「ピヤノアキコ。」発売記念
純・トリビュート企画

矢野顕子感謝祭。

第12回
糸井darling重里からの
謎の色紙。


さあいよいよ今回で
矢野顕子さんへの純トリビュート(捧げ物)企画
「矢野顕子感謝祭」も、
最後のひとりになりました!



もったいぶってたわけじゃないですが
その最後のひとりとは、糸井darling重里です。
darlingの特使として、シェフ&スガノが
来日中の矢野さんのところに
その貢ぎ物を、お持ちしてきました。
そのプレゼントとは、いったい何なのか?!

さあ矢野さん、どうぞ、開けてみてください!

「なんだべー?」

ハイ、それは色紙です。
そこにはただひとこと「顕子」。
そして下の方に小さく
「concept by 糸井重里」の文字。



「えー? あっはっはっはっは!
 これは、なぁに‥‥? わかんなーい!」


ええ、それだけでは、たぶん、
おわかりにならないと思いますので、
darlingからのメッセージをどうぞ。


darlingからのメッセージ

あっこちゃん元気ですか。
この、あまりにもあっけない一枚の色紙が
ぼくからの捧げ物です。



どういうことかといいますと
あっこちゃんは自分のことを
「矢野はですね」とか
「矢野は」とかっていうふうに
ずうっと名字で語ってきました。
このあいだのアルバムについても
「ピヤノアキコ」というふうに
矢野という社会的な人格がメインになりました。
若くしてピアニストとして自立して
ずっと社会的な存在でありつづけた
矢野顕子という人なんだけれども
実は、生まれたときは、
鈴木さんちで、
「顕子」として生まれたんだと思うんです。

親がいるうちは、顕子だった。
どこからか自分で生きるぞと決めて
名字つきの矢野顕子になって、
ずうっとそのまま
母であり、妻であり、
ピアニストであり、作曲家であり、
みたいな言いかたで
みんなに思われてきたんですけれど、
実は、生まれたときの、
ひとりの赤ちゃんが生まれた、という、
あっこちゃんという存在が
じつはもっと大きなものなんだけれど
見えなくなっちゃっているような気がするんです。

その意味で、すぐじゃなくてもいいんだけど
どっかのタイミングで
「顕子」っていうアルバムをつくりたいな、
ぜひつくってほしいし、
ぼくはそのアルバムが聞きたいなあと思うんです。
つまり、社会的な矢野顕子という存在は
もうさんざん見ているんで
ぼくらが「あっこちゃん」といってるときの
あっこちゃんの、さらに裸な姿というか、
顕子、という、親がつけた名前の
あっこちゃんという存在になった
アルバムというのが聞きたいなあと思って。
ぼくの希望でもあるし、
プレゼントでもあるということで
このアルバムタイトルを
プレゼントしたいと思います。



昔、これのちょっとバリエーションで
「いいこ、いいこ」という曲をつくりましたね。
あれは「おかあさんも、ほめられたい」
だったんだけど、
あの気持ちの奥に、「顕子」のコンセプトが
見え隠れしているような気がします。

ま、これだけじゃあまりになんだから
ちょっとおいしいお菓子をみつくろって
一緒にさしあげたいと思います。

それじゃ、また。糸井重里でした。

「うん、うん、うん、うん。なるほど。
 そうだったのかー!!」




ふかくうなずく矢野さん。

「ローマ字の「Akiko」というアルバムタイトルは、
 自分で考えたことが、
 ないわけじゃ、ないんです。
 でも漢字の「顕子」は、思いつかなかった。
 言われてみればその通り! って感じです。
 アメリカだと「Akiko」という名前で
 (アキーコ=「キ」にアクセント)
 日常、わたしは、呼ばれているわけですね。
 だから、自分の名前は
 「アキーコ」だと思っているの。
 たしかにアメリカ暮らしをしていれば、
 名前で呼ばれることは、
 まったくなんでもないんですよ。
 でもたまにね、アメリカで育った日系のかたから
 「あきこ」(「あ」にアクセント)と呼ばれるの。
 そうするとね、ドキーッ! とするのよ!(笑)
 「えっ!? えっ!? だれ??」って。
 それって、すごく、裸の自分に触られたような、
 そのくらいの気持ち」




──それは、漢字の「顕子」とも、
  ちょっと違いますか?

「‥‥そうね、この漢字の「顕子」は
 それとも違いますね。
 親からも、「あっこ」ですからね、
 物心ついたときから。
 叱られるときくらいかな、
 「あきこ」って呼ばれたのは。
 そうそう、アメリカ人が、
 ミドルネームで呼ばれるのをすごく嫌うのね。
 それを含めて呼ばれるときって、
 親から叱られるときなんですって」


──そういえば、そうかもしれないですね。
  自分の名前って、そんなふうに
  真正面から向き合ったこと、ないですものね。

「しかも、漢字で見ると、
 またこの字がすごいんだ、「顕子」。
 この字の重さっていうか、意味性っていうか。
 非常に新鮮な驚きです!
 ‥‥そして、これね、このひと、
 よく、わたし、知らない。まだ


──えっ!



「うん。なんか、知らない。
 これは、すごい新鮮!!」


──でも、いらっしゃいますよね、
  「顕子さん」というひとは。

「そう、「いる」よね。いるんだけどさ、
 糸井さんがおっしゃる通り、「矢野顕子」なのよ。
 この「顕子」の前には必ず
 「矢野」がついているの。
 顕子だけが独立することはないんです。
 だから、新しい人に出会ったみたいな感じ。
 「いたね!」って。
 久しぶりね、というよりも、
 これから知り合う感じかな‥‥


──ほーう!

「でもさ、それさ、「重里」にも言えない?(笑)
 だって、いつも「糸井」だよ?
 「重里」の前には「糸井」がいつもいるのよ。
 ほらほら、「重里」って、誰? この人?(笑)」




──ほんとですね。ぼくらも「重里」という人とは
  まだ、知り合っていないかもしれないです!

「だからやっぱり、名前って、
 自分が思っている以上に、
 ただの記号じゃないよね。
 なにか持ってるね。
 それからやっぱり漢字ってすごいや。
 漢字の力、感じましたね。
 さあ、どうしよう?! 顕子。つくるか?!
 こんどのアルバム‥‥っていうんじゃないな。
 その次だねー。
 よし、来年のアルバムを、
 これにしようか!




──わー(パチパチ)。
  ぼくらも、ぜひ、聴きたいです。
  矢野さん、どうもありがとうございました。
  お菓子も、どうぞ召し上がってくださいね。

「おおお。これはね、かなり期待です。
 開けてもいい? わぁ、素敵、いい香り!
 わあ、さくら餅! ちっちゃな鯛焼き!」

 (桃林堂の小鯛焼と、さくら餅です)



「ああ、もうすでに、ここに、ちゅば(つば)がね!
 じゅるっ。うれしいー!!
 どうもありがとうございますー!!」


──そ、そんなに喜んでいただいて、
  こちらこそありがとうございました!



矢野さんは、やっぱりおいしいもの好きだった。
いやいや、そんな結論ではありません。
食べものも、お好きだった。
ともかく、喜んでくださって、うれしいです。

みなさま、もしかしたら来年、
「顕子」という名前のアルバムが
発売されるかもしれません。
そのときはぜひこの「矢野顕子感謝祭」が
もとになっているのだよと、
言いふらしてくださいねー。

て、これにて、全11組の、
「純トリビュート」が終了しました。
次回で、このコンテンツも
グランド・フィナーレとなります。
矢野顕子さんから、みんなへの、お礼
お届けする予定です。
どうぞお楽しみに!

2004-04-28-WED

HOME
戻る