ホテルでつくろう永田野菜。

緊急対策はどれくらい効いたのか?


(前回までのお話。)
近年まれにみる日照不足。
切れ目なく続いた長雨。
関東でも特に涼しい日光の畑。
はじめての野菜づくりとしては
過酷な環境で行われた
日光金谷ホテル菜園プロジェクト。
生育不足の原因は栄養不足と
品種と気候との相性だということが判明。
永田先生の指示で
液肥を与える頻度を増やし、
希釈濃度をあげるという
緊急対策が施されました。

日光金谷ホテル
菜園プロジェクトリーダーの諏訪さん
映像記録をおさめる前田カメラマンとともに
今年、9回目となった日光入り。
初めて金谷ホテルを訪ねた2月は


こんな雑木林だった裏山を


こんな風に開墾して


今やこんな立派な菜園ができました。
うまくいっているトマトは
収穫できるようになったとはいえ、
目標はホテルのお客さまに継続的に
野菜が提供できるようになること。

これから栽培がはじまる秋冬野菜や
来年の夏野菜にむけて
成功したところと
失敗したところの検証が行われました。
まずは永田先生からの
緊急対策が効いているものと
効いていないものをチェックします。
先月、
「これはもう無理だろう」と
思われたインゲンマメは、
ここまでもちなおしてきました。

以前

寒いところでは無理かなと思われた
サツマイモですが
ここにきて急に元気になりました。
以前

気温があがってきて持ち直したのでしょう。
サツマイモはもともと手間のあまりかからない
作物だったことが幸いしたみたいです。

秋ナスを待たずに撤退が噂されていたナスも
ここまで元気になりました。

以前


キュウリも実をつけはじめ、
プチトマトだけでなく、
中玉トマトも実がなりはじめました。
甘さがのっているプチトマトに比べ、
こちらの中玉トマトは味がぼやけた感じ。
「中玉トマトはこれから
 味がしっかりしてくるのでしょう。
 これだけ立派に実付いていたら
 まず大丈夫」なのだとか。

永田先生による緊急対策が効いているのか
ほとんどの野菜が持ち直してきた一方で
背が低いトウモロコシや


実がつく気配がないオクラがあります。



緊急対策を施しても効き目が無かった
これらの作物は
日光でも高地にある
金谷菜園の涼しい気候とは
相性が良くなかったようです。

緊急対策が効いた作物と
そうでなかった作物を見比べて
諏訪さんから
2つのポイントがあげられました。

●苗の植え替え、種まき直後は
 栄養を十分にあたえること。


●その土地にあった品種を選ぶこと。

育ちはじめは生育が悪く
緊急対策から持ち直したことで
わかったのは
日照不足だけでなく、
栄養不足が主な原因だったということ。

肥えた土を取り除いて
全くの処女地を作り出して始めた金谷菜園。
雑草がほとんど生えていないことからも
わかるように
栄養分ゼロから始めるプランター栽培に近い環境で
栽培が始まったと考えられます。

ベランダでのプランター栽培は
雨が降り込むことも少ないので
液体肥料もコンスタントに与えることができますが
露地栽培では長雨によって
液体肥料を与えるタイミングを失ってしまい
一番、作物にとってダメージが強い
苗の根を切った後や種まきといった
環境が変化した直後から
根が定植するまでの間の
デリケートな時期に
栄養不足が続いてしまったと考えられます。

緊急対策の効果が無かった作物から
わかったのは気温と作物との関係。
金谷ホテルより高地にある
近隣の畑では栽培されてなかったことからも
(近隣でも低地では栽培されていた)
もっと高い気温を必要とする
トウモロコシやオクラは向いてなかったようです。

「トウモロコシやオクラは
 もうとっぱらってしまって
 次の野菜を植えたほうが良さそうですね。
 そう思ってメモを書いてきたんです。」

とメモを取り出した諏訪さん。
「夏野菜の収穫をしながら
 秋冬野菜の準備をはじめましょうか」

9月の声をまたずに
日光では秋の準備がはじまりました。


2006-09-02-SAT