矢沢永吉の開けた新しいドア。
「ほぼ日」特別インタビュー2003。

第12回 よく消されなかったよね

矢沢 イトイ新聞がうまくいくようになってきて、
だんだん、あんまりこう、
イヤな思いをさせるやつがいなくなってきた?
糸井 いなくなってきた。
矢沢 ずるいよなぁ……!
そんなもんよ。
糸井 そうだよねぇ。
矢沢 業界のなんとかかんとかが、
アヤつけただ、つけないだって、
よくあるけど……。

そいつらは、こっちにチカラがつくと、
もう、一斉に引くよね。

そりゃ引くよ。
反撃される可能性があるもん。
人は、だから……。
糸井 いやらしいよね。
矢沢 いやらしいよ。
糸井 いやらしいよねぇ。
矢沢 だから、逆に俺は言うよ。
イトイ新聞がここまできたら、余計、
引っかけて来いっていうんだよ。
ところが、みんなは、そこまで度胸がない。

「自分がやられる」
と思ったら、誰もアヤをつけてこないんですよ。

オレも、出る杭は打たれるで、
この業界には、どれだけ、アンチ矢沢がいたか。
今、いないもんね。
糸井 芸能界じゃないところに
芸能エンターテイメントを立てるって、
昔は、ありえなかったから……。

でも、日本の芸能界が壊せないと思ったら、
もう1個、「矢沢芸能界」を作ったっていうのは、
永ちゃんの、これは「発明」に近いよね。
矢沢 (笑)矢沢芸能界。
それは、いい表現するなぁ。
たしかに、自分で作ったけど。

イトイもそうじゃん。
イトイ新聞の50万アクセスはスゴイ。
糸井 いや、タダでやってることだからさ(笑)。
矢沢 いや、それがスゴイと思うんだよ。
前、イトイに訊いたじゃん。
「なんでそれ、アクセス料、取らないの?」
そしたら、
「いや、永ちゃん、取っちゃいけないんだよ」
そう言ったときに、なるほど、そこに
イトイの「ホンモノさ」を見たね、ぼくは。


やっぱり、取っちゃいけないんだ。
糸井 (笑)
矢沢 今、振りかえると、
オレもイトイも、よく消されなかったよね。
糸井 消そうとしてたのに気づかないで、
何かモノを拾ったら、
急にピストルの弾が上通ったみたいな……。
そういうの、あったんだと思うよ。
矢沢 うん、かなりあったと思う。
オレ、噂、聞くもん。
糸井 本人、知らなかっただけ、
っていうことなんじゃないかなぁ。
矢沢 オレのことを消したかったヤツ、
いっぱいいたと思うよ。
あの頃、ラジオ出ちゃ、テレビ出ちゃ、
時のナベプロとかなんとか、
ボロカス言ってたんだもん。
よく、うしろから刺されなかったと思うよね。
糸井 言われた方も、
「ちょっとお行儀悪いヤツですねぇー」
ぐらいのことは、もう絶対、思ってたよね。
矢沢 思われまくってたんじゃない?
糸井 「邪魔かもしれないですよねー」
とも、言いますよね、当然。
矢沢 だから、よく消されなかったよね。
ひとつオレが思い当たる節としては、
矢沢に、手を出せなかったんじゃないかなぁ。

なぜかって言ったら、
矢沢のタチの悪いファンが、
イメージ的には守ったかもしれないよね。
糸井 それも、あるね。
矢沢 あるよ。
前、とんねるずの貴明が冗談で、
パロディーを、ちょっとやり過ぎたのね。
冗談なんだ。貴明って矢沢の大ファンだから。

でも、フジテレビに、電話殺到だもんね。
脅しの電話。
「番組ごとツブしてやるぞ、オマエ」
っていう電話が、全国から、ブワーッよ。
糸井 永ちゃんは、当てにしてないのに。
矢沢 当てにするはずないよ。
言われてはじめて知るぐらいだもん。
糸井 うん、そこが、やっぱり‥‥。
矢沢 今から15〜6年前なんて、もう、
特攻隊みたいなやつばっかだからさ。
糸井 そうだね。
矢沢 だから、今思えば、
消したくても消せなかったヤツがいるんだよね。
糸井 いろんなことが掛け算になって、
セーフみたいに。
矢沢 ギリギリのところでセーフになっていった。

(つづきます!)

2003-06-23-MON


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