矢沢 |
古いか、新しいか、ってのは、
便宜上、そう言われただけのことだと思う。
古い? 新しい? 関係ない。
彫刻とかオモチャとか民芸品とか、
何でも、そうじゃないの?
「職人」とか「名人芸」だとか、
今、改めて言われているからね。
「古い」「新しい」が関係ないなら、
言いきるヤツ、やりきるヤツ、
貫ききるヤツが、ほんとうは、
どれだけ豊かなことか……。
今の世の中の価値観でも、
もう、そういうことが、既に、
はじまっているのかもしれないよ。 |
糸井 |
うん、はじまってるね。
特に、景気の悪い時代っていうのは、
かならず、長老の知恵が必要になるんですよね。
乗りきんなきゃならないから。 |
矢沢 |
うん。 |
糸井 |
乗りきる時、
若いヤツに船長をやらせとくと、
「行くだけ行ってみよう!」
って言って、嵐にあって沈没するんだよ。 |
矢沢 |
(笑)ハハハ。絶対そうだよ。
こないだテレビで、面白いことやってた。
リストラ、リストラ、リストラでね、
どこの企業もさ、もう年寄りはいらねえって。
賃金が高いし、年取ってきたし、
どこでぶっ倒れるかわかんないし……
っていうことで、何か知らないけど、
年寄りをやめさせることが、モードになりすぎて。
考えもしないで、計算もリサーチもしないで、
「年寄りは切れ!」ってやる。
で、若いヤツを、
バンバンバンバン、入れるんだよ。
それで、今、何が起きているか。
ある意味、仕事の空洞化が起きてるんだって。
ずーっと見ててね、
「そりゃ、そうだ!」って思ったわけ。
オレたちも、新人入れるでしょ?
仕事、できねえんだよ。
できるわけ、ないじゃん。
ところが、前からいる50何歳の人。
もう今じゃ、リストラの対象になってるじゃん。
でも、ダテに50何歳、来たわけじゃないよね? |
糸井 |
うん。 |
矢沢 |
そりゃ、
仕事のことよく知ってるわ、
会社のことよく知ってるわ。
なのに、そいつら、
使いこみをしたわけでもないのに、
会社に反旗を翻したわけでもない、
裏切ったわけでもないのに、
「なんか知らんけど、
世の中がそうだから、もう年寄りはいいよ」
ってところに、
今、ぜんぜん行ってないとは
言い切れないじゃない? |
糸井 |
そうだね。 |
矢沢 |
行ってるだろ?
で、そいつらの会社が
新人入れるから、大卒の何とか入れるから、
とやる時、ほんとに計算してやってんのか。
盗っ人をやったから、
こいつら金を会社の金をちょろまかしたから
首切ったのかっていうならいい。
だけど、
ちゃんとした調べもなしに、やめさせる。
若いみなぎったエネルギーを入れる?
それも、計算をしないでやり過ぎて、
いま、会社に大問題が起きてるんだって。
あのね、
会社をコントロールする、
リーダーを取れる、
班長を取れるヤツがいなくなったんだって。 |
糸井 |
あぁ。
リーダーシップってのは、
カンタンには学べないからね。
うーん……。 |
矢沢 |
そうなのよ。
若人を入れるって、聞こえはいいけど、
運転できないヤツばっかり育っちゃったのよ。 |
糸井 |
「あそこに駐車場があるんですよ」って、
知らない人ばかりが、道路を走ってるんだ。 |
矢沢 |
みんな走ってんの。危ないよね。
だから、今のいろんな会社、危ないんだって。
管理職のいないこの感じ、わかる?
果たして、若いヤツばかりにしたところで、
会社が、若返っていってるのかってのには、
ちょっと、疑問なんだよ。 |
糸井 |
リーダーシップを取れる人がいない。
オレ、興味あるのは、
定年の後のおじいさんたちのほうなんです。
そっちのほうが、やる気あるじゃない?
仕事、したいんだもん。 |
矢沢 |
だから、これから会社の経営って……。
ちょっと今日、話が違うところ行くけどさ。 |
糸井 |
いや、すごくおもしろいよ。
どこか、永ちゃんが矢沢永吉を
プロデュースすることにも、つながってるし。 |
矢沢 |
うん。
経営の話だろうと、
音楽の話だろうと、趣味の話だろうと、
おじさんの「貫き度具合い」の話であろうと、
やっぱり、よく言ったもので、ちゃんと調べて、
自分自身が納得してるかどうかで進まないとね。 |
糸井 |
リサーチの時に重要なのは、価値観ですよね。 |
矢沢 |
そう。 |
糸井 |
ある価値観でリサーチをしないと、
「今すぐ稼ぐかどうか?」って考えだけだと、
体力のあるやつのところにいっちゃうから。
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