。 ピッチャーは、特にそうでしょう? |
藤田 |
ピッチャーは、 なんかワイワイいいだしたら、 その場に、入っていかないんです。 知らん顔して、自分の世界にいっちゃう。 バッターは、ガンガン、 やりあいっこを、するんですよね。 |
糸井 |
ピッチャーっていうのは、 もっと「職人」タイプなんですか? |
藤田 |
うん。 ピッチャーっていうのは、 割合と、仲間にならないんです。 |
糸井 |
そういえば、 「投手会」って、別に生きてますね。 |
藤田 |
ええ。必ず投手会っていうのはありましてね……。 |
糸井 |
あれ、不思議ですよね、思えば(笑)。 みんな、選手なのに、 ピッチャーだけ特別の会がある。 |
藤田 |
ええ。 投手会のほうが、よくまとまってるんですよね。 |
糸井 |
仲、いいですよね……。 |
藤田 |
直接の利害関係ないですから。 バッターには、 打順やポジションの争いがあるでしょう? ピッチャーは、 ぜんぜん、ポジション争いがないですから。 |
糸井 |
そっかー。 |
藤田 |
ええ。 だって、仲良くニコニコ話したって、 ポジション争いですものね。 怪我したらシメシメって思うくらいですから。 |
糸井 |
(笑)営業マンの 集まりみたいなもんですからね。 なんか、ちょっと聞いてるだけでおもしろい! もう、貯まってんだよね、藤田さんの中に……。 すごいなぁ。 |
藤田 |
そうですか。ありがとうございます。 さっきの話、やっぱりその点、 野手はむずかしいですよ。 意地っ張りで、気力の強いヤツで、 技も持っているヤツというのは、 よほど上手く使わないと ちょっと1回ひねくれると、 力を、半分も出さなくなりますからね。 で、チーム内の不平分子になっちゃいます……。 |
糸井 |
その場合、 思いっきりおだてるほうがいいんですか? |
藤田 |
そういう実力者に 「何番でも打てる」と、言い聞かせてやれば、 「あ、そうか」というかたちになりますから。 下位打線にも、裏のクリーンナップと伝えて。 |
糸井 |
昔の、駒田や岡崎がそうでしたね。 |
藤田 |
そういうふうに まわりに言ってもらうように仕向けると、 自分たちで、えばってるわけですよ。 そういうふうな感じに持ってってやると、 ちゃんと、働くんですよね。 意地を持っているやつのその意地も、 うまいこと生かしてやらないと、 しょげるヤツと反発するヤツとおりますから。 川上さんが監督時代に、 選手の土井に、じょうずに接したんですよ。 「どうやるかな?」って見ていたら、うまい。 「何でも言え」と土井に言ったんです。 「影で言ったら、不平不満になるけれど、 面と向かって言ったら、それは進言なんだ。 オレは、おまえの意見はちゃんと聞くから」 そしたら、土井がよろこびまして……。 どっちかっていうと「言いたいタイプ」だから、 聞いてくれるし、言いたい放題言ったものを、 「不平不満じゃない」と思って聞いてくれる。 よろこんじゃって、働きましたよ。 |
糸井 |
へぇー。 |
藤田 |
あれ、うまいなと思ったですよ。 |
糸井 |
藤田さん時代の 駒田や岡崎なんて、 間違ったらえらいことになってましたよね。 |
藤田 |
失敗したら、 えらいマイナス要因になるところだった。 |
糸井 |
野手の中で、 よそのチームの主力が ほかのチームに入ってきたとしても、 働かない場合って、理由は何なんですか? |
藤田 |
トレードされる前に 一流の選手に見えていても、 いわゆる選手としての中身が たくさん詰まっていない人がいます。 そういう人の中身には、 何か、余分なものが、入っているでしょう? 「もろい」んですね。 修行が足りないと言ってしまえば、 そういう言葉になるかもわかんないけど、 そんな選手を見ると、 「詰ってないなぁ」と思いましてね。 |
糸井 |
うん、そうなんですよね。 だから、そういう選手って、 打っても運で打ったように見えちゃう。 |
藤田 |
結局、そういう人は、 田舎の大将かなという感じがしましてね。 「練られてないな」と思うんです。 |
糸井 |
ダメなチームって、どういうもんですか? |
藤田 |
結局ね、ダメな時は、選手ひとりひとりの やってることが、ものすごく無責任なんですよ。 「よければ、いいや」 っていう程度で、見ていても、 「何がなんでも食らいついてやろう」 というところが見えない。 これは、もったいないですし、負け犬根性です。 ぼくは以前、そういう経験を 他のチームを訪れた時にしたんですが、 そういう時は、ミーティングでこちらが 「優勝しようや!」って言ったとしても、 みんなシラーッとしちゃったりして……。 ニヤニヤ横向いて笑っていやがったから、 コンチクショウと思ったんです。 「今年、頑張ろう!」って言ったとたんに 横を向いてね、シラケやがったり。 負けチームって、そうなるんですよね。 負け慣れてるチームってね……。 そういうチームほど、まぐれでトップになったら、 すぐ気を失っちゃって、自分たち何してるか、 わかんなくなっちゃうんですね。 |
糸井 |
うーん…… なんか人間の話みたいですね、チームって。 |
藤田 |
いえ、チームって、人間そのものですよ。 |
糸井 |
ひとりの人間なんですね。 |
藤田 |
ええ、そうなんですよ。 みんな、ひとつのものの中の部品ですから。 |
2015-05-02-SAT
タイトル
体温のある指導者。藤田元司。
対談者名 藤田元司、糸井重里
対談収録日 2002年10月
体温のある指導者。藤田元司。
対談者名 藤田元司、糸井重里
対談収録日 2002年10月
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