糸井 |
あ!! |
横尾 |
なによ? |
糸井 |
横尾さん、これ、
ぼくがはじめて買った絵なんです。
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横尾 |
あ、そうなんだ。へー!!
でもなんで、この絵にしたの? |
糸井 |
ぼくにとって横尾さんはやっぱり「スター」だから、
本人が描かれたものを
どうしても買いたくなったんです。
いまはぼくの手元にはないんですけれど。
数奇な運命の絵で(笑)。
これ、英(えい)君ですね。そして、美々(みみ)ちゃん。
横尾さんのご家族4人を描いたポートレートです。 |
横尾 |
これは、何年ぐらいに描いたものかな? |
糸井 |
そんなに昔じゃないと思いますよ。
きっと70年代ですよね。 |
横尾 |
えっとね、74年と書いてあるね。 |
糸井 |
74年かぁ。
ぼくこれを伊勢丹で買ったんですよ。 |
横尾 |
あっ、そうなの? へぇ。
いくらで? |
糸井 |
6万円かな? |
横尾 |
あ、ほんと。 |
糸井 |
作家っていうのは、あんまり
自分の絵がどうやって売れているのかを
直接は知らないんですよね。 |
横尾 |
わかんないね。 |
糸井 |
あ、これ、横尾さんは似てないけど、
奥さんは似てる。
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横尾 |
最初はね、ウチのカミさんじゃなくて、
原節子を描いてたの。 |
糸井 |
原節子を!
でもこれは明らかに、奥さんですよね。 |
横尾 |
うん。
ぼくはインディアンみたいな顔してるよね。 |
糸井 |
インディアンというよりも、
矢吹申彦みたいですよね。
『ニュー・ミュージック・マガジン』(笑)。 |
横尾 |
ハハハ。 |
糸井 |
自分描くときって、
なんだかちょっと手を抜いたりします? |
横尾 |
う〜ん。 |
糸井 |
しつこさがないような気がするんだけど(笑)。 |
横尾 |
そう言われるとそうだね。
やっぱり照れちゃうのかしらね。
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糸井 |
そういうの、
あるんですかね。 |
横尾 |
だんだん美化していこうとするんだろうね。 |
糸井 |
だから、筆を止めるのが早いんでしょうね。
マンガ家が描く自分って、
すっごくブサイクかハンサムか、
どっちかでしょう。 |
横尾 |
そうね。 |
糸井 |
ちょうどいいところで描く人、
いないですよね。
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横尾 |
自画像はそういう意味ではむずかしいんだよねぇ。
つぎは、三島由紀夫さんの部屋なんです。 |
糸井 |
すごいな。三島さんだけで
ひとつの部屋ができるんですね。
横尾さんは三島さんを、こんなに描いてたんですね。 |
横尾 |
うーん、こんなんじゃきかないかもわかんないね。
まだまだあるはずだよ。
シリーズのつもりで描いたわけじゃないんだけれども、
もっとありますよ、たくさん。 |
糸井 |
これは、何ですか?
あの・・・孫悟空みたいな
めーずらしい方々が(笑)。
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横尾 |
そう、めずらしい方々が(笑)。
めずらしい方々が絵の上のほうにいます。 |
糸井 |
なまめかしいですね、この三島さんは。
亡くなってからもう何年も経ちますけども、
年月が経つにつれて
三島由紀夫という人の存在は
横尾さんのなかで大きくなってきたのでしょうか? |
横尾 |
大きいっていうよりね、
すっごい身近に感じられるの。
身近に! |
糸井 |
なるほど。
歴史って死んだ人の大きさを、
しょっちゅう変えちゃいますよね。
横尾さんが、三島さんを「身近」と表現するのは、
なんだかすごくリアリティがあります。 |
横尾 |
うん。まあ、偉大だ、というよりも、
近くにいるっていうかんじのほうが強いです。
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糸井 |
横尾さんはもう、
三島さんよりずっと年上になったわけですよね。 |
横尾 |
そうそう、年上になっちゃった。 |
糸井 |
それが、なんだか妙なかんじはしませんか? |
横尾 |
そうね。
ウチのじいさんだって死んだのに、
むこうは45歳の姿のままだよ・・・こわいね(笑)。 |