矢沢 |
古いとされているものには、
捉え方ひとつで、感じ方ひとつで、
カネが埋まってんのよ。
これ、音楽の話をしてるようだけど、
ノー、ノー、すべてに言えると思う。
ファッションだって、なんだってそうよ。
だから、イトイが老人の話をした時、
「その価値観、はじまってるかもわかんないよ」
って、ぼくは言ったんです。 |
糸井 |
そうだね。 |
矢沢 |
イトイが今言ったみたいなモノの見方をして、
どの世代でも、みんな、
言いきっちゃうようなワガママさが出てきたら、
ほんとの意味でのおもしろい時代、
日本の新しい時代が来るかもわかんないよ。 |
糸井 |
みんなで、横を見ながら
どれが正しいかを、選びあってるうちに
時間が過ぎてくって感じがあるじゃない?
その時に、
「いや、いろいろ選んでも、
どれでも、大丈夫なんだよ」
っていうような歩き方というか。 |
矢沢 |
うん。
まず、10代や20代がいて、
もう、チヤホヤされて、ちょっとやっぱり、
「自分たちは価値があるのかもしれない」
って錯覚をする。それはそれでオーケー。 |
糸井 |
オレたちも、小っちゃい時、思ってたよね。 |
矢沢 |
うん、思ってた。 |
糸井 |
「若さっていいな」(笑)って。 |
矢沢 |
うん。
だけど、その流れのどこかで、
「おまえらもイイね、最高!
……だけど、しょんべん臭いぞ」
そう言いきるヤツらが、
すこしずつ、出てきはじめて。
その若くないヤツらはそいつらで
「オレたちもけっこう、ハジけてるよ」
みたいなのが出てくる、って言うか。
40歳のヤツも自分たちでやる、
50歳のヤツもそうなる、その上に、
80歳ぐらいの、こんなになったジジイが、
「おまえらには、まだ、わかるまい」
って、けっこうバッチリ
そっちの世界を持てるようになったら、
すごくいいじゃん。理想かもしれないけど。 |
糸井 |
おもしろいなぁ、と思うのは、
おじいさんと孫って、仲がいいですよね。
いちばん若いヤツとおじいさんっていうのが、
オレは、くっつくと思ってるんです。
要するに、
「赤ちゃん性」を持ってるっていうか。
世間の、ちょっとした
つまらない知恵みたいなのを、
いっぱい知ってるかどうかなんか、
実は、どうだっていいじゃないですか。
ほんとうに
だいじなことを知ってるっていうのは、
ぜんぶやってきて、飽きちゃった人と、
これからで、何にも知らない人。
そこが、くっつくと思うんです。
だから、若いヤツとじいさん、
つまり、養老院と幼稚園は、
一緒にやるべきだと思うんだよね。 |
矢沢 |
それ、おもしろいね。 |
糸井 |
また、養老院と幼稚園のヤツらから
学んだ、まんなかあたりの年齢の人が、
「そうか!」と勇気を持って
実業をやればいいと思うんだよね。
だから、永ちゃんのお客さんの中でも、
「何?知らなかった!」
っていうくらい若いヤツが、
おじいさんを呼んでくるんじゃないかなぁ。 |
矢沢 |
なるほどね。
今日、なんか、ちょっと、
予想したのと違う話になったね。 |
糸井 |
うん。ぜんぜん違う。
『YAZAWA CLASSIC』DVD発売について
いろいろ、取材されている時期なのにねぇ。 |
矢沢 |
いや、でも、いい感じよ。 |
糸井 |
そう? よかった。 |
矢沢 |
うん、いい感じよ、おもしろい。 |
糸井 |
「ほぼ日」は、
今日は、プロデューサー矢沢と
話をするっていう日に決めていたからね。
どうしても、こういう話になる。 |
矢沢 |
(笑)ハハハ。 |
糸井 |
もう、歌手としては
いっぱいしゃべってるからね。
実はその、めんどくさい男じゃないですか、
歌手の矢沢は。 |
矢沢 |
(笑) |
糸井 |
それをさ、
「おまえな」って言いくるめてるヤツが、
もうひとり、自分の中にいるわけじゃない? |
矢沢 |
(笑)もうひとり。抑えてるヤツが。 |
糸井 |
うん。
抑えたり、もっとやれって言ったり。
プロデューサーのほうが
過激になる時、あるからね。
さっきの、
積み残したトラックでも走る、みたいな、
アコースティックライブの展開は、明らかに、
プロデューサー矢沢の方が、乱暴だよね……。
歌手の方は、
「オレ、イヤだよ!」
って言ったかもしれないよ? |
矢沢 |
ほんとだね。 |
糸井 |
そういう話を、今日は
どんどん聞いていきます。
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