糸井 |
横尾さん、こんにちは。 |
横尾 |
あ、イトイさん。
広いところだねー。 |
糸井 |
ここ、あたらしい事務所なんです。 |
横尾 |
ニューヨークのロフトみたい。
かっこいいね。 |
糸井 |
横尾さんがいいって言ったら安心だ。
・・・今日は、来ていただいて
ありがとうございます。 |
横尾 |
これ、富山の美術館のために
つくったカタログなんだけど。 |
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糸井 |
カタログが、こんなに立派なんですか? |
横尾 |
まあ、そうねぇ。
まあその・・・
カタログの予算、ぜんぶつかってしまって、
部数が少なくなってしまって(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
横尾 |
2000部くらい作らなきゃいけないのにさ、
これにお金をかけてしまったおかげで、
「何百部」みたいになっちゃって(笑)。 |
糸井 |
(笑)そういうのが、いいなぁ。 |
横尾 |
フフフ。 |
糸井 |
あはははは。 |
横尾 |
(予算が限られていることを)
言ってくれないからさぁ、最初に。
言われたのかもしれないけど、
すぐ忘れちゃう。 |
糸井 |
(笑)それにしても、
これ、値段かかってますよねえ。 |
横尾 |
かかってますよ。
いつも、ソフトカバーのやつを
つくってたんです。でも、
「そんなん、おもしろくない」
って言って、勝手につくろうと思って。 |
糸井 |
(笑)いいなぁ、アーティストは。 |
横尾 |
ワガママだから? |
糸井 |
いやあ、こういうの、
やりたいじゃないですか、みんな(笑)。 |
横尾 |
これは、ポスターと絵を、
年代順に、初期(1960年代)から並べて。
もっとあるんだけどね、一部です。
あとでゆっくり見てください。 |
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糸井 |
(カタログを見ながら)
これだけたくさん仕事をする画家って、
ちょっと、いないですよねえ(笑)。
・・・いるのかなぁ? |
横尾 |
知らないけど。
みんな、絵を描くの、遅いみたいね。 |
糸井 |
ああ、そうか。
手離れが悪いというか。 |
横尾 |
時間がかかってしょうがないんじゃない?
ぼくは、速いからさ。 |
糸井 |
描いちゃった絵、そのものは、
美術館をまわってるんですか? |
横尾 |
いや、だいたい、うちにあるのよ。
(★金魚と横尾さんの写真:後送)
(金魚を見て)
・・・あ、この金魚、
エサあげると、とりあいするの? |
糸井 |
人がとおると、
何かもらえると思って来るんですけど、
キリがないんです。 |
横尾 |
へー。あげればあげるほど来るんだ。 |
糸井 |
だから、エサのあげすぎが、いちばん危険で。
子犬なんかが、いつも欲しがるじゃないですか。
あれなんかに、近いですね。
だいたい、人間がいるところにあつまる。
(エサをあげる) |
横尾 |
おぉ、いったいった、食いついた(笑)。
・・・大きいの、あれはニブいね。
「待っていれば、俺だけ特別なやつがもらえる」
とか、思ってるのかしら。 |
糸井 |
(笑)ははは。
ま、こんなところにしておかないと、
食べ過ぎになっちゃうので、やめときます。 |
横尾 |
イワシなんかがそうだけど、
誰かがリーダーっていうわけじゃなくて、
みんながひとかたまりになって、
バーッと、行動するじゃないですか。
あれって誰かリーダーがいるかというと、
そうでもないねぇ。 |
糸井 |
らしいですね。 |
横尾 |
水族館で見てるとよくわかる。
一斉に、おなじ瞬間に、ダーッと移動するからさ。
集合無意識だね。
個人じゃなくって、団体の一部になるのかなあ。 |
糸井 |
雁が、群れになって飛んでるじゃないですか。
あれも3つくらいしか約束事がないんだけど、
それでもあのカタチになるらしいですね。
横尾さんとこ、
何か生きもの買ってましたよね? |
横尾 |
メダカ。 |
糸井 |
どうですか、メダカは。 |
横尾 |
あのさ、
30匹いたんだけど、今、2匹になっちゃった。
だけど、とも食いなのかなんなのか
わからないんだけど、とにかく
死骸がいっさいないのね。
ふつうは、たぶん
死骸が浮いたり沈んだりするじゃない?
それが一度も見たことないんだ。
水を換えるたびに、数が減っていくわけ。
藻か何かにくっついていったかというと、
そうでもないようなのね。
ただ、こないだね、いっせいに
画面が、いや、画面じゃないや(笑)、
水槽が、いっせいに真っ白になったの。 |
糸井 |
画面(笑) |
横尾 |
5匹いたのに、真っ白になると同時に、
いきなりそこで3匹死んじゃって、
慌てて水をあけて、
2匹だけ救いだしたんだけどね。
どうもそれはタマゴを産んだらしいんのね。
それで精子がワーッと飛び散ったらしいんだけど、
ぼくそれ知らないで、
そのまんまタマゴを捨ててしまったらしいの。
だから、ほんとに2匹だけになっちゃった。
5、6匹いる時は、
お互いを無視して泳いでるみたいだったけど、
2匹だけになると、いつも行動が一緒なの。
それもまたおもしろいなぁと思った。 |
糸井 |
何か、生きものがいないと、さびしいですよね。 |
横尾 |
そう。 |
(のんびりした会話のまま、つづきます)