諏訪 |
総撮影日数は200日を超えましたが
同じディレクターとカメラマンが
1年間ずっと、
浜松にある永田農業研究所に通いました。
ドキュメンタリー撮影に慣れている
スタッフを起用したとはいえ、
なんらかの出演者がいて、
リアクションが返ってくるわけじゃないし
畑にひたすらはいつくばって
タネ蒔きからずっと撮っていくという
単調な作業じゃないですか。
同じ撮影するのでも、
かなり忍耐のいる仕事だったんですね。
撮り続けている時には
感じないんですが
例えば3〜4ヶ月かけて撮り終わった
トマトの素材をちょっとずつ
つないでみたときに、
はじめて感動が生まれるんですよ。
最初はちっちゃなタネが
1ヶ月後にこうなって、
3ヶ月後にこうなって、
最後にはぐわーっと
成長していった様子を、
俯瞰できるんですけど、
そこでようやく感動するんですね。
撮影自体は相当辛かったと思います。 |
糸井 |
撮影を担当した
クリエイティブネクサスという会社とは
以前、ナミビア砂漠の生き物を追い続けた番組の
ナレーションの仕事をしたんです。
だから我慢がいい理由もわかってた。
そういうチームしかできないでしょう。 |
諏訪 |
うんうん。できないですね。 |
糸井 |
この仕事は手を抜いたらおしまいなんで、
見事にキャスティングの妙ですよね。
「笑いっていうのはなー!」
なんて言ってる人には作れないですよ。
きっと
「これとこれは同じだから、
撮らなくていいんじゃないか。」
こともなかったでしょう。 |
諏訪 |
そうですね。
現場では
カメラマンやディレクターと
これとこれは同じだから
撮らなくていいんじゃないかっていう、
議論はありました。
だけど、やっぱり撮るんだと。
とにかく撮ってみなきゃわからない。
そこはがんばって撮り続けました。 |
糸井 |
人間は嫌だと言ったら
おしまいになるけど
野菜は嫌だと言わないだよね。 |
諏訪 |
ナレーションが入ってますが
たぶん、映像を見ることによって
感覚として理解できると思います。
例えば、
「ほうれん草のタネを蒔くと
1週間たつとあんな感じになって
あんなふうに間引くんだ、」
と。
これが言葉に直すと
「1週間後は2センチ間隔で間引きましょう」
となるんです。
これだけだと定規をあてて
2センチ間隔をとっているわけじゃないから
「間引く」時のイメージが
わかりづらいんですよ。 |
糸井 |
映像をみて、
「あんな感じ」というと
ぴったりなんだよね。 |
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諏訪 |
これが写真でも
止まってるから
「間引く前」と「間引いた後」の
ニュアンスはわからないですよ。
このDVDでは動画なので、
密集したほうれん草に
指が入っていって
抜いていくところを
見ることによって、
あんな感じだ
というイメージが頭に浮かぶ。
DVD自体は畑にもっていけないけど
イメージは畑にもっていけますからね。 |
糸井 |
映像にしたことによって
海外でも売れるんじゃないかと
最初から思ったんですけども、
その話もないわけじゃないですよね。 |
諏訪 |
これくらい大規模に
野菜作りの全てを収録したものは
これまで無かったと思います。
あっても2〜3品目くらいですし。
このDVDはまさしく世界初の商品です。
今、イギリスから問合せがいくつかきてまして
英語版の準備も進んでいます。 |
糸井 |
この仕事は
これまでやった仕事の中で
「オレの仕事を世界に通用させたい」
と、生意気なこと言ってやった
仕事ナンバーワンですよ。
そんなこと、絶対、言わないじゃないですか(笑)。
だけど、これに関してはね、
それこそショッカーのような気持ちで
世界征服を目指してもいいんじゃないか
と思っているんです(笑)。 |
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(つづく) |