糸井 |
永ちゃんがシナトラに感心したように、
実はオレも、老人の取材とかばっかりしてるの。 |
矢沢 |
へぇー。 |
糸井 |
今度9月にたぶん講演をやるんだけど、
老人ばかりを5人集めて、
「ドント・トラスト・アンダー・エイティ」
っていうのを、やろうと思ってるの。
「80歳以下の人間は信じるな」と。 |
矢沢 |
(笑)オレ、そういう考え方は、
これから、モノを言ってくると思うよ……。
ちょっと、話は逸れるかもしれないけど、
よく、思うことがあるんだ。
なんで、日本の中年のおじさんって
かっこわるい?
なんか、かっこわるいんだよ。
ある人に聞いたら、
日本人の男も女も「若い子は好きだ」と。
これはカルチャーなのか、国民性なのか、
とにかく、なんか、そういうのが、あってさ。 |
糸井 |
「初モノ好き」とかね。 |
矢沢 |
若い女の子とセックスしたいとか、
つきあいたいとか……そりゃ、わかるけど。 |
糸井 |
うん、動物としてはね。 |
矢沢 |
うん。
動物的な部分は、それはそれでいいじゃん。
……だけど、
動物的な部分にプラスして、
われわれは、考えたり、感情があったり、
メモリーがあったりするわけだ。
そしたら、
「どうしても、もう離れられないモノ」
「切なすぎて、たまんねぇよってモノ」
とか、そういうのが、絶対にあるよね。
その魅力が、なぜ、日本にはないのか。
テレビ番組を見ても、
雑誌の記事見ても、何見ても、
「もう、若さは、いいんじゃないか?」と。
若い子は、若い子で、やりゃあいいじゃない。
ビジネスになって儲かるから、
あんなもん、雑誌なんて作るんだろうし、
テレビも、若さについての番組を、
ボンボンボンボン垂れ流していくかもしれない。
でも、それは、まあ、いいのよ。
それは勝手に、そっちの方でやってよ。
だけど、その一方で、どこかのところで、
今の「80歳以下は信じるな」じゃないけど、
「言いたいことを、はっきり言いきるよ」
「ちょっとオレは、格好つけきるよ」
「最後まで走りきるよ」
そういうヤツらが、
何人か、ジワジワと出てくるわけ。
ロンドンのティー・サロンなんか行くと、
会員制で、子どもなんか、入れない。
おじさんたちがワイワイ集まって、
昼間っから、ティーを飲んでるわけよ。
ふつうの人は入ってこれない。
日本の「会員制」って言うと、
またちょっと、違うじゃない? |
糸井 |
違うね。
日本の会員制は、
成金度に合わせてるから。 |
矢沢 |
そういう
成金度に合わせてじゃなくて、
ほんとに、そんな金も高くなくって、
そういうところの……気持ちの部分でさ、
「キミたち、大きくなったら来て。
おじさん、ちゃんと抱いてあげるから」
っていうような……わかるかなぁ? |
糸井 |
(笑)わかる。 |
矢沢 |
「もうちょっと
格好いいプライドが身についたら、
おじさんのところに来て。
ちゃんとやってあげるから」
ということを、ふつうに言うおじさんが
バンバン出てくるとか。
そういうのが、
ちょっとずつ出て来てもいいんじゃないの? |
糸井 |
いや、出てくると思うんだよ。 |
矢沢 |
いっぺんで全員がそこに行けなくても、
ちょっとそういうことを
言い切っちゃう、やり切っちゃう。
そういうおじさん、アリかもしれないよ。 |
糸井 |
永ちゃんがシナトラのように、
「あれはもう古いよ」って言われたものを聴いて、
あれは実は古くなかったと気づくだとか、
オレも年寄りだとかに興味を持っていたりとか……。
いつも、永ちゃんとたまに会うと、
別の道で、おんなじようなことを考えてるじゃない?
そういうことが、気になって気になって。 |
矢沢 |
もう実は、はじまってる。
他に、出しつくしちゃった後に何ができるか。
ファッションなんか見てよ。
裾が広がっているズボンは、昔は、
「ラッパ」「パンタロン」って言ったもんよ。
あれ、オレが中学校のころから、
少なくとも、4回はその時代が来たと思う。
でも、そのたびに名前がぜんぶ違うんだよ。
デザインは一緒なの。
だったら、おもしろさが
出て、出て、出尽くした時に、
「古い」とされている、
その「古い」って何なんだ? |
糸井 |
そう。
古いか、新しいかの、問題じゃないんだよ。 |
矢沢 |
うん。
たまたま、
時間は通り過ぎていくもので、
既にあったものを、
後ろに行かせなきゃいけない。
だから、便宜上、
「古い」って言ってるだけで。
どっちがいいとか、そんなはずはない。
「古い」「新しい」というのは、
誰が決めたんだよ、っていう話だよね。
|