横尾さんのインターネット。
横尾忠則さんが相談があるって?

第11回 ぼく、ここで描きますよ。


糸井 あ、そうだ。
「遺影」ってありますよね?
あれって、死ぬ準備をしている人以外は、
不本意な写真なわけですよ(笑)。
遺影を描いたら、いいなあと思う。
「俺は、これでいくから」って。
横尾 ぼくねえ、遺影を毎年撮ってもらおうと思って、
写真家の人に1回撮ってもらったことがあるの。
そしたらその人が、
「縁起でもないから、やめましょうよぉ」って。
1回でおわっちゃったけど。
糸井 (笑)
横尾 ぼくはねぇ、毎年やりたい。
今年死んだらこれ。来年はこれ。
「いかにも遺影ですよっていう風に
 撮ってください」
と頼んどいたんだけど。
糸井 横尾さんが描いたらいいですよ。
横尾 昔、紋付きとハカマを着せて、
粉で描いていたんですよ。
もう、写真のようにね・・・。
気持ちのわるーいやつを。
いかにも「霊界からお呼び」みたいな感じの。
糸井 あははは(笑)。
横尾 だから、遺影は興味あるんですよ。
糸井 ぼくのイナカで、
ちっちゃい本屋があって、
そこの夫婦がすっごいケチだったの。
それで、ケチなばあさんが
洗濯機使わずにタライで洗濯してたんですよ。
ケチだから。洗濯機買わずに。
そうしたら、
タライのなかでおぼれ死んじゃった。
横尾 ふふ。
糸井 ケチなんで、写真がないんですよ。
遺影になりそうなものがひとつもない。
どうしたかっていうと・・・。
死んでから写真撮って、
葬式の写真が死んでからのもので。
横尾 そりゃすごい。
糸井 ぼくは現場にいなかったので、
見ていないんですが、見た人は
「あの写真だきゃあ、ひどい」って。
その時から、ぼくは
遺影というものには、ずっと・・・。
横尾 そりゃ、イエーィ、だね。
ははは。
糸井 (笑)ほんとにそうですよ。
高校生かそのくらいの、若い時ながらに、
「俺、遺影、どうしよう」
って思ったもん。
葬式用のほうが、いい。
横尾 魂こめられるよね。
糸井 横尾さんが
「遺影を描いてほしい人」
を募集して描いていくのもいいね。
どんな風に描いても、遺影は遺影で。
横尾 そうだね。
対象が様式を決めるんだから、
どうなってもいいよね。
「おまえの場合は、どうしても点描画だ」とか、
「あなたの場合はキュビズムになる」とか(笑)。
糸井 ははは。
横尾さんの速度の速さって、
なんか、何でもできるんですよね。
横尾 今度ぼくは原美術館で、
秋にY字路、っていうテーマで。
夜のY字路ばっかり描いたものをやるんですけど。
糸井 (笑)やなテーマ選んだなぁ。
わはははは。
横尾 それは、道がずうっと続いてて、
空と地面がひとつに溶けあうぐらい、
だからもう、真っ暗なんですよ。
糸井 はははは(笑)。
横尾 人もいないで、シーンとしてるの。
糸井 やなもんだなぁ(笑)。
横尾 それのシリーズの展覧会をやるの。
岐路に立たされて、
どっちに行っても先は真っ暗闇、っていう。
ふふふふふ(笑)。
糸井 いまみたいな話を例えばほぼ日に載せると、
読んでくれる人、
アートの見方が変わりますよね?
横尾 そこは、アートの見方は変えたいんです。
糸井 それを載せたところで
ひながたができますので、
ときどき、ぼくが横尾さんのところに
お邪魔してもいいし、
こちらに来ていただいてもいいし、
それ、やりましょうか。
横尾 ここのスペースで、ぼくが絵を描いちゃうとか。
ふふふ。
糸井 もちろん、いいですよ。
横尾 けっこう大きな絵を描いちゃおうかなあ。
ここにいる人に「邪魔だよ」とか
「静かにしろ」とか言われながら(笑)。
糸井 ハハハハ。
横尾 ぼくは、人が何人いて、
ワーワーしゃべっていようが、
ぜんぜん構わない。
そのほうが、むしろいいの。
糸井 それ、横尾さん、近々にやりませんか。
横尾 やりましょうか。
じゃあ、原美術館に出展する作品を
ひとつ描かせてもらおうかなぁ。
糸井 うわあ。
横尾 ぜんぜん、場所もいらないし、
敷きもの敷いて、
いや、絵の具飛ばしたりしませんから(笑)。
糸井 (笑)いやぁ、
そのへんはだいじょうぶです。

動画で流してもいいし、
おもしろいですよ。
この企画、バカらしくていいですね。
横尾 やるとしたら、10月がいいなぁ。
糸井 できたら、やりましょう。
おもしろいなぁーっ。


(横尾さんの次の登場を、お楽しみに!)

2001-10-28-SUN


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