糸井 |
あ、そうだ。
「遺影」ってありますよね?
あれって、死ぬ準備をしている人以外は、
不本意な写真なわけですよ(笑)。
遺影を描いたら、いいなあと思う。
「俺は、これでいくから」って。 |
横尾 |
ぼくねえ、遺影を毎年撮ってもらおうと思って、
写真家の人に1回撮ってもらったことがあるの。
そしたらその人が、
「縁起でもないから、やめましょうよぉ」って。
1回でおわっちゃったけど。 |
糸井 |
(笑) |
横尾 |
ぼくはねぇ、毎年やりたい。
今年死んだらこれ。来年はこれ。
「いかにも遺影ですよっていう風に
撮ってください」
と頼んどいたんだけど。 |
糸井 |
横尾さんが描いたらいいですよ。 |
横尾 |
昔、紋付きとハカマを着せて、
粉で描いていたんですよ。
もう、写真のようにね・・・。
気持ちのわるーいやつを。
いかにも「霊界からお呼び」みたいな感じの。 |
糸井 |
あははは(笑)。 |
横尾 |
だから、遺影は興味あるんですよ。 |
糸井 |
ぼくのイナカで、
ちっちゃい本屋があって、
そこの夫婦がすっごいケチだったの。
それで、ケチなばあさんが
洗濯機使わずにタライで洗濯してたんですよ。
ケチだから。洗濯機買わずに。
そうしたら、
タライのなかでおぼれ死んじゃった。 |
横尾 |
ふふ。 |
糸井 |
ケチなんで、写真がないんですよ。
遺影になりそうなものがひとつもない。
どうしたかっていうと・・・。
死んでから写真撮って、
葬式の写真が死んでからのもので。 |
横尾 |
そりゃすごい。 |
糸井 |
ぼくは現場にいなかったので、
見ていないんですが、見た人は
「あの写真だきゃあ、ひどい」って。
その時から、ぼくは
遺影というものには、ずっと・・・。 |
横尾 |
そりゃ、イエーィ、だね。
ははは。 |
糸井 |
(笑)ほんとにそうですよ。
高校生かそのくらいの、若い時ながらに、
「俺、遺影、どうしよう」
って思ったもん。
葬式用のほうが、いい。 |
横尾 |
魂こめられるよね。 |
糸井 |
横尾さんが
「遺影を描いてほしい人」
を募集して描いていくのもいいね。
どんな風に描いても、遺影は遺影で。 |
横尾 |
そうだね。
対象が様式を決めるんだから、
どうなってもいいよね。
「おまえの場合は、どうしても点描画だ」とか、
「あなたの場合はキュビズムになる」とか(笑)。 |
糸井 |
ははは。
横尾さんの速度の速さって、
なんか、何でもできるんですよね。 |
横尾 |
今度ぼくは原美術館で、
秋にY字路、っていうテーマで。
夜のY字路ばっかり描いたものをやるんですけど。 |
糸井 |
(笑)やなテーマ選んだなぁ。
わはははは。 |
横尾 |
それは、道がずうっと続いてて、
空と地面がひとつに溶けあうぐらい、
だからもう、真っ暗なんですよ。 |
糸井 |
はははは(笑)。 |
横尾 |
人もいないで、シーンとしてるの。 |
糸井 |
やなもんだなぁ(笑)。 |
横尾 |
それのシリーズの展覧会をやるの。
岐路に立たされて、
どっちに行っても先は真っ暗闇、っていう。
ふふふふふ(笑)。 |
糸井 |
いまみたいな話を例えばほぼ日に載せると、
読んでくれる人、
アートの見方が変わりますよね? |
横尾 |
そこは、アートの見方は変えたいんです。 |
糸井 |
それを載せたところで
ひながたができますので、
ときどき、ぼくが横尾さんのところに
お邪魔してもいいし、
こちらに来ていただいてもいいし、
それ、やりましょうか。 |
横尾 |
ここのスペースで、ぼくが絵を描いちゃうとか。
ふふふ。 |
糸井 |
もちろん、いいですよ。 |
横尾 |
けっこう大きな絵を描いちゃおうかなあ。
ここにいる人に「邪魔だよ」とか
「静かにしろ」とか言われながら(笑)。 |
糸井 |
ハハハハ。 |
横尾 |
ぼくは、人が何人いて、
ワーワーしゃべっていようが、
ぜんぜん構わない。
そのほうが、むしろいいの。 |
糸井 |
それ、横尾さん、近々にやりませんか。 |
横尾 |
やりましょうか。
じゃあ、原美術館に出展する作品を
ひとつ描かせてもらおうかなぁ。 |
糸井 |
うわあ。 |
横尾 |
ぜんぜん、場所もいらないし、
敷きもの敷いて、
いや、絵の具飛ばしたりしませんから(笑)。 |
糸井 |
(笑)いやぁ、
そのへんはだいじょうぶです。
動画で流してもいいし、
おもしろいですよ。
この企画、バカらしくていいですね。 |
横尾 |
やるとしたら、10月がいいなぁ。 |
糸井 |
できたら、やりましょう。
おもしろいなぁーっ。
(横尾さんの次の登場を、お楽しみに!)
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