糸井 |
永ちゃんって、電卓は持ってるの? |
矢沢 |
電卓?
なんで?
そんなん、持ってるに決まってるじゃない。 |
糸井 |
そうか……。
オレね、電卓を、
「すっごいもんだ」って最近思ってんのよ。
あれ、電卓1個あるだけで、
世の中違って見える瞬間があるんだよね。 |
矢沢 |
どういう意味で? |
糸井 |
あのね、例えば、
「これをこうしたら損しちゃいますよね」
って、みんなが常識的に思ってることが、
あるじゃない? |
矢沢 |
うんうん。 |
糸井 |
それを、ちゃんと電卓で、
「だとしたら、こうして……。
みんなが喜んで損しない方法が、
あるじゃない?」
とか、そういうヤツが。 |
矢沢 |
はいはい、わかるわかる。 |
糸井 |
今は損なんだけど、大したことないから、
いけるじゃない、とか……。
気前よくなるんだよ、電卓があったほうが。 |
矢沢 |
計算ってのは、おもしろいやつでさ。 |
糸井 |
おもしろいねぇ。 |
矢沢 |
うん。
たとえば利益っていう話を
ひとつとってみても複雑でね。
目の前に見える利益と……。 |
糸井 |
そうそう! |
矢沢 |
ふつうの利益と、含み利益と、
今はなくても先の方で返ってくる利益と。
利益でも、3つあるんだよなぁ。
そういうふうにものを見るとさ、
人生って深いなぁ、と思ったりするよね。 |
糸井 |
うん、深い。 |
矢沢 |
だから昔の人は、いいこと言ったもんで、
「損して得取れ」、よく言ったもんだよね。 |
糸井 |
電卓を、得するために使う人は
いっぱいいるんだけど、
ソンを平気にするために使うっていう
電卓があるのは、大人になってからわかった。 |
矢沢 |
ひょっとしたら、
日本の社会は、昔の人が残してくれた
「損して得取れ」って言葉が、
おろそかになってきているところがある。
だから、みんなギトギトしてるでしょ。
わかる?
ギトギトしてるから、直接的になるでしょ。
全部が直接、直接、直接だから、
情緒が、なくなってくるのよ。 |
糸井 |
つまんないの。
ヤセガマンもないしさ。 |
矢沢 |
ない。
ヤセガマンも……ヤセガマンって、いいよね。 |
糸井 |
うん、いいよ(笑)。 |
矢沢 |
やっぱり、ヤセガマンって、ステキだよ。
ヤセガマンって、かわいいし、情緒だと思う。 |
糸井 |
ああ。
だから、ふくらみを感じると思うんで。 |
矢沢 |
ヤセガマンには、色も感じる。 |
糸井 |
そういうふくらみどうしで、
つきあうようになるわけですよ、お互いに。 |
矢沢 |
そうなってくると、
ひとくちに利益と言っても、
ここにもあれば、そこにもある、
含みもあるし、ヤセガマンにもあるんだ、
っていうことをやると、人間ってもっとこう、
ふくよかになってくる感じがするよねぇ……。 |
糸井 |
うん。 |
矢沢 |
だから、それが今、だんだんだんだん、
全部が、具体的に直接的に、ポンポンってきてるから。 |
糸井 |
デジタルだよね。
ヤセガマンのすすめだね。 |
矢沢 |
こういう話、糸井とさせるとやばいよね。
ヤセガマンのスズメ? |
糸井 |
いや、ススメ(笑)。
|