諏訪 |
「おいしさのつくり方」という本を
書いたこともあって
永田農法に関する質問が届くのですけど
肥料はどこで手に入れたらいんだとか
という基礎的なものに混じって
「水やりは1週間に1回って書いてますが
にんじんの場合には、
最後の収穫の何日前まであげたらいいんですか」
というような具体的な数字を
聞いてくる質問があんがい多いんですね。
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糸井 |
なるほど。
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諏訪 |
今回の「しつもんチケット」への
お答えもそうしていこうと思うのですが
「にんじんだったらこうなります。」
と具体的にお答えはしますが
必ずそこに
「あなたの畑や土壌や天候。
つまり、その年にゆらぐものです。
今回、お答えするのは
あくまでも、基準値であって
この通りやっても、
あなたの畑では違う結果がでることも
逆に思わぬ大収穫になることもある。
そういう部分も楽しむ商品なんですよ」
と、書いてお返事をしています。
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糸井 |
料理もそっくりだよね。
そのときの白菜の味が違えば、
もう鍋の味が違うし
カレーを作るのがおもしろいのは、
その都度、失敗するからですよ。
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諏訪 |
うんうん。
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糸井 |
ほんとに成功したカレーって
思えば一度もないんですけど
カレーはおいしいんですよ。
だけど、心の奥では
「これは違う」と思う。
まだ天井さわってない感じがするから
また作りたくなる。
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諏訪 |
ぼくも野菜作りを15年やってますが
ぜんぜん、満足感がなくて、
もっともっとうまくなるはずだと思うし。
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糸井 |
うれしさはあるんですよね。
にこにこしながら、ちがう!って(笑)。
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諏訪 |
そうなんですよね。
全然うれしくなかったら、
さじなげてやめちゃうんですけど、
たしかに満足感があるんですよ。
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糸井 |
イッセー尾形さんのひとり芝居の中に、
河川敷で家庭菜園でやるコントがあるんです。
あれを見たときに、
ああ、そんな時代になったんだって思って。
思えば、イッセー尾形さんの稽古場が
多摩川べりにあるから
それを見てたんだなぁと思ってね。
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諏訪 |
電車に乗って車窓を見ると
川だけじゃなくて、
線路の横におそらく
JRとか鉄道会社が持ってる
微妙な土地があるんですよ。
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糸井 |
微妙な(笑)。
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諏訪 |
間違いなく鉄道会社のもちものなんですけど、
ようするに線路脇が菜園になっているんです。
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糸井 |
基本的には坂ですよね。
坂って、ぜったいおいしいものができやすいんですよ。
水はけも日当たりもいいし。
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諏訪 |
特に永田農法の原理から言うと
そうですからね。
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糸井 |
オレ、あの坂が、
このDVDの狙い目だと思ってるんですよ。
昔、河原に自然に育っていた菜の花を摘んで
食べたことがあったんだけど、
今までの人生で一番おいしい菜の花だったの。
また採りに行こうって
何回も言ったくらいうまかった。
その後に、永田農法知ったんですよ。
斜面で、砂地で、誰も肥料をあげないところで、
日当たりがよくて、河原で風がふいて、
寒暖の差がある。
たまたま最高の条件が整っていたんだけど
仕事には絶対にしない場所ですよ。
あれが、このジャンルのおもしろさだなって。
広大な広い土地って言ったら、
みんな北海道思い出すけど、
これは非北海道のものですよね。
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諏訪 |
北海道の余市で栽培されている
永田野菜のトマトが一番好きなんですけど
あの畑も日本海に面した斜面ですよね。
うちの畑も真っ平らなものと斜面があるんですが
永田先生に相談すると
斜面の畑をおすすめされたんです。
実際に両方で永田農法で作っても
斜面の方が野菜の出来がいいんです。
これは永田農法に限らずだけど
斜面の方が水はけがいいし
冬でも土が凍らないですから。
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糸井 |
商売にするには、
仕事が大変になるし、
たくさん採れないから
きっとみんな避けちゃうんですよね。
だから、ほんとに趣味としての農業だったら
斜面につくって育てるくらいの人が、
これからの時代は出てくる可能性がありますよね。
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諏訪 |
そういえば、斜面に、
区画がいっぱいあるような
市民農園って
今まで一回もないですね。
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糸井 |
土地としては、最悪の場所でしょ。
昔の枝豆がおいしかったのって、
どうでもいい斜面やあぜ道に
タネを蒔いたからであって
ここは誰もやらないんだよねっていう場所を、
どういうふうに使うかということは
農業としては、道があると思うんです。
その流れで言うと、
学校のはじっこなんかも、
最高ですよね。
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