矢沢 |
ますますこれから、
メディアがどうのとか、何がどうのって、
惑わされちゃいけないと思う。
自分の足で立って、よく見て、
それでどう会社を進めるかを決める。
会社じゃなくてもいい。
自分はどう生きていくか、どう年を取っていくか、
そういうことは、これから絶対問われるよね。
まわりは、関係ないですよ。 |
糸井 |
永ちゃん自身が、
そういう会社のことを
強く意識するようになったのって、
何か、きっかけとかあるの?
……アメリカとか? |
矢沢 |
オーストラリア。 |
糸井 |
あぁ、大きいね。 |
矢沢 |
(笑)オレも、正直だけど。
やっぱり、オレにとって、
オーストラリアっていうのは、
人生の大ターニング・ポイントだから。 |
糸井 |
金額では言えないものだけど、
永ちゃん、モトを取ろうとしてるよね。 |
矢沢 |
うん、気持ちでね(笑)。
ま、それはジョークだけど。
まあ、自分も熟して、
だんだんやってる時に、
自分もいろいろ、世の中を感じるでしょ?
そんな時に、リーダーシップを
取れる人がいなくなっちゃった。
それをしたのは、他ならぬ会社自体なのよ。
それで、そのテレビを見てた時、
「あ、なるほどな。
これは一見、カンタンに言ってるけど、
今の日本の社会全体のことを言ってるな」
って思った。
だから、根拠もないのに若い人がいいって、
そんなバカなこと言うなっていうの。
さっきイトイが言った、
「80歳以下は信じるな」
ってことも、ひとつの話としてね、
それ的な価値観は、
もう、はじまってるかもわかんないって、
ぼくは思うよ。 |
糸井 |
うん、いい感じで、
「そんな些細なことは気にしないで」
って見えるようになっちゃった人の発言って、
若いヤツより過激だからね。
たとえば、高校生の時だったら、
振られたばっかりのともだちがいても、
一緒になって、同情しちゃうじゃないですか。
だけど、30歳や40歳になってから、
好きだった人に振られたって話を聞くと、
「そうか。
これから、何回も振られるよ。
あと、100回ぐらい、振られるよ」
そう言えるじゃない。
その「目」が要るんだよね。 |
矢沢 |
うん。
その目がなくして、なぜあなた、
集まってる集団の会社を、食わしていける?
食わしていけるわけがない。 |
糸井 |
「これからも、もっとまだ
でっかい失敗をしていくよ」
そう言ってくれる人が、いるかいないかで、
その場所の、何かが、変わるよね。 |
矢沢 |
うん。 |
糸井 |
酸いも甘いも噛み分けたみたいな……。
さっきの話、
永ちゃんの中で、シナトラが生きたんだ。 |
矢沢 |
ぼくは、実はフランク・シナトラの
エイジじゃないんだよね。 |
糸井 |
ぜんぜん、違うよね。 |
矢沢 |
エルビス・プレスリーでもなきゃ、
シナトラでもない。
ぼくはもう、れっきとしたビートルズなんです。 |
糸井 |
ビートルズだね、うん。 |
矢沢 |
シナトラたち、知らなかったの。
知らないから、ビートルズにハマって、
その後はクラプトンだなんだっていって。
わかりやすく言うと、
クラプトンの『アンプラグド』を見て、
語って、感じて、だから俺たちロックなんだよ、
みたいになってしまう。
そうすると、オレとしてはイヤで……。 |
糸井 |
それじゃ、生徒だよね。 |
矢沢 |
そう。
「なんか、新しいもんないか?」なんですよ。
「なんでこいつら、ロックと言ってるヤツは、
寄ってたかって、ジーンズはいてから、
みんなで同じようなことばかりやってんだ?」
それで探して、古いとされているものを見たい。
そういうのだったんだけど。 |
糸井 |
みんなが川で水を汲んでる時に、
泉まで行ってみたくなったって感じだよね。 |
矢沢 |
そう。
フランク・シナトラ、
ぼくはファンでも何でもないから、余計、
「かっちょいい!このおじさん!」と思ったよ。 |
糸井 |
クールに見られるわけだ。 |
矢沢 |
やっぱり、ニューヨークのショーをやってたのよ。
タキシードを、カーッと着てさ。 |
糸井 |
小っちゃい男なんだよね。 |
矢沢 |
うん。
それで、タバコをパカーッて吹かして。
格好いいの。
「なによこれ!」と思った。
エリック・クラプトン、もう問題にならない。
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