「やさしくないタオル」、それは、
くさくて、水を吸わなくて、ゴワゴワのタオル。
前回までのレポートでは、においに焦点をあて、
「くさいタオル」のつくりかたについて、
取材と実験のようすを紹介いたしました。
結論はこうでした。
「くさいタオル、
それは誰もがつくってしまう可能性があるもの。
しかし、ていねいな洗濯と天日干しで、
やさしいタオルに復活させることができる!」
ということで、「くさい」については
ちょっと安心した、タオルチームです。
さて、今回は第2章。
「水を吸わないタオル」です。
![](images/ill_02.gif)
こんなことがありました。
乗組員の弥絵が訪れた、友人宅でのこと。
そのお宅では、お風呂場でも洗面所でも
「やさしいタオル」を使ってくださっているのですが、
手洗いで借りた「やさしいタオル」が、
どうにも吸水性に疑問があったのだそうです。
![](images/ill_10.gif)
「このタオル、水、はじくよね」と聞く、弥絵。
「そう? いつも、うちのタオルはそんな感じだよ?」
と友人は答えます。
「ずっとこうなの?」
「ずっとこうだよ」
「『やさしいタオル』は、もっと、水、吸うんだよ」
「そうなの?」
「最初、パッケージから出したとき、
水、吸ったでしょ?」
「わかんない。お洗濯してから使ったから」
「そっか。もしかして、柔軟剤、使ってる?」
「うん、柔軟剤使うよ。たっぷり使う。
いいにおいがして、ふわふわになるじゃない!」
「それだ!」
「えっ?!」
そのお宅では、食器用のリネン以外は、
わりとなんにでも柔軟剤を使うのが習慣で、
タオルにも、わりとたっぷりめに、
使っているそうなのでした。
この柔軟剤なのです。
「やさしいタオル」を
「やさしくないタオル」にしちゃっていたのは。
それはどういうことなのか、
綿のスペシャリスト、大窪裕美さんに、
ふたたび、登場ねがいましょう。
大窪さん、どういうことなんでしょう?
「柔軟剤や、柔軟剤の入った洗剤を使うと、
タオルの吸水性が下がります。
柔軟剤は、洗濯物の仕上がりを柔らかくして、
静電気を防止したり、
色落ちを防いだりしてくれる効果があるんですが、
それは、柔軟剤の主成分である
『陽イオン界面活性剤』が、
マイナスの電気を帯びた繊維の表面に吸着し、
結果として、ごく薄い膜が
繊維の表面を覆うことになるからなんです」
ふむ、ちょっとむずかしい話ですが、
イメージするとこういうことでしょうか。
![<イラスト:陽イオンが表面をおおっているような図>](images/ill_11.gif)
「そうですね(笑)。
この薄い膜があるために、
1本1本の繊維に、水が吸い込みにくくなる。
結果として、ふわふわして、つるつるしているけれど、
水を吸いにくいタオルになってしまうんです」
「やさしいタオル」は、その現象をふせぎ、
お届けしてすぐに使っていただけるように、
製品の仕上げに柔軟剤を使うことを、していません。
また、「柔軟剤や柔軟剤の入った洗剤のご使用は
おやめくださいね」とアナウンスしているのにも
そんな理由があるんです。
けれども「やさしいタオル」も、
洗濯の方法によっては、水を吸わない
「やさしくないタオル」なってしまいます。
では、一体、どれくらい吸水性が下がるのか、
その実験をしてみましょう。 |