第8回 目指したのは永田農法をオープンソースにすること。

諏訪 このDVDは200日以上かけて撮りましたが
基本的に野菜を作ってるのは、
永田先生たちじゃないですか。
撮影班も毎日365日、
目を凝らして見張ってるわけじゃないから、
撮影してないところで
独特のことやってるんじゃないか
ということもあるわけで。
糸井 「ここでハエをとばしたんです」みたいな。
でも、諏訪さんは
よっぽどの秘密以外は
永田先生の代弁ができますよね。
諏訪 そうですね。
永田先生に出会ってから2年間、
先生の所に通いましたし
DVDを作りながら
自分でも永田農法で試したので
ベーシックなところは一通り覚えました。
糸井 この仕事を始める前に永田先生に
「ノウハウは全てください。
 特許があることかもしれないけど
 永田農法をオープンソースにしましょう」
という提案をしたんです。
そこで大転換が行なわれた。
つまり、
「あなた特許を侵害したね!」
と指さしに来ないということで
これを作ったのだから
先生にとっても大転換だったはずです。
諏訪 最初は先生も
あまり詳しく教えてくれなかったので
そこはグイグイ引っ張りだしました。
最初はとにかく液体肥料をあげるのは
1週間から10日に1度。
の一点張りだったです。
でも、どう見ても
3〜4日に1度あげている感じがするので
他のスタッフに
実際の作業はどうなってるのかを問いただすと
「ああ、あれは3日に1度ですよ」
と出てくる(笑)。
編集をしてナレーション原稿を作る段階で
「夏の収穫の一番忙しい時は
 1週間に1度とこだわらずに
 土が乾いたらあげてください」
となっているんですよ。
それが最後の砦でしたね。
糸井 (笑)
昔は研究者として
どれだけの情報の優位性をもって
仕事をしていこうかという
夢も野心もあったでしょうから
隠すことによって研究を発展させていったんですね。
だから、いっぱい特許もとってるし。
諏訪 そうですね。
今回、一番衝撃的だったのは
ケイ酸カルシウムの存在で。
去年、こぐれさんと番組を作っている時には
ケイ酸カルシウムの「ケ」の字も無かったのに、
ある時、現場のディレクターから電話がかかってきて
「諏訪さん、大変です!
 なんか、白い粉が撒かれてます!」と(笑)。
また他のスタッフに
「白い粉は何?」と聞くと
「ケイ酸カルシウムです。
 ずっと撒いてますよ。」というじゃないですか。
「何!全然違うじゃない」という話から
「先生、それはちゃんと説明しないとマズイですよ」
ということでDVDにも入ったですけど。
このケイ酸カルシウムがどこに売ってるのか?
という質問が非常に多く届いてます。
たぶん、今までやっている人にとっても
ケイ酸カルシウムというのは
馴染みがないでしょうから。
これはホームセンターとかで
簡単に手に入るものなんですけどね。
糸井 これはホントのオープンソースだね。
最終的には安い買い物なんじゃないかな。
諏訪 ええ。これまで野菜作りをされてた方は
それこそ秘伝が詰まってますから
放っておいても買ってくれると思うんですが
「野菜作りをやってみたかったけど
 きっかけが無かった」というような人に
ぜひ、買ってもらいたいですね。
自分も野菜作りを始める時に
すごく苦労したから。
そういう目線で作りましたし。
あとはやっぱり学校の先生ですね。
糸井 学校の先生はまさしくそうだね。
食品協会やレストランもそうだし、
食品流通に関わる人も
この知識を元に
間違いない仕入れができるしね。
諏訪 よく学校の花壇をみると
じゃがいもやさつまいもを植えているんですけど
よっぽど熱心な先生がいないかぎり
畑が荒れていたりするんです。
先生がこのDVDを観て
花壇で野菜作りを始めても
すごく簡単に結果が出ますから。
しかも、その野菜はとんでもなくおいしいですから。
そして野菜がこんなに旨いものなんだということに
気づいてもらいたい。
自分で作ることが本当に一番おいしいんですね。
野菜って収穫してから5分や10分で
味が変わっていっちゃうものなんです。
まずはそれをやってもらいたいですね。
生徒もびっくりするだろうし、
それまで知らなかった価値観や世界を
感じることができると思います。
糸井 あとは何かと「サラダを頼む人」だね(笑)。
よくいるじゃない?
「私、サラダでいいわ」という人。
そんな人はぜひだね。

<終わり>
2006-03-27-MON