ほぼ日 |
構想から実現まで2年以上をかけ
最初はこの企画に対する出資者を
集めるところから始まった
このDVDプロジェクト。
いよいよ販売が開始されますが
そもそもなぜ、DVDが必要だったんでしょうか? |
糸井
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ユニクロの野菜事業に関わることになって
永田先生のあとについて
産地をまわっているときに
どうして先生が育たないんだろうと思ったんです。
日本には農地はあるし
タネも苗もどこでもある。
時間を持ってる人も、
やる気を持ってる人もいる。
ただ、たりないのは、
インストラクターだけだったんですよ。
つまりこのDVDは聖書なんですよ。 |
諏訪 |
うんうん。なるほど。 |
糸井 |
キリストの弟子を
キリスト自身が全国に育てることは大変だけど、
グーテンベルクが、印刷術を発明したおかげで
みんなにキリストの言葉がくばられたように
農業の先生をくばるってことが、
この企画のスタートだったんです。
「みなさんこのDVDをお持ちですね。
じゃあ後はよろしく。」
ということがすべてです。 |
諏訪 |
もともと、聖書とは
文章からその宗教思想みたいなものを、
読むことによって学べたのかもしれません。
これまでにも野菜でも
本はいっぱいあったんですよね。
農芸書だとか、
家庭菜園について書かれた
本もあるし、雑誌もある。
ぼくもたまたま15年ぐらい前に、
この野菜作りを始めようと思った時は
まったく知識も経験もなかったから、
とりあえず、本を買ってくることから始めました。
でも、本を片手にはじめてみても、
けっこうやっぱりむずかしいところが、
いっぱいあるわけですよ。 |
糸井 |
うんうん。 |
諏訪 |
野菜作りは聖書を読んで
頭で理解するのとは違って
文章や絵だけではどうしても理解できない
独特の植物の成長ぐあいとか、
野菜そのものの姿とかもあって、
「どうしたらいいんですか?」
と、近くに住んでいる
農家のおじさんに聞いても
くわしく教えてくれないんですよね。 |
糸井 |
むずかしいんですよ。
教えるっていうのはね(笑)。 |
諏訪 |
わかってても教えることは難しいんです。
1種類だけを1種大規模に作っている
トマトだけを1000本とか
大根だけを1万本作ってるやりかたと
家庭菜園のように、
せまいところに、
大根何本か植えて、
トマト何本か植えてやるやりかたとは、
同じ野菜作りでも違う部分が相当あるし、
農家の方々がされているのも
先祖代々40年、50年培われてきた農法です。
だから道端で聞かれて
「ああやれ、こうやれ」
と簡単に教えられるようなことでもない。
それに農家のかたって、
一般的に寡黙なかたが多いので、
なかなか教えてくれないんですよ。 |
糸井 |
うんうん。 |
諏訪 |
糸井さんと『やさい通信』の取材を通して知った
『風の学校』の白石さんのように
農家のかたが、素人に自分の畑を貸しながら
野菜作りを教える方がいらっしゃいますけど
やっぱりそういう人は少ないんです。
珍しいからこそ取材したわけですし。
だからこのように徹底的に野菜作りの過程を
記録した映像の商品ができたことは
すごく画期的なことだと思います。
今までなぜこのような商品が
無かったのかを考えてみると
単純なことなんですけども、
このDVDには
およそ50種類の野菜の育て方が出てますが
その全てを記録するだけでも
やっぱり莫大な時間と金がかかるからなんです。
これが書籍だったら
2〜3ヶ月もあればできますし、
写真とイラストで説明すれば
マンパワーもコストもかけずに
作ることができる。
季節によって育つ野菜も違うから
こちらでタネ蒔きを録ったら
同時に向こうでは
別の野菜の収穫を録らなきゃいけない。 |
糸井 |
さらに品種によっては
その年は失敗する可能性もありますしね。
しかも、それは人的理由ではなくて
天候に左右されることが多いから
未然に防げないことですし。 |
諏訪 |
そうですね。
リスクが多すぎるんです。
だから誰も怖くてやらなかったんだろうなと
思ったんですけども。 |
糸井 |
非常識だったんでしょうね。
商売として非常識でも、
必要なものは、
成り立つっていうのは、
今の時代の考え方だと思ったので。
まあ、息止めて走りましょう、
みたいなことですよね。 |
諏訪 |
ですよね。 |
糸井 |
単純に昔と比べて
撮影機材などのコストは、
相対的に安くなってるし
ロケ隊に50人も必要な企画じゃなくて
少人数でできるようなものだったから
ありがたいことでしたけど。
でも、お金はかかりましたよね。
実は相当な無理をしてますよね。
我々だけでもできなかったし、
NHKだけでもできなかったし。 |
諏訪 |
ですよね。
撮影日数だけでも200日を超えましたし。
映画の世界でも
総撮影日数200日というのは
それなりの大作だと思いますよ(笑)。 |
|
(つづく) |