糸井 |
横尾さん、Y字路に飽きたと言いつつ、
公開制作までするんだからね……
そう言えば横尾さん、公開制作を、
いっぱいやってらっしゃいますよね。
人が見ているなかで絵を描くのは、
平気なんですか? |
横尾 |
平気じゃないけど、
平気なふりしてるだけだよね。
ひとりで描いてるときは、
すぐ腰掛けて休んだり、
冷蔵庫開いてなんか飲んだりするじゃない? |
タモリ |
飽きるんだ。はい。 |
横尾 |
ところがね、
公開制作って、
後ろでこう、見てるわけでしょ?
シーンと、波を打ったように静かに、
物音ひとつ立てないで見てるわけ。
あれが、なんともプレッシャーになるんです。 |
糸井 |
それがいいんですか? |
横尾 |
もう、うしろから、
描け、描けって言われてる感じなんですよ。
「休むな!」みたいな感じでね。
それで、ついつい描いちゃうわけ。 |
タモリ |
へぇー。 |
横尾 |
そうするとね、
思考が停止して考えなくなるんです。
とにかく手を動かしてるだけで……
そうするとね、考えないで描いていくから、
だんだん気持ちよくなっていくんです。 |
糸井 |
ちょっと、緊張してあがっているわけですか? |
横尾 |
そうです。
あがってるし、
視線も無防備な背中に
人の意識が集中して、
全身を監視されているので、
強制労働と同じで止められない。 |
糸井 |
絵描き一般は、
そういうふうな場所では描かないですよね? |
横尾 |
そうね。
アトリエには家族も入れない人もいますよね。 |
糸井 |
横尾さんは、
個人と公開と、両方の時間があるんですよね。 |
横尾 |
そうね……いや、
ぼくが昔に公開制作をはじめたのは、
アトリエなかったからなんですよ。 |
タモリ |
(笑)へぇー。 |
糸井 |
(笑)いつも、
わりとヘンなきっかけで、
なにかをはじめちゃうんですよね。 |
横尾 |
うん。 |
|
(つづきます) |